Q96 滑動の安全率が最小となる水位の求め方

 新・擁壁の設計法と計算例のp142に滑動の安全率が最小となる水位の算定式(5.21)が示されていますが,これはどのように誘導されたのでしょうか。

回答

 下図に示すような条件の下に誘導しています。擁壁前後の水位は同じで,擁壁には静水圧が作用するものとしています。




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Q.97 新・建築基準法施行令の支持力係数について

 平成12年に建築基準法施行令が改正され,直接基礎の支持力算定に用いる支持力係数が変更されました。この支持力係数はどのようにして計算されているのでしょうか。

回答

 旧・基準ではテルツァギーの支持力公式が採用されていました。そして,支持力係数には,φ<28゜の地盤ではテルツァギーが求めた局所せん断破壊に対する支持力係数を,φ=40゜では全般せん断破壊に対する支持力係数を,28<φ<40゜の間では局所せん断破壊と全般せん断破壊のすり付けを行った修正支持力係数が用いられていました。それが,表−1の右側の支持力係数です。
 
 ところが,テルツァギーの支持力係数は理論的に間違っていました。このことについては,テルツァギーも認め,著書SOIL MECHANICS ENGINEERING PRACTIE 2nd Edition(1967)では,彼の提案式がが削除され,代わりに式(2)が示されています。また,支持力係数の数値表も式(2)で計算された値に改められています。不思議な話ですが,日本では間違った式をこれまで使用し続けてきました。

 新・基準では式(1)によって支持力を算定するものとしています。この式は,テルツァギーの式をマイヤーホフが拡張した式です。支持力係数には表−1の値が示されていますが,この値はテルツァギーの著書の改訂版にも掲載されている式(2)で求められています。Ncはケリーゼルによって,Nqはカコーによって導かれた理論式です。Nγはマイヤーホフの近似式です。
 式(2)で計算し,それをグラフ化すれば図-1となります。
 式(1)のic,iq,iγは傾斜荷重に対する補正係数です。これもマイヤーホフによる近似式です。
 参考のため,極限定理である上界法によって求めた支持力係数とマイヤーホフの近似法による支持力係数を比較すると,図−2になります。マイヤーホフの近似法で計算すると荷重傾斜が大きい場合には支持力を理論値よりも過大に評価することになりますので注意が必要です。



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Q98 高さ2.7m,天端幅0.15m,4分勾配の重力式擁壁は安定か

 義父が会社の近所に土地を100坪程買いました。境界に擁壁を作ってくれと言われたので、図面を書いて持って行ったところ、天端が15cmの4分ころびの擁壁にしろと言われました。私の計算では不安定になると言ったのですが、結局、聞かずに天端が15cm,高さ2.7m、(天端から後ろの田んぼの水面までは約2.3m(根入れは40cm))勾配は1:0.4で,道路と平行に約34mの重力式を作りました。計算上問題ないでしょうか。
 施工後3ヶ月程経った擁壁を見たところ、天端付近で5ミリ程前方へ傾斜しています。擁壁の背後は田んぼで、5分の4は流用土で,残りは砕石で天端まで埋めてます。
 将来,建物を建てるかもしれないし、このままでは心配です。転倒しないようにするにはどうしたら一番いいでしょうか。


回答

 私の作ったソフトで計算した結果を下図に示します。擁壁背後載荷重は0,地盤への根入れは0として計算してあります。結果はSAFEです。
 しかし,背後に2kN/nm2以上の上載荷重を載荷させるとOUTになります。ただし,0.3mほど根入れをさせ,良質な土で埋戻し十分転圧をしていれば,10kN/m2程度の載荷重が載っても安全ですので,擁壁背後に建物を建設しても耐えうるでしょう。
 擁壁が前方へ傾斜したとのことですが,5mm程度であれば問題ないと思われます。一般に,擁壁が少し傾斜するのは当たり前です。このため,施工時に若干背後に傾斜させて対処しています。

 計算書はここをクリックしてください。

 計算ソフトが必要なら,ここをクリックしてください。ダウンロードできます。


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Q.99 杭の水平方向地盤反力係数の算定方法

質問1
 新・擁壁の設計法と計算例のp109に杭の水平方向地盤反力係数Khが繰り返し計算しなくても出せるような、算定式(4.23)が示されていますが,これはどのように誘導過程されたのか教えて下さい。
できれば、重力単位系、SI単位系共に教えていただけると助かります。

質問2
 多層地盤のときに、1/β範囲での各層毎の変形係数E0を単純に平均化して用いていいものなのでしょうか?(上層が悪い層で、下層が良い層を平均化してしまいますと、弱い層まで地盤抵抗が強くなってしまい、掘削面付近の影響が一番影響するこのchangの式では、適用できないのではないでしょうか?)


回答

質問1について

 道路橋示方書W下部構造偏では,杭の水平方向地盤反力係数kHを式(1)〜式(4)で算定することになっています。
道路橋示方書式ではkHが陰関数となっているため直接求めることができません。
 しかしながら,式(1)から式(4)を用いれば,kHを陽関数として表すことができます。
SI単位系ではkN, mを,重力単位系ではkgf,cmの単位を使用していることに注意してください。 

質問2について

Chang式が適用できるのは,杭長が無限大でkhが深さ方向に一定という条件の場合に限られます。一方,khが深さ方向に比例して線形的に増加する場合の計算法法としてRowe式があります。杭頭が自由と回転拘束されている場合について,杭頭変位,杭頭曲げモーメント,地中部最大曲げモーメントを算定する式は,表1のようになります。

kh=k1・l=ConstとしてChang式で求められる解析値と,Rowe式で求められる解析値が等しいとおいて,lを求めると表2になります。何に対して等価と置くかによって,等価khを求める深さも異なってきます。
道路橋示方書では1/β区間の平均kh,つまり0.5/βの深さのkhを使用することになっていますが,このようにするとkhを過大評価すると言えます。

表3は,平均khを用いたときと表2の深さの等価khを用いたときのそれぞれについてChang式で計算し,両者の比を求めたものです。平均kを用いた場合に比べ,等価khを用いた解析値がかなり大きくなることがわかります。

以上のことより,明らかに深さ方向にkhが増加している場合には,表2の深さで求めたkhを用いてChang式で計算するか,あるいはkhの変化を考慮し,例えばフレーム解析するなどの方法を採るのが望ましいと言えます。

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Q.100 セメント系固化材により安定処理の実施例

 

 路床の支持力が足りなく、セメント系固化材により安定処理することがよくあるので> すが、安定処理された土の強度をうまく評価し、路側壁の安定計算により、少しでも擁壁形 状を小さくし、コスト縮減を図りたいと考えております。
 実施例など、ございましたら教えていただきたいと思います。

回答

 日本道路公団では,橋台の背後の盛土にセメント安定処理土を用い土圧軽減を図るアバックス工法(Abutment with Cement Stabilized soil backfill method, Abucs工法)を確立し,既に多くの実施例あります。
具体的な設計法は「設計要領第二集」(平成12年1月)pp5-17〜5-23に掲載されています。
 ここでは,その要点のみ列記しておきます。
@アバックス工法は,安定処理土が剛体として自立,安定することを基本としているため,次式で示されるQueの強度を確保する。
A適用高さは20m程度以下
B安定計算に用いる土圧係数はKc=0.1とする。
Cたて壁の断面計算に用いる土圧強度は40kN/m2とする。
D橋台とセメント安定処理土の間には緩衝材として発泡スチロール(密度12kg/m3)を設置する。
E発泡スチロールとセメント安定処理土の間には,合板を設置する。
Fセメント安定処理土の上層および下層部には補強材として溶接金網を設置する。


 擁壁の場合は,道路公団の設計基準を少し緩和させて適用すればよいと思われます。

 


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Q101 c-φ土から換算φco(c=0)の求め方

 セメント安定処理した盛土の強度を室内配合試験で求めたところ,γ=16kN/m3,c=35kN/m2,φ=25゜の結果を得ました。セメント安定処理土を擁壁高H=10mの背後の盛土に使用し,土圧軽減を図ることを考えています。
 擁壁の設計には,c=0とした換算せん断抵抗角φcoを用いて土圧を算定することにしています。この場合,以下の方法でφcoを求めても問題ないでしょうか。


回答

 直接せん断試験と主働土圧では破壊機構が異なるため,ご質問のような換算計算は適用できません。以下,その違いを説明します。


なお,式(6)が適用できるのは,盛土面が水平な片持ばり式擁壁(逆T型擁壁,L型擁壁)に限られます。
盛土や壁面がが傾斜した場合,壁面摩擦がある場合などでは,c=0として換算するのではなく,安全率で割引されたc,φを用いて土圧を計算するのが合理的と言えます。

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Q102 主働土圧合力の作用位置について

 L型擁壁で、盛土形状が水平・一様分布荷重(全面載荷)の場合,ク−ロンでも試行くさび法でも同じ主働土圧合力が算出されます。 しかし、土圧の作用位置の違いからク−ロンの方がMr(転倒モ-メント)が大きくなってしまいます。作用位置は以下の形式になると思いますが。
 @試行くさび法:三角形の図心位置 
 Aクーロン:擁壁高に対しての台形の図心位置      
 試行くさびでの詳細作用位置を求めるのであれば、「続・擁壁の設計と計算例」による(式3.17)様に求めるべきだとは思いますが、実務上はMrが大きいのであればク−ロン用いる方がいいのでしょうか。
 試行くさびが主流の中、ク−ロンを用いるに当たり疑問を投げかける発注者もあり得ると思えるのですが、その様な場合でも何故かを説明し、Mrが大きくなる場合についてはク−ロンを用いる事を了承して貰うべきでしょうか。
 例え試行くさびの三角形分布が仮定であるにしても、両方共理論的には間違っていないのですから、よけい分からなくなってしまします。

回答

1.クーロン土圧と試行くさび法について

 クーロン式と試行くさび法は違うと思っておられるようですが,クーロン式も試行くさび法も同じクーロンの土圧理論です。
 極限平衡法に基づいたクーロンの土圧理論の解析解がクーロンの土圧公式です。この式は地表面が一様勾配の場合しか使えないので,嵩上げ盛土があるような場合には数値計算によって試行錯誤的に解を求めなければなりません。これが試行くさび法です。

2.土圧合力の作用位置

 クーロンの土圧理論では,土圧合力は求められますが,土圧分布を直接求めることはできません。したがって,土圧合力の位置も求められないことになります。
 理論的には,拙著「続・擁壁の設計法と計算例」p30〜37に示しているように土圧合力を数値微分して求めることができます。
 しかし,下図のように地表面が水平で,地表面に等分布荷重が満載されている場合には,台形分布になることが理論的にはっきりしています。したがって,土質力学の教科書や,海外の専門書を見ても台形分布すると書かれています。試行くさび法は,Trial Wegde Methodの日本語訳ですが,試行くさび法の場合には三角形分布とするという考え方は誤りです。
 三角形分布と仮定しているのは,世界で,唯一,日本の道路土工−擁壁工指針だけだと思います。したがって,三角形分布と仮定するのは,道路土工−擁壁工指針の方法と呼ぶべきです。擁壁工指針では,計算を単に簡単にするために三角形分布としているだけです。土圧の計算の際に,粘着力を無視し,適当にφを仮定して土圧を計算している訳ですから,あまりややこしい計算をしても実務上意味がないと考えられたのではないかと推測します。
 台形分布すると考えるのは,世界の常識です。海外の技術者が擁壁工指針を見ると,「日本の土木技術者は土圧理論の知識があるのか」と疑われるのではないか危惧します。
 道路土工指針は,改訂のたびに土圧の計算法が少しずつ変わっています。いずれ,土圧理論をきちっと勉強された方が現れ,土圧分布についても変更されるのではないでしょうか。


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Q103 φ=25゜に相当する粘性土の粘着力は

 道路土工−擁壁工指針では,粘性土の土圧を算出する場合,c=0,φ=25゜とするものとしていますが,この強度に相当する粘性土の粘着力はどの程度なのでしょうか。

回答

φ=25度と等価な主働土圧を与える粘着力cは下記のように誘導されます。


 平均粘着力がc=2.7Hということは,,粘着力が深さ方向にc=5.4zの関係で表される粘性土ということになります。cの単位はkN/m2,zの単位はmです。


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Q104 大型ブロック積み擁壁の安定計算法

 ブロック積み擁壁の設計で,安全率が一番問題になるのは「転倒」や「支持力」ではなく「滑動」であるように見受けられます。
であるならば、背面土の反力等は考慮できないものの、滑動の安全率をクリアすることを目標として、転倒、滑動に重力式の計算プログラムを使用して、支持力は別途計算することが可能かと思いました。
 このような考えは不可でしょうか?
 「道路土工指針」と「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」とでは「転倒(安全率も含む)」「滑動」についての考え方は同じと考えてよいでしょうか?

回答

1.断面は滑動の安全率で決定される
 ご質問のように大型ブロック積み擁壁の断面は,壁面勾配が1:0.5の場合には滑動の安全率で決定されます。ただし,支持力に対して問題ない場合という前提があります。
 したがって,大型ブロック積み擁壁設計施工マニュアルでは,ブロックの控え厚さを簡単に決定するための次式を紹介してあります。
  支持地盤が土砂(摩擦係数μ=0.6)  t=0.00931(q+10H)
  支持地盤が岩盤(摩擦係数μ=0.7)  t=0.00801(q+10H)
2.滑動の安全率の計算法
 滑動の安全率の計算法は,道路土工指針に示されている重力式擁壁の場合と同じです。

3.転倒の安全率の計算法
 大型ブロック積み擁壁を,マニュアルに準拠して計算すると,壁面勾配が1:0.5より緩い場合には,特別な荷重が作用しない限り,底面の地盤反力は台形分布します。これは,壁面に地盤反力が発生することを考慮しているためです。したがって,荷重の合力は底面の中央1/3に入ります。
 自立式擁壁では,荷重の合力が底面の中央1/3に入っていれば,転倒の安全率が2.0以上保証されます。しかしながら,もたれ式擁壁やブロック積み擁壁では,荷重の合力が底面の中央1/3に入っていたとしても,転倒の安全率が1.5は保証されません。したがって,転倒に対しては,抵抗モーメントと転倒モーメントの比として求められる安全率が常時1.5以上,地震時1.2以上と規定しています。
 したがって,転倒の安定性の照査法は土工指針と異なっています。

4.支持力に対する安全率の計算法
 同じせん断強度を有する地盤であっても,地盤支持力は,基礎に作用する荷重の傾斜角,荷重の偏心量,基礎幅などによって異なってきます。このため。道路橋示方書では以前から荷重の偏心傾斜を考慮した支持力を計算することになっています。
 宅地擁壁についても,H12年の建築基準法施行令の改正によって,荷重の傾斜を考慮した支持力計算をすることになりました。
 このような情勢を考慮し,大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル改訂版でも荷重の偏心傾斜を考慮して支持力を計算するものとしました。なお,支持力計算は,より理論的に精緻な計算法である上界法を適用するものとしています。これは,最近,設計計算はパソコンで行うことが一般的になっていることを考えてのことです。
 支持力の安全率は,「Fs=荷重の偏心傾斜を考慮した極限支持力÷地盤係数法で算出される底面の地盤反力」として算出するものとしています。

 

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Q105 擁壁の耐久性について

 築後30年が経過した宅地擁壁があります。 H-3000、t-350で、配筋はシングルです。当時の検査済証も、図面も残っていて、質は良く,図面からの逆算でも安全性は確認できました。
 問題は耐久性です。施主は,子供の代まで安全であることを望んでいるのですが,擁壁の耐久性とは何か。耐久年数が来たら、擁壁が傾いてしまうのか。分からないことが多い状況です。擁壁の耐久性に関して、アドバイスをいただけないでしょうか。

回答 
 擁壁が破壊する原因として,下記のことが考えられます。
 1.設計荷重を超える荷重の作用
  @過大な上載荷重
    擁壁の背後に嵩上げ盛土を行うなどにより過大な土圧が作用する場合。
  A地震の影響
    大規模地震による慣性力の影響や,液状化,斜面崩壊,断層など
  B水圧の作用
    擁壁が沢地形の箇所に作られていた場合,豪雨時に地下水が擁壁は以後に湛水し,過大な水圧が作用する。
 2.支持力の低下
  C支持地盤の劣化
    擁壁が斜面上に構築されている場合特に問題。
  D支持地盤の洗掘
    擁壁の前が河川の場合に問題を生じる。
 3.擁壁本体の劣化
  Eコンクリートの劣化による強度不足
  F鉄筋の腐食
 ご質問の宅地擁壁がどのような箇所に設置されているかがわかりませんので,具体的なコメントはできませんが,上記のことについてご検討してください。

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