Q84 逆台形基礎の安定計算の方法

 

下図のような逆台形擁壁の場合,滑動,転倒,地盤支持力の照査はどのようにすべきでしょうか。


回答


1.地盤反力の計算方法


 地盤反力は地盤係数法(変位法)によって計算することができます。計算方法は,土木技術再入門コーナーをご覧下さい。
 ここでは,地盤係数法を用い計算結果のみ紹介します。
 この擁壁は剛体と見なすことができますので,図1のように段切り面を接線方向の離散型バネksと法線方向の離散型バネktで拘束されているものと見なします。
 バネの値は図1のように仮定します。基礎地盤が岩盤であるため変位は気にする必要がありませんので,バネ定数としてどのような値を用いても地盤反力に影響するのはksとktの比だけです。このため,ここではks/kt=0.5と仮定します。また,段切り面と支持地盤の摩擦係数はμ=0.7と仮定します。


                   図1 解析モデル
 

 図1のモデルで解析した結果を図2に示します。この解析では以下の問題があります。
(1)段切り面Cに負の法線方向地盤反力度が発生している。
(2)段切り面Aと段切り面Cで滑動の安全率が1.0を下回っている。



                    図2弾性解析結果

 そこで,AとCの段切り面の接線方向バネの塑性化を考慮します。滑動の安全率が1.0になるように試行錯誤的に接線方向バネ定数の値を低減させて計算した結果が図3です。
 接線方向バネの塑性化を考慮いることで,力学的に矛盾した結果を回避することができました。ただし,段切り面Cで法線方向地盤反力が一部で負となっていますがこれはわずかであるので無視します。

         図3 接線方向バネの塑性化を考慮した解析結果


2.滑動に対する照査
 各段切り面の滑動の安全率は,図3に示すとおりですが,滑動に対する安全性は擁壁全体の平均安全率で評価すればよいと考えられます。そうしますと,Fs=3.05となり,常時の必要安全率1.5を超えており,安全と判断されます。

3.転倒に対する照査
 転倒に対しては,擁壁底面の地盤反力分布で評価できます。段切り基礎の場合,どこが擁壁底面かという議論が残りますが,水平面となっている@とBの段切り面を底面と考えますと,いずれの底面も地盤反力は台形分布をしています。したがって,転倒に対して安全と判断できます。

4.支持力に対する照査
 段切り面@と段切り面Bのそれぞれについて,斜面上の基礎としての支持力照査を行います。その結果, もしも,段切り面Bの支持力の安全率が不足した場合は,段切り面Bでは荷重を支持できないものとして,つまり,この段切り面のkt,ksを0として再度地盤反力を計算し直します。または,段切り面AとCの傾斜角を緩くし,段切り面Bをなくして再度計算し直します。
 斜面上基礎の支持力の計算方法は,土木技術再入門コーナーをご覧下さい。
: 計算例を図4に示します。ただし,地盤の強度定数はφ=35゜,c=100kN/m2としました。また,岩盤の傾斜角はβ=45゜としました。
 なお,岩盤に層理面などの弱面があり,これが流れ盤になっている場合には,支持地盤のせん断強度定数に弱面の値を用い,すべり面は弱面に沿って発生するとして支持力を照査する必要があります。

                    図4 支持力の計算例


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Q85 地山と盛土の二層系地盤の土圧計算法
 

下図のように、擁壁背面の土質が切土の地山と盛土の2層に分かれているような条件で,擁壁に作用する土圧算定方法をお教え下さい。下部層の地山部分については土圧が働かなくて,上部層の盛土の部分についてのみ土圧が働くと考えてかまわないのでしょうか。もしくは、全く違う考え方があるのでしょうか。


回答

 切土する地山の土質によって考え方が異なります。切土のり面の勾配が,地山の安定勾配よりも緩いならば,切土部に関しては土圧を作用させる必要はありません。しかし,安定勾配よりも急勾配で切土するのなら,切土部についても土圧を考える必要があります。
 その場合の土圧計算法は,地山と盛土の二層系地盤として計算すればよいでしょう。計算の方法については,このQ&AコーナーのQ51で説明していますので参考にして下さい。
 土圧計算に用いる盛土の土質定数は,道路土工−擁壁工指針などによって決定すればよいでしょう。地山の土質定数は,三軸圧縮試験で求めるのがよいのですが,それができないならば,切土時点でのすべり安全率を1.0と仮定して逆解析で推定することも考えられます。これについては,Q63で説明していますので参考なしてください。

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Q86 擁壁の裏込め材の置き換え範囲について

 擁壁計画において,現場発生土が含水比の高い粘性土のため安定処理後、裏込め材として流用する場合、土圧の影響範囲まで改良土を埋め戻す必要があると思いますが、その範囲についての考え方を示したものはないでしょうか。
 先生の出版されている文献等では、確認出来ませんでした。何か文献があれば、ご紹介下さい。

回答

 適当な文献を知りませんので,私の考えを述べます。
 図1は裏込材のせん断抵抗角がφ=25゜場合とφ=35゜の場合 について,すべり角ωと土圧係数KAの関係を示しています。もしも,ω=45゜までの範囲を改良土で置き換えるとしますと,すべり角ωと土圧係数KAの関係は,0-a-b-c-dの曲線で表され,主働土圧係数はKAが最大となるω=45゛で発生することになります。そのときの主働土圧係数はKA=0.343です。擁壁の設計土圧として,φ=35゜に対応した主働土圧係数KA=0.244を用いようとすれば,ω=35゜の範囲まで改良土で置き換える必要があることがわかります。

 実際には,図2の(a)または(b)に示すような形状で置き換えが行われると思います。この場合は,裏込め土が二層系地盤として土圧を計算する必要があります。
 すべり面が折れ曲がりますので,これを考慮した式(1)〜式(4)によって土圧を計算すればよいでしょう。ただし,地表面は水平と仮定しています。ωを変化させて計算し,PAの最大値を見つけれ,それを主働土圧と考えます。
 ただし,式(1)中のδは壁面摩擦角,αは壁面が鉛直面となす角です。地表面が水平ですと,仮想背面に作用する土圧Xはランキン式で求められます。式(3)の中のγはすべり土塊の平均単位体積重量ですが,図(a)の場合はγ=γ2,図(b)の場合はγ=γ1として計算すればよいでしょう。

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Q87 残留水位の決め方は

 右城さんが出版されております「擁壁Q&A選集」のP14で,残留水位を1/3hfmaxとしてありますが、その根拠または出典文献を教えて下さい。話によると2/3という考え方もあるようですが。
 擁壁工指針のP35に水際に設置される擁壁のように水位差が生じる場合、水位差に伴う静水圧を考慮するとありますが、考えるべきでしょうか?
 現在設計中の擁壁は,水際にある逆T式擁壁ですが、上司の話では,水抜きパイプがあるので、水位差は生じなく浮力のみが働くと教わりました。この考えでよろしいのでしょうか?


回答

 私は,残留水圧が原因で護岸擁壁が転倒した事例を,二度ほど体験しています。それは,拙著「擁壁Q&A選集」に記述しているように,河川水位が護岸の天端より上まで上昇した特殊な場合です。いずれも,護岸天端から擁壁の背面に水が浸透し,飽和状態になったものでした。
 一般には,護岸天端高は河川の高水位に余裕を見込んで決定しますので,これらは極めて特殊な事例と思われます。
 このような事例を別にすると,護岸の被災原因は,河川の洗掘か,斜面崩壊に伴うものであると思われます。
 常時水位以下に擁壁があるある場合には,水位以下の部分に浮力が作用します。しかし,洪水時に河川水位が上昇したとき,背後の水位がどの程度上昇するのか,河川水位が低下したときに残留水位が発生するかは全くわかりません。浮力や残留水圧が原因で問題を生じていないことを考えれば,護岸や擁壁の背後の水位が河川水位以上に上昇することはないと考えるのが妥当と思われます。
 したがって,護岸や擁壁の浮力は,常時水位以下の部分のみ考慮し,残留水位は考慮する必要がないと思われます。
 拙著に残留水位をH.W.L.と平常水位差の1/3と記してありますが,これは,港湾の施設の技術上の基準(港湾協会)の中の重力式係船岸の設計の項に明記されています。矢板護岸では水位差の2/3が採用されていると思われますが,これらの値を河川護岸に適用できるかは疑問です。
 いずれにしても,現在安定している護岸や擁壁を不安定と判定するような設計法は採用すべきでないと思います。

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Q88 土工指針と道路橋示方書で壁面摩擦角が異なる理由は

擁壁設計Q&Aのp98で常時壁面摩擦角δ=2/3φ(道路土工指針)となっていますが、道示ではδ=1/3φとしています。道示と土工指針のδについての扱いの違いの理由は何でしょうか。
 河川護岸兼用の道路擁壁をもたれ式擁壁で設計する場合には、どちらを適用したらよいですか。裏込めには支持力と透水性を考慮して砕石C-40を考えています。

回答

 壁面摩擦角δは壁面の材質や粗度,裏込材のせん断抵抗角などの影響を受けるため理論的に求めることはできません。このため,設計計算では表1に示す経験的な値が用いられています。
 δの値を測定する0≦δ≦φの範囲でばらつきます。設計基準によって規定しているδの値が異なるのは,実測されたδの平均値を採用するのか,下限値を採用するのかによって異なります。対象とする構造物の種類によってそれぞれ歴史があるので,設計基準では過去の実積を踏まえて計算に用いるδを決めているのだと思われます。

表1 壁面がコンクリートの場合の壁面摩擦角

技術基準 発行所 常時 地震時
道路土工指針 日本道路協会 2φ/3 φ/3
道路橋示方書 日本道路協会 φ/3 0
港湾の施設の技術上の基準 日本港湾協会 15〜20゜ 15゜以下
建築基礎構造設計指針 日本建築学会 2φ/3≦20゜

 小さいなδで土圧を計算すれば,擁壁は安全側に設計されますが,δが主働土圧に与える影響は比較的小さいので,あまり神経質に考える必要はないと思います。土圧の推定精度を高めるのであれば,むしろ,φやcの値を正しく測定すべきです。
 河川護岸兼用の道路擁壁であれば,道路土工指針の値を採用した方が説明がし易いのでははないでしょうか。

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Q89 左右の壁高が異なるU型擁壁の計算法

 U型擁壁のソフトと先生のおかげで何とか客先に納得していただく事ができましたが、今ひとつ相手がバネ定数を使用した式がわからないと言われました。何か役所(国土交通省)に簡単に説明する方法は無いかと聞かれ私も未熟者ゆえ困っています。バネ定数を使用したU型擁壁の計算方法をわかりやすくお教え願えませんでしょうか?よろしくお願いします。

回答

 図1のように自重Wと主働土圧PAが外力として作用する擁壁の場合,擁壁が安定を保つためには,擁壁底面に水位地盤反力QHとつま先からdだけ離れた位置に鉛直方向の地盤反力QVが発生する必要があります。QH,QV,dは未知量ですが,式(1)のように水平方向の力のつり合い条件,鉛直方向の力のつり合い条件,モーメントのつり合い条件式が立てられます。したがって,これらの条件式から3つの未知量を決定することができます。

 地盤反力の合力QH,QVとその作用位置dは式(1)で求められますが,地盤反力の分布形状はわかりません。そこで,図2に示すように底面が離散型のバネで支持されていると仮定すれば,式(2)が導かれ,これより地盤反力度qv1,qv2を求めることができます。


 次に,図4の基礎が根入れされている場合について考えてみます。主働土圧PAによって擁壁が左に押されますと底面と根入れ部分に地盤反力が発生するので,未知量は根入れがない場合よりもQH2,hの2個増えます。
 したがって,力のつり合い条件式とモーメントのつり合い条件式だけでは解けなくなります。
 そこで,道路橋示方書のケーソン基礎と同様に,図5のように底面と根入れ部が離散型の弾性バネで支持されているものと仮定して,変位法(地盤係数法)を適用します。そうすれば,地盤反力を図5のように求めることができます。

 根入れ部の水平バネが深さ方向に変化すると仮定したのは,地盤の塑性化を考慮するためです。もしも図7のように等分布バネとすれば,図8のように根入れ部の浅い位置の水平地盤反力が受働土圧を超えることになり,力学的矛盾を生じるためです。

 U型擁壁のソフトでは,変位法(地盤係数法)によって底面および根入れ部の地盤反力を求め,その地盤反力を用いて壁及び底版の断面力を算出しています。

 なお,変位法に関する詳細な計算法は,拙著「続・擁壁の設計法と計算例」(理工図書)p117-140,p319-329あるいは拙著「擁壁設計Q&A」(理工図書)p157-161をご覧になって下さい。


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Q90 底面が溝状に切り欠けた重力式擁壁の地盤反力計算法

 下図に示すように底面部に水道管を取り込んだ形の重力式擁壁について,地盤反力の算定法を教えてください。役所の担当者が非常に細かい人で,計算方法について聞かれ困っています。どうかアドバイスをお願いします。

回答

地盤反力度は次式で求められます。

 ここに,
 qx:底面の図心からxの距離の地盤反力度
 V:底面に作用する鉛直荷重
 M:底面の図心軸に関するモーメント
 A:底面積
 I0:底面の図心軸に関する断面2次モーメント
 x:底面の図心軸から地盤反力を算定する位置までの距離
 

[計算例]

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Q91 埋戻し幅が狭い切土部擁壁の施工法と土圧の考え方

 擁壁Q&A選集のp50に切土部擁壁の土圧計算法が示されていますが,下図のように擁壁背後の埋戻し幅が50cm以下のhの範囲に現地発生土を土嚢に入れて裏込め材とする場合の土圧計算法をお教え下さい。


回答

 現地発生土を土嚢袋に詰めて裏込材として用いると,土嚢袋が補強材としての機能を果たすため,現地発生土に粘着力が付加されると考えられます。しかしながら,現在のところ,土嚢袋の耐久性や補強土としての強度を定量的に評価するのが難しいので,土嚢を無視し,全て盛土として土圧を算定するのが現実的と思われます。
 
 別の方法として,下図に示すように,土嚢の代わりに貧配合のコンクリートで埋め戻すことも考えられます。この場合は,H'の区間のみに土圧が作用するものとして計算することができます。
 


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92 土羽を有するボックカルバートの翼壁設計に用いる土圧

 道路土工−ボックスカルバート工指針では,翼壁の設計に用いる土圧として静止土圧(土圧係数0.5)を採用することになっていますが,土羽を有する場合の土圧はどのように算定すべきでしょうか。

回答

 ウィングの設計に用いる土圧について,各種設計技術基準を調べてみると下記の表のようになります。

設計技術基準 発行年 土圧の種類
道路土工−擁壁・カルバート・仮設構造物工指針 昭和62年 建設省土木構造物標準設計第1巻を参考にすること
道路土工−カルバート工指針 平成11年 静止土圧,土圧係数0.5
道路橋示方書W下部構造偏 平成2年 静止土圧
道路橋示方書W下部構造偏 平成8年 一般には主働土圧
下記の条件を全て満たす場合には静止土圧
 @踏掛板が設置されていない
 A歩道が設けられていない
 B橋台の前壁と翼壁との角度が90度未満
 C翼壁の形状が側壁タイプ
日本道路公団設計要領第二集 平成10年 主働土圧(クーロン土圧)
建設省土木構造物標準設計第6〜12巻 昭和58年 静止土圧,土圧係数0.5
建設省土木構造物標準設計第1巻 平成12年 静止土圧,土圧係数0.5

 橋台,ボックスカルバートの翼壁については,ともに建設省制定土木構造物標準設計で設計法が示され,その後に標準設計の内容が示方書や指針に取り入れられたという経緯があります。

 土圧に主働土圧を採用すると,裏込め土の種類や壁面の粗度,土羽の盛土勾配や盛土高さに応じて土圧係数が変わってきます。標準設計では,この煩わしさから逃れるために静止土圧を用いたのではないかと想像されます。
 下図は,裏込め土のせん断抵抗角φ=30゜とφ=30゜の場合について,翼壁に作用する主働土圧係数の水平成分を計算した結果を示しています。ただし,上載荷重はq=10kN/m2,壁面摩擦角δ=2φ/3,土羽勾配1:1.5,土羽高H0=0またはH0=Hとしています。
 
 φ=30゜とすれば,土羽があると主働土圧係数の水平成分は静止土圧係数0.5よりも大きくなりますが,φ=35゜であれば主働土圧係数の水平成分は静止土圧係数0.5を包含することになります。つまり,翼壁は,静止土圧で設計しておけば工学的に問題ないと判断できます。
 ボックスカルバートに用いられる翼壁は,パラレルタイプとなります。パラレルタイプは,擁壁のたて壁と同様に片持ばり構造ですので,設計の整合性を考えれば主働土圧で計算すべきと思われますが,道路土工−カルバート工指針では計算の簡便化を図るため静止土圧係数を採用しているのだと思われます。

 以上のことより,土羽を有する翼壁の土圧計算は,一般には土羽の有無に関わらず静止土圧でもって設計すればよいと言えますが,φ≦30゜の裏込材を用いる場合には,土羽高を考慮してクーロン土圧で主働土圧を求めることも考えられます。

   



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Q93 前載土砂を考慮した逆T型擁壁の設計法

 橋台取付部の逆T型擁壁の設計について質問をいたします。逆T型擁壁は下図のように盛りこぼしとなっており,前載土砂の高さが擁壁延長方向に変化します。このような場合,設計計算に用いる前載土砂の高さhとして,最大盛りこぼし高hmaxを用いるべきでしょうか,それともhmaxとhminの平均盛りこぼし高を用いるべきでしょうか。

回答

 便宜的には下図の(a)に示すように擁壁の前後にそれぞれ仮想背面と仮想前面を考え,これらの面に主働土圧を作用させて計算することができます。道路土工指針では,仮想前面に受働土圧の1/2を作用させるものとしていますが,これは擁壁が前方へ変位し,仮想背面の土圧が主働土圧に達するとき仮想前面に発生する土圧を意味します。したがって,仮想前面にも主働土圧を作用させればよいと思われます。
 擁壁の設計計算を行う際のhは,hmin〜hmaxの間で最も安全側の設計になる値としてh=hminを採用すべきと考えられます。
 一般的には,安全側の設計をするためと,計算の簡便化を図るため図(b)のように盛りこぼし土を無視して計算されているのではないでしょうか。



Q94 擁壁底版の組み立て鉄筋の形状と設置間隔
 

 擁壁底版の組立鉄筋のフック形状および組み方,設置間隔を教えて下さい。
 組立鉄筋のフックの方を引張主鉄筋に向けるのか、それとも圧縮主鉄筋に向けるのかどちらでしょうか。施工性としてよい方は。


回答
 擁壁底版に設置する組み立て筋の加工形状および組み方,設置間隔に関しては,建設省制定土木構造物標準設計2,擁壁類(平成12年)を参考にされれでばよいでしょう。

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Q95 仮設用重力式擁壁に対する転倒の安定性の評価法と粘着力を考慮した設計について

 貴殿著書の「擁壁設計Q&A」及び「Excelによる擁壁設計」は大変判り易く、業務に役立っており感謝しております。
お忙しいところ恐縮ですが、以下の2点について御教授頂けたら幸いに存じます。

1.重力式擁壁を短期(仮設)構造物として構築する場合、通常ではミドルサードの位置をe≦B/6と  していますが、短期構造物の場合、異常時(地震時)相当と考え、e≦B/3としている設計をよく  見受けます。一般に仮設構造物と考えた場合、許容応力度を1.5倍にとるとか、安全率を下げる方法をとるのが一般的と思われますが、ミドルサードの位置を緩和する思想が良いのかどうか、教えて下さい。

2.滑動の計算において通常の設計ではφを考慮し、Cを考慮しないのが一般的でありますが、この方法では部材厚が大きくなり過ぎるため、Cを考慮し、少しでも部材を小さくしたいと考えている現場 があります。
  この場合、三軸圧縮試験等を実施し、精度の高いC、φを得られるのであれば、三軸試験から得られた  C、φを基に安定計算を行いたいと考えていますが、この考え方について誤りがあれば御指摘下さい。

以上、お忙しいとは存じますが、御教授頂けたら幸いに存じます。

回答

1.重力式擁壁の転倒の安定性評価法について

1.1転倒の安定性の評価法には3種類ある

 擁壁の転倒の安定性を評価する方法には,下記の3種類の方法があります。海外の文献を調べてみても,この3種類の方法が適用されているようです。
 評価法2と評価法3は,安全率の考え方に違いがあります。土圧の水平成分のみに安全率を考える評価法(2)は理論的に無理があるように思われます。



1.2 評価式によって転倒の安定性は全く異なってくる
  背面が鉛直の重力式,前面が鉛直の重力式,もたれ式壁の各擁壁について,前述の3種類の方法で転倒の安定性を照査すると,必要な底版幅は全く異なってきます。

1.3 短期の安定性をどの方法で評価すべきか
 短期の安定性を評価する方法には,下記の3つが考えられます。
 方法@荷重の偏心量をB/3以下とする。
 方法A 前述の評価法2で安全率1.2を確保
 方法B 前述の評価法3で安全率1.2を確保
 どの方法でも問題はありませんが,理論的には方法Bが最もスッキリしています。構造物の経済性を図るのであれば方法Bがよいでしょう。

 詳細はこちら

2.粘着力について

 ご質問の内容が,
 @滑動抵抗力として底面の付着力を考慮する
 A土圧計算において粘着力を考慮する
 のいずれかが理解しかねますので両者について回答します。
2.1付着力
 支持地盤が岩盤であって,ダム工事のように岩盤洗浄をする場合には付着力を考慮できますが,一般には無視します。滑動抵抗力を高めるのであれば,@底面に突起を設ける,A底面を傾斜させる,B根入れを大きくし,受働土圧を見込む,などの対策が考えられます。

2.2土圧計算に用いる粘着力
 土圧計算に用いる粘着力については,Q.9をご覧になって下さい。
 Q.9はこちら