Q73 底面に突起がある場合の滑動の照査方法
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底面に突起がある場合の滑動抵抗力として,道路橋示方書や道路土工指針では,底面の摩擦力(R1,R2a,R2b)しか考慮されていませんが,根入れ地盤の受働土圧PPを考慮することはできないのでしょうか。
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回答
擁壁前面の地盤が洗掘等の影響を受けることなく,将来的にも確実に根入れ深さが確保される場合には,受働土圧による抵抗を見込むことができます。ただし,受働土圧が完全に発揮されるためには,大きな水平変位を伴います。したがって,道路土工−擁壁工指針では,受働土圧の1/2を考慮してもよいとしています。
ただし,理論上は,下図のように突起の下端を基礎底面と見なし,荷重の偏心傾斜を考慮した支持力問題と考えるのが合理的と思われます。

Q74 ガードレール基礎の大きさ
| 土中用ガードレールGr-C-4Eの場合,車両用防護柵標準仕様・同解説(P102)によれば,支柱一本が関与する背面土質量として0.82tと規定されています。 また,標準仕様・同解説p113には,「規定されている背面土質量が確保できないと判断された場合は,不足している背面土質量を算出し,コンクリート根巻きにより不足分の質量を補う」。また,「土中内に埋設物などがあり,所定の埋め込み深さを確保できないなどの場合などは,連続基礎などの対策を行う」,と解説されています。 ブロック積み擁壁の天端にガードレール基礎を連続基礎として施工する場合,標準仕様の考え方を適用し,基礎の大きさを下図のように決定することにしていますが,問題はあるでしょうか。基礎の質量は,0.94tとなり,既定値082を満たしています。 M=0.5m×0.4m×2.0m×2.35=0.94t>0.82t(標準仕様規定値) ![]() |
回答
車両用防護柵標準仕様・同解説には,土中用ガードレールの仕様基準として下記のことが明記されています。
@支柱1本が関与する背面土質量(C-4Eの場合0.82t)
A支柱の標準埋め込み深さ(C-4Eの場合1.40m)
B荷重作用高さ(C-4Eの場合0.60m)
C支柱の極限支支持力(C-4EのPw=12kN)
また,背面土量の範囲として,図1が示されています。
解説には,支柱の極限支持力は「路面から荷重作用高さの位置において支柱に水平に加えた荷重と変位の変形曲線から求めた平均支持力」と述べられています。これは,図2のような水平載荷試験を意味していると思われます。


車両用防護柵標準仕様・同解説には,安定解析法が明記されていませんが,C-4Eの場合,極限支持力Pw=12kNを確保するために,支柱1が関与する背面土質量と支柱の埋め込み深さが規定されているのだと思われます。
ガードレール支柱に作用する荷重を図3のように仮定し,これらの荷重が極限つり合い状態にあるとすれば,極限支支持力PWは式(1)で与えられます。


[ ]の中の第1式は転倒の条件から,第2式は滑動の条件から決まる値であり,両者を比較し小さい値が極限支持力になります。
土のせん断抵抗角をφ,粘着力をcとし,すべり面を図1のように仮定すると,クーロンの土圧理論より受働土圧PPは式(2)で求めることができます。
Aはすべり面の面積で,式(3)で求められます。また,土の単位体積重量をγとすれば,土塊の単位体積重量は式(5)で求められます。
以上の式を用い,下記条件の下で計算すると以下のような結果になり,車両用防護柵標準仕様で示されている値とほぼ一致します。

以上の計算結果から,車両用防護柵標準仕様に規定されている背面土質量と支柱の埋め込み深さを確保しておれば,Pw=12kNの水平荷重が作用しても,ガードレールは転倒および滑動しないことが保証されることが確認できます。
ご質問のように擁壁の天端に基礎を設置した場合には,受働抵抗を期待できないため,直接基礎として安定性を照査する必要があります。この場合の衝突荷重として,別途規定されているPw=30kN(C種の場合)を作用させるのがよいのかも知れませんが,土中用ガードレールに要求されている極限支持力Pw=12kNを作用させて計算した結果を以下に示します。ただし,コンクリートの単体体積重量は23kN/m3,底面の摩擦係数はμ=0.6としています。
滑動,転倒の安全率も非常に小さく,このような基礎では土中用ガードレールに比べて性能が著しく劣ることになります。なお,この計算で,安定に関与する基礎延長を2.0mとしていますが,実際には基礎のブロック長(目地間隔)をとることができると思われます。仮に基礎長をL=10mとしても転倒の安全率は0.96となり1.0を下回ります。

擁壁の天端に設置するガードレール基礎の設計法に関しては,道路土工−擁壁工指針にも明記されていますので,それとの整合性を図るのがよいのではないでしょうか。
Q75 中空タイプ箱形ブロックの中詰め土砂の効果
| 中空タイプの箱形ブロック内部に土砂を充填し,擁壁として用いた場合,中詰め土砂の重量はどの程度安定性に寄与するものでしょうか。 |
回答
中詰めされた中空ブロックを積み重ねることは,滑動に対して効果が期待できます。一面せん断あるいは二面せん断試験を行っているのと同じですので,ブロックの境界面では中詰め土のすべり抵抗力(せん断抵抗力)が100%発揮されます。しかしながら転倒に対して中詰め土の効果はあまり期待できないと思われます。
最も簡単な例として,図1のように箱の中に乾いた細砂を詰めた場合を考えて見ます。箱に転倒モーメントを与えると中詰め土は,回転によって生じた隙間から抜け出します。このため,転倒の抵抗力としてはほとんど期待できないでしょう。
図2のように背後に裏込め土があれば,壁面の前後から土圧が作用し,壁面摩擦力が生じるので,これにより抵抗モーメントが出現します。しかし,摩擦力を発揮するのはせいぜい壁高程度の範囲内に存在する中詰め土であると思われます。したがって,ブロック内の中詰め土の重量を有効に活用できるとは思えません。
中詰め土の重量を抵抗モーメントとして有効に活用するには,中空ブロックに底版を設けるなど中詰め土砂の抜け出し防止対策が必要と考えられます。

Q76 もたれ式擁壁の地盤反力の計算について
| 貴著「Excelによる擁壁」に記述されているもたれ式擁壁の地盤反力算定法についてお教え下さい。 @もたれ式擁壁の出力例p149で,壁面長L=5.590m,塑性場L1=4.332m,弾性場L2=1.258mとなっています。ところが,HP「右城猛の研究室」のQ&Aコーナーでは,Q60でL2=ηL=0.25Lとなっており,これで計算すればL2=0.25×5.5901.398mとなり出力例と異なります。この違いの原因はどこにあるのでしょうか。 Ap150で,底面の水平地盤反力度はqH=-63.95kN/m2となっていますが,出力例の数値を用いて計算するとqH=ks×u0=15516.1×(-0.0041)=-63.62kN/m2となり一致しません。何故でしょうか。 Bp149のQV,QH,Qtはどのように計算されているのでしょうか。 |
回答
@について
拙著「Excelによる擁壁」のp40〜42にもたれ式擁壁の地盤反力度の計算方法を解説していますが,もたれ式擁壁は不靜定構造となるため下図の(c)に示すモデルで解析しています。
L1は擁壁が(a)のように変位したとき壁面が前方へ変位する領域を,L2は後方へ変位する領域を表しています。L1は,式(6.8)の条件を満たすように決定しなければなりません。拙著の付属のソフトでは,自動的にL1,L2が求められるようにプログラミングしてあります。
このQ&AコーナーのQ60に示してあるL1=ηL=0.25Lの式は,地盤反力を簡便的に計算するために設定した値にすぎません。これまでの試計算によれば,ηの値は壁背面地盤と支持地盤のN値の比によって0.1〜0.5の範囲にあります。したがって,ηの値を正確に求めるには,地盤係数法で計算する必要があります。

Aについて
拙著の出力例では,
ks=15516.1kN/m3
u0=-0.0041m
と表記されていますが,有効数字をもっと細かく表記すると,
ks=15516.14584 kN/m3
u0=-0.004121669m
となります。この値を用いて計算するとqH=-63.9522kN/m2となり,p150に表記されているpHの値と一致します。
出力例に表記されている数値は有効数字が少ないため,これを用い手計算で求められる値と出力値は必ずしも一致しません。
Bについて
式(6.6)の三件連立方程式を解けば座標原点の変位量u0,v0,θが求まりますので,式(6.5)よりqHが求められます。qv1,qv2は式(6.5)のqvの式で,x=0,
x=Bをそれぞれ代入すれば求められます。また,qtuはqtの式でs=Lとおけば求められます。
地盤反力の合力は式(説明1)によって計算できます。

Q77 逆T型擁壁のかかと版の断面力算出について
| 今回Excelによる擁壁設計を購入したのですがどうしても解けないところがあるのでどうか教えてください。 逆T型擁壁の試行くさび法で計算をおこなっているのですが,かかと版の各応力度の算出が分かりません。P181の主動土圧の鉛直力、アーム、地盤反力のq3、鉛直力Qvh、アームの算出が分かりません。 それとP181のb)断面力のΣモーメントがたて壁基部の曲げモーメントより小さければそのままその値を使用して計算を行っていいのでしょうか? |
回答
@主働土圧の鉛直力とアームについて
かかと版付け根の断面力の計算においては,仮想背面で計算した主働土圧の鉛直成分をp63図7.15(b)のように三角形分布荷重として作用させています。この考えは,道路土工−擁壁工指針p93に準拠しています。
p181のPAVはp169で計算された値です。
アーム長xAは,かかと版長がl=2.5mですので,xA=2/3*2.5=1.67mとして計算しています。
A地盤反力とアーム長
かかと版付け根位置の地盤反力度は,q1とq2から q3=(q1-q2)/B*l+q2として計算しています。
合力は台形公式よりQvh=l/2*(q2+q3)
アーム長は,台形公式から簡単に求められます。xvh=l/3*(2*q2+q3)/(q2+q3)
Bかかと版の曲げモーメント
道路土工−擁壁工指針p93に準拠しています。
Q78 合力がもたれ式擁壁の底面のミドルサードから外れても安全か
| Excelによる擁壁設計(P151)のもたれ式擁壁出力例で, ea=B/6=0.083m>-0.4172m SAFE e=-0.4172 となっています。 しかし,道路土工、擁壁工指針(社団法人日本道路協会)P76では,転倒に対する安定条件として |ea|≦=B/6・・・・・・・(2-12) となっています。 よって ea=B/6=0.083m<+0.4172m OUTになるのではないでしょうか。 |
回答
1.底面における荷重合力の偏心量がB/6以下でなければならない理由
道路土工−擁壁工指針(H11年)p76には,転倒に対する安定条件として,合力Rの作用点は常時は底版中央の底版幅1/3の範囲内になければならない。すなわち,偏心距離eは式(2-12)を満足しなければならない。
|ea|≦=B/6・・・・・・・(2-12)
と記述されています。
この理由は,底面に発生する地盤反力度の分布を台形にすることにあります(道路橋示方書W下部構造偏p248)。
テルツァギーは彼の著書「Soil Mechanics in Endineering Practice」で,「過度の傾斜を防ぐためには,底面上に作用する全ての力の合力が,その底面のミドルサード内(核内)で交わるようにするのが極めて適切である」と述べています。
つまり,擁壁工指針の式(2-12)は,擁壁底面における地盤反力度の分布が台形となる条件式といえます。ここで注意すべきことは,式(2-12)は,底面形状が長方形である(底面の断面係数がLB^2/6で表される)場合に限って適用されるもので,底面形状が台形や円形などの場合にはB/6とはなりません。
2.もたれ式擁壁では,荷重の合力が底面のミドルサードから外れても地盤反力は台形分布する
底面が平坦な一般の直接基礎では,荷重の合力が底面のミドルサードから外れると,底面の一部が浮き上がり地盤反力は三角形分布となります。しかしながら,折れ曲がり基礎の一種であるもたれ式擁壁は,底面と壁背面に地盤反力が発生するため,荷重(擁壁自重と主働土圧)の合力が底面のミドルサードから後方へ外れても底面の地盤反力は台形分布となります。
下図は,擁壁高H=5m,壁幅b=0.5mのブロック積み擁壁について,壁面勾配を1:0.3,1:0.5,1:0.8,1:1.0と変化させて計算した結果です.1:0.3の場合には荷重の偏心量eが正で小さいため壁面に地盤反力は発生していません.ところが壁面の傾斜角大きくなり,荷重の偏心量eが負の方向へ増加するにしたがって,壁面の広範囲に地盤反力が発生します.
もたれ式擁壁では,壁面の地盤反力を無視して計算することはできません.また,荷重の偏心量と,底面の地盤反力の偏心量とは異なるという点に留意すべきです.
なお,この計算は,拙著「Excelによる擁壁設計」の付属ソフトの「もたれ式擁壁」で計算しています。

図1 壁面の傾斜角と地盤反力分布
つまり,もたれ式擁壁の場合には,荷重の合力が底面のミドルサードから後方へ外れても底面の地盤反力は台形分布になるため,擁壁工指針の式(2-12)の条件は満たさないものの,式(2-12)が意図している転倒の安定条件は満たしているといえます。
3.底面の地盤反力度が台形分布していれば,転倒に対して十分安全か
道路土工指針の初版が発刊されたのは昭和31年ですが,擁壁に関する記述は昭和48年版からです。昭和48年版では,転倒に対する安定性の照査について,「合力の作用点が中央1/3以内にあれば転倒に対して安全であるから,安全率の計算は省略してよい」と記述されています。
荷重の偏心量と転倒の安全率の関係については,拙著「続・擁壁の設計法と計算例」(p170〜p173)に詳述しているため,結論だけ述べれば,
@荷重の合力の偏心量と転倒の安全率の関係は,擁壁形状によって大きく異なる。
A自立式擁壁の場合は,合力がミドルサード内に入っていれば,転倒の安全率は2.0以上になることが保証される。
Bもたれ式擁壁については,合力がミドルサード内に入っていれば,転倒の安全率1.0は確保されるが,1.5は保証されない。
つまり,底面の地盤反力が台形分布していると転倒の安全率1.5が保証されるのは,重力式擁壁や逆T型擁壁などの自立式擁壁の場合に限られる,ということです。
したがって,もたれ式擁壁については,式(2-12)や底面の地盤反力の分布で転倒の安全性を判断するのは適切でなく,転倒の安全率で評価すべきといえます。
4.Excelによる擁壁設計の出力例では,転倒の安定性を満たしているか
拙著「Excelによる擁壁設計」による出力例は,下図のようになっています。
荷重の合力の偏心量はe=-0.417mになっていますので,式(2-12)は満たしていませんが,底面の地盤反力は台形分布をしており,式(2-12)の意図するところは満たされています。
拙著の付属ソフト「もたれ式擁壁」では,転倒に対する安全率も計算しています。その結果は1.797となっており,1.5以上となっています。したがって,転倒に対しては安定していると判断できます。
なお,もたれ式擁壁については,Q7,Q8でも回答していますので参考にして下さい。

5.地盤係数法を用いたもたれ式擁壁の設計法は認知されているか
ブロック積み擁壁も含めたもたれ式擁壁の安定計算法は,今のところ確立されていません。このような事情から,地盤係数法を用いた設計法を提案しました。この設計法は,「大型ブロック積み擁壁の設計施工マニュアル」(土木学会四国支部)に採用されています。
施工実積としては,高知県土木部でたくさんありますが,建設省四国地方建設局(現・国土交通書四国整備局)では,1998年の高知豪雨災害の復旧工事を契機に,大型ブロック積み擁壁が採用されだし,その設計には,土木学会四国支部のマニュアルが用いられています。
最近,長野県土木部でも,土木学会四国支部の「大型ブロック積み擁壁の設計施工マニュアル」を設計基準として採用することに決定されたようです。採用の動機は,会計検査官の意見によったものと伺っています。
Q79 斜面に矢板を打設したときの地震時の安定解析法は
| 下図のように、傾斜角βの斜面上に短い矢板を埋め込んだ場合の地震時の安定問題を検討しています。 矢板壁は鉛直、地盤はφ、C材で、ある設計水平震度を作用させた時の、主働・受働土圧係数を簡便に求めたいと考えています。 上界法や試行くさび法でなく、単純な物部・岡部系の土圧式から求めれば、現在の段階では問題ないと考えていますので、よい計算方法ならびに計算式があれば教えて頂きたく思います。 ![]() |
回答
1.物部・岡部式のc-φ土への適用性
物部・岡部式は,砂質土(c=0,φ>0)を対象に,地表面がβの一様勾配であるときの主働・受働土圧公式であるミュウラー・ブレスロー(Muller-Breslau)式に慣性力を導入し,地震時土圧公式に拡張したものです。したがって,物部・岡部式は粘性土がある地盤には適用できません。
道路橋示方書W耐震設計編では,c-φ土を対象としたRankineの土圧公式の中の土圧係数KA,KPに,物部・岡部式による土圧係数を代入することで,c,φ土に適用できる土圧算定式を示しています。

しかし,この式が正しく適用できるのは地表面が水平(β=0),壁面が鉛直(α=0),壁面が滑らか(δ=0)の場合に限られます。β>0の場合に適用すると,主働土圧は過大に,受働土圧は過小に評価されます。
c,φ土の土圧を適切に算出するには,試行くさび法を適用する必要があります。 c,φ土に対する試行くさび法の計算式は,このHPの土木技術再入門コーナーで詳細な誘導過程示していますので参考にしてください。
粘着力を考慮した地震時の主働・土圧
2.斜面の破壊メカニズム
ご質問の図のように矢板の背後に主働すべり面が,前面に受働すべり面が発生して破壊するモードは,理論的に考えられません。極限状態に図のような塑性場が形成されるためにはPA=PPである必要がありますが,この条件を満たすのはβ=0,φ=0の場合だけです。β>0,φ>0である場合にはPA<PPとなります。
斜面の安定解析を行うためには,下図のように想定されるブロックを3個以上のブロックに分割し,力のつり合い条件とクーロンの破壊基準を用いて,各ブロックに作用する力を決定する必要があると考えられます。
矢板の長さH1が特定されているとすれば,
@試行くさび法によって矢板に作用する主働土圧PA1を決定する。
Aω2,L2を仮定し,遷移場のブロックの力のつり合い条件と破壊基準からPA2を求める。
Bω2とL2を仮定すれば,受働土圧の作用高H2が特定されるので,試行くさび法によって受働土圧Pp2を求める。
CPA2=Pp2となるまでω2とL2を変化させてA,Bの計算を繰り返す。

Q80 重力式擁壁の水平打継目の処理方法
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高さ3mの重力式擁壁のコンクリート打設を2回に分け行う計画になっています。この場合,水平打継目の処理は差し筋のみで良いでしょうか?突起を付ける必要性はないのでしょうか? |
回答
豪雨時に水圧等の作用で重力式擁壁の打継目がずれを生じたり,打継目から上部の擁壁が転倒した事例を何度か見たことがあります。問題を生じた擁壁に,突起や用心鉄筋は施工されていなく,レイタンスも十分除去されずに施工されていました。
水平打継目が適切に処理されていれば,いずれも被災を免れただろうと思ったことでした。
土木学会のコンクリート標準示方書施工編(平成8年)p99には,打継目の施工に関して下記のように記されています。
打継目は,できるだけ,せん断力の小さい位置に設け,打継目を部材の圧縮力の作用する方向と直角にするのを原則とする。やむを得ず,せん断力の大きい位置に打継目を設ける場合には,打継目にはほぞまたは溝を造るか,適切な鋼材を配置して,これを補強しなければならない。
建設省制定土木構造物標準設計2擁壁類(平成12年)のもたれ式擁壁では,下記の注意事項が記されています。また,標準断面図として下図が示されています。
コンクリートの水平打継目に対しては段をつけ,用心鉄筋としてD13の鉄筋を間隔50cm,長さ100cm程度に配置すること。

建設省標準設計の水平打継目の補強方法
水平打継目に対し,土木学会コンクリート標準示方書では原則論が述べられているだけで,具体的に仕様規定は示されていません。
一方,建設省標準設計では具体的な仕様規定が示されていますが,その力学的根拠は明確にされていません。@D13の鉄筋を50cm間隔と規定した根拠,Aせん断力が小さい上部の水平打継目には段と用心鉄筋を施工することになっているのに,せん断力が最も大きくなるたて壁付け根の水平打継目は,用心鉄筋のみになっている理由については何も説明されていません。
以上のように,コンクリートの水平打継目の補強方法の設計法は確立されていない状況にあると思われます。このことから,重力式擁壁の水平打継目の処理として,差筋と突起(溝,段,ほぞ)を併用するのが理想的ですが,差筋だけでは問題があるともいえません。
Q81 切土部擁壁背後の地山の緩みゾーン
| 右城先生著「続・擁壁の設計法と計算例」(第2版)に基づいて切土部擁壁の設計を行おうと思いますが、そのp.56〜57に記述されている”緩みゾーン”の範囲について、地山の地質等によりその範囲は異なるとあります。 計算課程でどの程度を想定するのが一般的なのか、また参考文献等がございましたら、ご教授いただければ幸いです。 |
回答
切土された地山は,応力解放,吸水膨張などの影響で切土表面から経時的に強度低下を生じますが,緩みの速度は地山の地質や岩盤に含まれる粘土鉱物の種類,地下水の状態,切土のり面の拘束圧の程度とうによって異なると考えられます。
奥園誠之先生著「斜面防災100のポイント」(鹿島出版会)p65では,「切土後の膨張の大部分は土被り厚2〜3m程度以浅の表層で起こっている」と述べられています。
コンクリート吹付された岩盤が,施工後約10年間で表面から5m程度土砂化していた,という事例を聞いたこともありますが,切土ののり面崩壊の90%は表層3mまでの崩壊(奥園著「斜面防災100のポイント」p170)と言われています。
したがって,土圧を考慮する緩みゾーンとしては一般に3mを考えておけば良いと思われます。
Q82 もたれ式擁壁の設計に用いるせん断バネ定数比は
| もたれ式擁壁の設計計算ソフトでは,入力データに「バネ定数比λ」がありますが,これは何を意味しているのでしようか。また,どのような値を用いればよいのでしょうか。 |
回答
1.せん断バネ定数比とは
せん断バネ定数比λとは,せん断バネ定数(せん断地盤反力係数)ksと鉛直方向地盤反力係数kvとの比を表し,理論上は次式で求めることができます。

ここに,Gは地盤のせん断変形係数,Eは地盤の変形係数,νはポアソン比です。
道路橋示方書W下部構造編(平成8年)p264には,「λの値は,実測によると1/2〜1/5の範囲にある。しかしながら,道路では,変位を検討する計算体系を考慮し,ksの値を安全側に見込んで変位が大きめに計算されるよう,λ=1/3〜1/4と定めた。」としています。
一方,長尚著「基礎の条件を考慮したラーメンの解法」(理工図書,1972)p227にはλの値として「Barkanのいう1/2を一つの目安として用いてよいであろう」と記されています。
Bankan,D.D.:Dynamics of Base and Foundation, McGraw-Hill Co. Inc.,1962
2.せん断バネ定数比が解析結果に及ぼす影響
せん断バネ定数比が解析結果に及ぼす影響を調べるため,λ=0.2(=1/5),λ=0.5(=1/2)について試計算を行ってみました。たたし,擁壁はブロック積み擁壁として標準的な高さ5m,壁幅0.6mとしました。また,地盤反力係数を算出するためのN値は,盛土がN=10,支持地盤がN=50としています。
この結果,以下のことがわかります。
@λが大きいと底面の地盤反力度は等分布に近くなる(つま先とかかとの地盤反力度の差が少なくなる)
Aλが大きいと壁背面の地盤反力の発生領域が増加する。
Bλが大きいと,壁体に発生する曲げ引張応力度が小さくなる。
もたれ式擁壁の設計において,せん断バネは底面のみに設けています。せん断バネ定数比が大きいということは,底面の水平方向の拘束が大きいことを意味します。このこが,上記の解析結果として表れているといえます。
壁面勾配1:0.5の場合

壁面勾配1:1.0の場合

3.もたれ式擁壁の解析に用いるλの値
試計算の結果より,下記のことがいえます。
@壁面勾配が急な場合の解析結果は,λの値の影響が少ない。
A壁面勾配が緩い場合には,λが小さいと壁体に大きなな曲げ引張応力が発生するが,これは曲げ破壊をおこすことを意味しており,実際の現象とは異なると考えられる。
λの値としてどの程度の値が適切なのかは,実測データがないので断言できませんが,上記の理由からλ=0.5を用いるのが実際的と思われます。
Q83 Excelによる擁壁設計の付属ソフトの逆T型擁壁,L型擁壁の土圧分布は
| 貴著「Excelによる擁壁設計」の付属ソフトの逆T型擁壁,L型擁壁では,土圧計算に試行くさび法と改良試行くさび法のいずれかを選択できるようになっていますが,改良試行くさび法では土圧分布をどのようにしているのでしょうか。 貴著「続・擁壁の設計法と計算例」では,改良試行くさび法の場合,土圧分布の算定に逐次計算法を採用されていますが,付属ソフトでも逐次計算法を用いているのでしょうか。 |
回答
拙著「続・擁壁の設計法と計算例」で記述しているように,盛土が台形分布する場合の土圧分布は三角形分布とはならず非線形分布になります。土圧分布を求めるためには逐次計算法が必要になります。
また,盛土面が水平でも,過載荷重があれば,理論上,土圧は三角形分布にならず台形分布になります。
しかし,付属ソフトでは,下記の理由により土圧計算法や載荷重の有無に関わらず三角形分布と仮定しています。
@道路土工−擁壁工指針と整合させた。
A土圧を三角形と仮定すると計算が著しく簡便になる。
B三角形分布と仮定したことによる誤差は少なく,実務上は無視できる程度と思われる。