Q7 ブロック積み擁壁の転倒に対する安定性の照査について
| 最近,コンサルタントや施工業者から擁壁の転倒に対する検討法についての質問が多数寄せられます.大抵の場合,土木学会四国支部発行「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」のP19,20の説明(偏心位置がB/6内にあっても安定とは言えないので安全率の照査を行う)で納得して頂いておりますが,施主(役所)の方が『道路土工−擁壁工指針に従うように』との指示を出される場合もあります. また,「裏込め土にもたれかかるので前へ転倒しないことはわかるが,後ろへ倒れる危険性があるのではないか.切土ならともかく,盛土の場合には心配だ」と,納得をしてもらっても,このような不安を抱えられているため,「会計検査のことを考えれば使えない」との意見があります. |
回答
図1を見ていただきたい.どの擁壁も高さ,幅が同一(重量Wが一定)とします.擁壁設計法に関する知識を全くもたない者に,「転倒に対する安全性はどれが大きいか」と質問すれば,10人中10人が@→A→B→Cの順に大きくなると答えるでしょう.また,@とDでは,アンカーを施工しているDの方が,BとEも同様にEの擁壁の安定性が高い,と答えるはずです.その理由が何故なのかは説明できないかも知れません.万有引力の存在やニュートン力学がわからなくても,「手に持ったリンゴを離せば落ちる」ことがわかるのと同じです.
ところが土木技術者の多くは,全く逆のことを言っています.「手に持った紙切れを風の吹く日に離せば空に舞い上がる.だから,リンゴも空に舞い上がるに違いない」と言っているのと同じようなものです.リンゴが空に舞い上がるかどうか試してみれば直ぐわかるのですが,リンゴが地面に落ちることを確認しても,ときには舞い上がる危険性もあると主張しているのと同じです.とても正気の沙汰とは思われません.
構造物を設計する場合には,@構造物にどのような大きさの荷重がどの位置にどの方向に作用するか,A構造物が静的安定を保つ(力がつり合いを保つ)ためには,反力がどの位置に発生するか,Bその結果,外的安定条件を満たしているか,ということを必ず検討するはずです.
重力式擁壁などの自立可能な擁壁の反力は,図2@に示すQV,QHだけであり,基礎底面にしか発生しません.このため,擁壁であればどのような擁壁でも反力は底面のQV,QHだけと思っている人がほとんどです.底面の反力しか考えなければ力は釣り合わないので転倒するという結論になってしまいます.
もたれ式擁壁とは,裏込土にもたれかかって安定を保持する擁壁です.つまり,裏込土から反力を受けて安定するのですから,底面以外に壁面の反力も考慮する必要があります.そうすれば,常識的な結果が得られます.壁面の地盤反力を考慮した計算結果は質問8の回答に添付している図1となります.
もしも,壁面の反力が裏込土の受働土圧を超える大きさであれば,擁壁は背後に転倒することになります.しかし,反力はわずかですので,背後が緩い盛土であろうとも全く問題ありません.会計検査を心配されておられますが,これが問題になることはないと思います.

図1 各種の擁壁に作用する荷重