Q44 試行くさび法で土圧の極大値が複数出現する場合の考え方は?
擁壁に作用する土圧を試行くさび法にて求めると、下図のように、最大となる土圧の他に2点もの極大となる箇所が計算されることがあります。このような場合、どの土圧を設計計算に採用すべきなのでしょうか。 ある考え方では、角度が最大の箇所の土圧を採用するという、つまり、試行的に角度を変化させる際、角度を90度から減らしていって、最初に現れる極大点をもって、その擁壁に作用する土圧とするものです。下図ではω=56゛に当たります. 残念ながら、自分が調べた範囲では、この考えの根拠はわかりませんでした。一体どの箇所が正しいのでしょうか。 ![]() |
回答
盛土が不連続に変化している場合や地表面に不連続な載荷重がある場合には,極大値が複数個出現します.出現する極大値の内の最大値が主働土圧です.
「すべり角が最大の箇所の土圧を採用する」という説があることは,初めて知りました.一体,どのような文献に掲載されているのでしょうか.そのような説の理論的根拠はないように思われます.
Q45 地盤支持力計算における荷重傾斜角の求め方
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貴殿の著書「続・擁壁の設計法と計算例」のP-151 式5.15で道示による荷重の偏心傾斜を考慮した極限支持力度を、合力(t)ではなく、等分布(t/m2)という表現をされておりますが、同式で、最大地盤反力度(t/m2)に対する安定度の照査を行う場合、荷重の傾斜tanθはどのように考えたら良いでしょうか。 |
回答
(1)支持力の考え方
支持力照査とは,一般に次のことを意味しています.
@支持地盤とフーチング下面の境界面でのせん断破壊に対する照査
A支持地盤内部でのせん断破壊に対する照査
B地盤の変位に対する照査
地盤のせん断破壊がどこで発生するかは,荷重の傾斜や境界面の状態によって異なります.本来は,@とAは区別することなく照査すべきですが,解析が複雑になることから一般には,@は滑動,Aは支持力と称してそれぞれ別々に照査されています.(続・擁壁の設計法と計算例p173〜174参照)
道路橋示方書の支持力公式による照査はAの照査を意味します.極限支持力を算定する際,便宜的に,地盤は剛塑性体と仮定しています.つまり,地盤の変形は全く考慮されていません.岩盤など地盤が硬質の場合には,変位が問題になることはないのですが,緩い地盤であれば極限支持力に達するまでに大きな変位を生じます.そこで,道路橋示方書では,極限支持力とは別に,最大地盤反力度の上限値を規定しています.これは,過大な変位を防止するためです.
(2)最大地盤反力度とは
基礎に鉛直荷重,水平荷重,モーメントが同時に作用する場合,地盤反力度は下図の(a)のようになります.モーメントの影響で地盤反力鉛直成分qVは変化しますが,水平成分qHは一定です.このため,荷重傾斜角はフーチング位置によって変化します.最大地盤反力度とは,図(a)のq1を指す場合と図(b)のqv1を指す場合がありますが,実務では一般に地盤反力度の鉛直成分の最大値qv1のことを最大地盤反力度と呼んでいます.
(3)荷重の傾斜の求め方
道路橋示方書では極限支持力の計算に際し,マイヤーホフの有効載荷B'=B-2eの概念を用いることで図(2)のように鉛直成分,水平成分とも等分布荷重に換算して計算することになっています.このように,等分布に換算すれば,tanθ=H/Vとして計算してもtanθ=qH'/qV'として計算しても全く同じことです.
(4)支持力計算で荷重の傾斜を考慮すべきか
基礎の支持力計算には,道路橋示方書式のように荷重の偏心傾斜を考慮したより厳密な式を用いるのが理想的です.ただし,正しい支持力を算定するには,地盤のせん断強度定数が正確にわかっている必要があります.乾いた豊浦標準砂のような特殊な土を除けば,一般にせん断抵抗角以外に粘着力も有しています.粘着力があるにも関わらず,これを無視して道路橋示方書式で支持力を算定すると,非現実的な小さな支持力が与えられます.現実には,せん断強度定数を正確に求めるのは困難な場合が多いので,N値などから経験的に変位量と地盤のせん断破壊の両方を考慮した許容支持力が推定されています.橋梁の基礎以外では,荷重の傾斜を無視した支持力公式が使用されていますが,それでも経験的に妥当な支持力が算定されるためと思われます.

地盤支持力については,下記のコーナーで詳細に解説していますので,参考にしてください.
上界法による地盤支持力計算法
Q46荷重合力が底面核から後方へ外れる場合の地盤反力計算法
| 貴著「新・擁壁の設計法と計算例」の第6章もたれ擁壁の地盤係数法による地盤反力度の計算式(p161)に関して質問をさせていただきます. @編心量d≧31B/60の場合qvmax=1.1V0/Bということですが、合力の作用位置が底版核から背面側へ外れた場合も適用できるの式なのでしょうか。 A床付面が岩盤(軟岩)の場合は、等分布として簡便化しても差し支えないのでしょうか。 実は、軽量盛土の安定検討でもたれ擁壁構造となるため、底版反力の計算に適用できるのではと考えたのですが、よろしければ回答お願いします。 |
回答
(1)d≧31B/60の場合qvmax=1.1V0/Bの適用条件
この式の誘導過程は,続・擁壁の設計法と計算例p135〜139に詳述してあります.この式が適用できるのは,壁厚が等厚で,壁背面地盤と底面の支持地盤のN値が極端に違わない場合です.
簡便的なこの提案式を用いるよりも,地盤係数法で計算されることをおすすめします.もたれ式擁壁の設計ソフトは,拙著「Excelによる擁壁設計」に添付されていますので試しに使ってみてください.
もたれ式擁壁の場合,擁壁自重と主働土圧の合力は底面核から外れます.しかし,擁壁背面は盛土で支えられていますので,壁背面に地盤反力が発生します.壁背面の地盤反力ををも考慮した合力は底面核から後方へ外れることはありません.
(2)支持面が岩盤であれば地盤反力を等分布と見なせるという根拠は見あたりません.
Q47 フローティング方式置き換え基礎の計算における粘着力深度方向増加係数の求め方
| 擁壁の基礎地盤の支持力が不足するため、砕石で置き換えを考えています。 そこで、「続・擁壁の設計法と計算例」の中で157ページにあります、5.3.2フローティング方式置き換え基礎を参照して設計しておりますが、kの取り方がよくわかりません。 粘着力の勾配をあらわしていることはわかるのですが、計算上の実際の値の取り方はどのようにすればよろしいのでしょうか?294ページの計算例ではk=0.2t/uになっています。 また、「誰でも簡単にできる Excelによる擁壁設計」の219ページの12.11置き換え基礎出題例では、k=5.6kN/m3になっています。 現在計算している設計条件は、 現地盤 γ=16kN/m3, 粘着力 C=20kN/m2,φ=10° 置き換え土(砕石を使用) γ=20kN/m3,粘着力 C=0kN/m3,φ=35° です。 |
回答
(1)粘着力深度方向増加係数
沖積粘性土は一般に粘着力が深度方向に増加することが経験的に知られています.こうしたことから,拙著に記述してあるフローティング方式置き換え基礎の支持力計算では,粘着力の深度方向の増加を考慮できるものとしています.
粘着力の深度方向増加係数を求めるためには,深度方向に複数箇所から不攪乱試料を採取し,それぞれの試料で一軸圧縮試験もしくは三軸圧縮試験を行い,粘着力と地表面からの深度zとの関係式c=kz+coを求める必要があります(下図(a)参照).
1箇所でしか土質試験が行われていないとすれば,kを直接求めることはできません.もしも,標準貫入試験が深さ方向に実施されていれば,N値と深度zの関係式N=az+b,cが求められている位置のN値とcの関係式c=mNを求めると,c=maz+mbとなるので,k=ma,co=mbとなります(下図(b)).
標準貫入試験のデータもないとすれば,下図(c)のようにc0=0として,kを推定するか,kが0.2よりも大きくなるようであれば,正規圧密粘土の場合の経験式c=0.2zより,k=0.2と仮定して下図(d)の要領でc0推定することが考えられます.
重要な構造物や規模の大きい構造物では,土質試験をして下図(a)の方法で求めるべきでしょう.

図1 粘着力深度方向増加係数kの求め方
(2) 置き換え土のせん断強度定数
置き換え砕石のせん断強度定数として,φ=35゜,c=0と仮定されていますが,この根拠はありますか.
表1は国土交通省四国整備局が香川県内で実施した平板載荷試験の結果です.事例1と事例2が砕石による置き換え基礎上で実施されています.いずれの載荷試験も地盤の極限状態まで載荷されていませんので,支持力は不明ですが,500kN/m2程度の載荷で沈下量はわずか2〜3mm程度ですので,極限支持力度としては載荷重の3倍の1500kN程度は期待できそうです.
極限支持力度をqd=1500kN/m2,φ=35゜,γ=20kN/m3と仮定して,支持力公式より粘着力を逆算で求めればc=30kN/m2となります.砕石基礎の場合,この程度のせん断強度定数は期待できそうに思われます.
支持力公式はqd=cNc+0.5γBNγ,Nc=46.12,Nγ=48.03,B=0.3mとしています.
| 表1 平板載荷試験結果(香川県) | |||
| 事例 | 最大荷重 | 沈下量 | 備考 |
| (kN/m2) | (mm) | ||
| 1 | 566 | 1.74 | 置き換え基礎 |
| 2 | 400 | 2.85 | 置き換え基礎 |
| 3 | 560 | 1.02 | 原地盤 |
| 4 | 560 | 2.57 | 原地盤 |
| 5 | 480 | 2.46 | 原地盤 |
(3)フローティング方式支持力算定式の訂正
拙著「続・擁壁の設計法と計算例」,「Excelによる擁壁設計」で記載している支持力式は,私の勘違いで間違っていました.
下記の正誤表を見て修正してください.なお,Excelによる擁壁設計付属プログラムは,理工図書のホームページで訂正できます.
著書正誤表
理工図書ホームページ
http://www.rikohtosho.co.jp/excel/index.html
Q48 擁壁のかかと版が短い場合の土圧
擁壁Q&A選集の質問3.23として 「逆T型擁壁の安定計算をする際,道路土工−擁壁工指針や道路橋示方書には,かかと版が長い場合は図1のように仮想背面に土圧が作用するものとして,かかと版が短い場合は図2のようにたて壁に直接土圧が作用するものとして計算するように解説されています.かかと版の長さがどれだけあれば仮想背面を設定することができるのでしょうか」 と記述されていますが,図2の土圧の作用させ方は、擁壁工指針や道路橋示方書には記述されているのでしょうか?記述されているとしたら何ページに書いてあるのでしょうか? ![]() |
回答
道路橋示方書下部構造編や道路土工−擁壁工指針には,図1.図2のような具体的な図面は掲載されていませんが,下記のような記述が行われています.
平成8年1月に出された道路土工−擁壁工指針改訂原案には,かかと版の長さにより仮想背面の適用方法が図面入りで具体的に記述されていました.しかし,平成11年3月に発刊された改訂版では,改訂原案の詳細な記述が削除され,曖昧な文章表現となっています.「躯体と土塊が一体として挙動しない場合」と言うのは,改訂原案から判断し,かかと版が短い場合を意味していることは明らかです.
(1)道路橋示方書下部構造偏(平成2年版)p161
重力式橋台のように後フーチング突出長が20〜30cm以下のような短い場合の土圧は,躯体コンクリート背面に直接土圧を作用させることとした.
逆T式,控え壁式橋台の場合は,一般に後フーチングの突出長が長いため,安定計算では図解3.2.7に示す後フーチングの上載土砂を躯体の一部と見なし,dc面を仮想背面と見なして土圧を作用させる.
(2)道路橋示方書下部構造偏(平成8年版)p133
重力式橋台のように後フーチングが短い場合の土圧は,躯体コンクリート背面に直接土圧を作用させることとした.
逆T式,控え壁式橋台の場合は,一般に後フーチングの突出長が長いため,安定計算では図解3.2.7に示す後フーチングの上載土砂を躯体の一部と見なし,dc面を仮想背面と見なして土圧を作用させる.
(3)道路土工−擁壁工指針改訂原案(平成8年)p68
仮想背面は次のように設定する.
1)重力式擁壁やもたれ式擁壁等の場合
重力式擁壁やもたれ式擁壁において,底版のかかと部分を若干張り出しかかと版を設けるなど,厳密な意味で背面が平面でない場合がある.また,プレキャスト擁壁などでは曲線を部分的に取り入れた背面を有する場合もある.
このような場合は図2-2に示すように底版のかかと部分と頂版の最後方点を結んだ線を仮想背面として設定し,背面を近似する.この場合の仮想背面は実際の背面の近似であり,仮想背面に対する土圧の壁面摩擦角は実背面の場合と同じく,土とコンクリートの壁面摩擦角の値を用いる.

2)片持ばり式擁壁の場合
片持ばり式擁壁の場合,底版が背面に大きく張り出しており,この上の土砂は擁壁が変位する場合には擁壁の挙動と同じ挙動をすると考えられるため,図2-3に示すように安定検討に際しては底版かかとから鉛直上方へのばした線を仮想背面として設定する.また,仮想背面に対する壁面摩擦角は土と土の値を用いることとする.

3)仮想背面の適用について
上述の二種類の仮想背面のいずれを用いるかは,擁壁かかと版上の裏込め土が擁壁躯体と一体になって挙動するか否かが基準となる.一般に下記に挙げる条件を満たす場合には擁壁かかと版上の充分に大きな土塊が擁壁躯体と一体なって挙動するので2)の仮想背面を設定しても良い.
@底版かかと版上部がほぼ水平であること(20%程度以下)
A縦壁背面がほぼ鉛直であること(20%程度以下).
B擁壁底版かかと版長をBH,縦壁の底版上面からの高さをHWとし
α1=0.5×(90゜+φ+θ)とした場合に,
tanα1≧0.6×HW/BH
ただし,θ=-β+sin-1{(sinβ)/sinφ)}

(4)道路土工−擁壁工指針( 平成11年版)p59
躯体と土塊が一体として挙動しない場合に仮想背面を設定して設計検討を行うと安全率を過大に評価する恐れがあるので,注意が必要である.
Q49 二層系地盤支持力と支持力公式の使い分け
| 今まで地盤の支持力に関しては殆ど勉強をいていませんでしたので、 初歩的な質問で申し訳ないのですが、以下の3点について、是非御教授して頂きます様宜しくお願い致します。 (1)質問1 「続・擁壁の設計と計算例」のP155「5.3 二層系地盤の支持力計算」で式(5.20)があります。 この式はTerzaghiの原式中のB(基礎底面の最小幅)をB1(有効載荷幅)に変えたものになりますが、この場合の支持力係数は表5.3(P154)を用いて良いのでしょうか。 (2)質問2 「建築基礎構造設計指針」では、二層地盤の支持力に関して有効載荷幅の考えが記述されていません。そこで、支持力係数の使い分けを以下の組み合わせと考える のはおかしいのでしょうか。 偏心・傾斜荷重を考慮する場合→道路橋示方書の図表(φ、tanθ)による 偏心荷重を考慮する場合 →表5.3(P154)による 偏心・傾斜荷重を考慮する場合→表5.3(P154)による (3)質問3 「5.3 二層系地盤の支持力計算」中のP156で ”図5.17は道路土工指針の考え方を示している。道 路 土工指針では・・・・・・・・と規定している。” と記述がされています。 この記述の流れからいくと、式は(5.20)(5.21)(5.22)を支持力係数は表5.3を用いる事になるのではと思いますが、道路土工指針P111A改良深さの箇所では、”地盤の任意の深さにおける許容支持力度は「道路橋示方書・同解説W下部構造編」に準拠して求め”と記述がされています。 こちらの流れでは、道路橋示方書の「φ、tanθ」から支持力係数を求める事になると思われます。支持力式及び支持力係数はどの様な使い分けをすればいいのでしょうか。なお,質問3では、式(5.20)には表5.3を使うものと仮定して質問させて頂きました |
回答
質問1について
続・擁壁の設計法と計算例に記述してある式(5.21)は,地盤の極限支持力度を粘着力項,サーチャージ項,地盤自重項に分けて表記していますが,支持力をこのような形で表したのはテルツァギーが最初です.
式(5.21)の支持力係数を求めるに際して,テルツァギーは図1のようなすべり面を仮定して,地盤の自重がない場合の支持力解を求め支持力係数Nc,Nqを決定しました.地盤自重効果による支持力は,図1のすべり面とは別途に,bc面における受働土圧からNγを数値計算で決定しました.それらの結果を元に大崎順彦博士が載荷試験結果を踏まえて修正した値が拙著の表5.3に示されています.
ところで,テルツァギー式には下記の問題があります.
[問題1]フーチング直下のくさび面と水平面のなす角をφと仮定したこと.
テルツァギーは,主働くさび角を図1のように∠abc=∠bac=φと仮定していますが,これは運動力学的に明らかに間違っています.したがって,このような仮定のもとに得られた支持力係数Nc,Nqの値も間違っています.
地盤の自重が無視される場合の支持力係数Nc,Nqはプラントルらによって導かれた拙著表5.1の値が正しいというのが定説です.
[問題2]支持力の重ね合わせ
テルツァギーは,支持力は粘着力による支持力とサーチャージによる支持力と地盤自重による支持力を重ね合わせて求められるとしました.しかし,支持力係数Nc,Nqを求める際のすべり線とNγを求めるすべり線は別個のものであるので,このような重ね合わせは成り立たちません,
ただし,プラントルらの支持力式や道路橋示方書式についても,テルツァギー同様に支持力の重ね合わせをしており,理論上正しいとはいえません.
上述したように理論上テルツァギー式は間違っているのですが,理論値と大きくかけ離れていないこと,載荷試験によって検証されていること等から,建築基礎構造設計指針ではテルツァギーの支持力係数を修正した表5.3の値が用いられています.
しかしながら,表5.3の支持力係数が建築基礎以外で認知されているとはいえません.道路構造物の支持力を算定する場合には,道路橋示方書なり道路土工指針に準拠するなど関係機関の設計基準に準拠するのが無難でしょう.
(5.21)


図1 テルツァギーが仮定した地盤の自重を無視した場合のすべり線
質問2について
建築基礎として設計されるのであれば,建築基礎設計構造設計指針に準拠すべきと思います.建築基礎設計構造設計指針では,指針のp126-p127に傾斜荷重および偏心荷重を受ける場合の支持力式としてマイヤーホフの式が示されています.また,二層系地盤の支持力式として山口柏樹博士の式がp125に示されています.ただし,山口博士の式は荷重の偏心傾斜がない場合ですので,マイヤーホフ式と組み合わせて用いるのがよいと思われます.つまり,山口博士の式のBの代わりに有効載荷幅B'を用いるのです.この考え方は,拙著のp155「5.3.1不完全支持層がある場合の計算」として紹介しています.
質問3について
道路土工−擁壁工指針のp111〜p112に記述されている内容について多くの読者から質問をいただきますが,私には全く理解不可能です.このことに関しては,拙著「擁壁Q&A選集のp127〜p128に問題点と私の考え方を記述していますのでそちらを見てください.
支持力公式の使い分けについて
これまで多くの研究者によっていろいろな支持力公式が提案されています.どの式を使用すれば良いのか迷われるのは当然のことと思います.いろいろな式が提案されているのは,支持力の正しい解析解を求めることはできないことにあります.テルツァギー式が間違っていることを指摘しましたが,他の支持力式も理論的に矛盾した仮定や,解析の都合上の便宜的な仮定のもとに組み立てられています.
しかし,支持力の解析解は求められなくても,パソコンを用いれば理論解に極めて近い支持力を簡単に求めることができます.支持力計算式については,このホームページの土木技術再入門コーナーで「上界法による支持力計算法」と題して紹介していますのでご覧になって下さい.
道路橋示方書式などに見られるように,自重を無視した支持力解と数値計算で得られた自重効果による支持力を足して求めるといった不合理なうことをしなくても数値計算すれば荷重の偏心傾斜,地盤面の傾斜を考慮した支持力を正しく求めることができます.パソコンの普及した時代に,数値表やグラフから支持力係数を引っ張って計算するというのは何とも不思議な話です.
ただし,いくら正しい支持力をパソコンで計算できるといっても,
@地盤のせん断強度定数が正しく求められていること.
A支持力式を理解し,ユ−ザーや会計検査員を説得する技術力を有すること.
が前提になります.
道路土工−擁壁工指針では,土質試験から求められたせん断強度定数を用いて道路橋示方書式で支持力を算定することを原則としているものの,擁壁高が8m未満で土質試験が困難な場合は経験的に求められた許容支持力を適用しても良いとしています.地盤の粘着力やせん断抵抗角のピーク強度が正しく求められていない場合に荷重の偏心傾斜を考慮した支持力公式を適用すると,一般に支持力を極端に過小評価することになりかねません.むしろ,経験的な許容支持力度を用いる方が実際に近いと思います.
また,支持力理論を理解するのが難しいのであれば,設計技術基準に準拠するのが無難でしょう.その場合,建築基礎であれば建築基礎設計構造指針で統一し,他の技術基準との混用は極力避けるべきと思います,
拙著の正誤表
拙著の二層系地盤の支持力計算に関する記述には,何カ所かミスがありました.下記に正誤表を載せていますので訂正をお願いいたします.