Q238 平面的に折れ曲がったプレキャストL形擁壁の安定計算法
| 私はプレキャストコンクリート製品メーカーで設計をやっておりますが,プレキャスト擁壁に関して役所より質問を受け説明に苦慮しています。 プレキャスト擁壁を外折れ部に設置するため,底版同士が離れた状態で施工を行いました。(底版の隙間部はコンクリート等の処理はしていません。) そこで,このような設置状態における擁壁の安定検討を求められております。擁壁の隙間(三角の部分)における土の擁壁の作用力はどのように考えれば良いでしょうか? |
回答
擁壁に作用する土圧は図−1のように考えることができます。
接合部のたて壁は,土砂の漏れを防ぐためくさび状のコンクリートブロックがはめ込まれるか,現場コンクリートが打設されると考えられます。そこで,くさび部に作用する土圧をΔP,くさびと擁壁の境界面の摩擦角をδとすると,擁壁は図−2に示すようにΔRの力で押されます。したがって,1ブロック当たりの擁壁に作用する全土圧捻は式(5)のように表せます。
擁壁の安定性は,Pの土圧の代わりに捻の土圧を作用させて照査すればよいでしょう。

| ブロック積擁壁は,もたれ式擁壁に比べて剛性が低いと考えられますが,もたれ式擁壁と同じ方法で基礎コンクリートに作用する荷重をを算定できるのでしょうか。 あるコンサルでは、 下図のように基礎コンクリートには、基礎コンクリート直上分のみの荷重がかかり、ブロック自体は盛土と一体あると考えられていますが,この考えはおかしくないでしょうか。 ![]() |
回答
質問内容からすると,あるコンサルでは基礎コンクリートに作用する荷重を図1のように考えていると解釈できますが,この仮定が成り立つためには,ブロック積みがa-a面で鉛直にせん断されなければならず,このような仮定は考えられません。

擁壁の剛性が高いか低いかに関わらず,擁壁が安定している(静止している)とすれば力のつり合い条件を満足する必要があります。擁壁全体について考えれば,擁壁に作用する荷重にはブロック積みの重量W1,基礎コンクリートの重量W2,根入れ部の土の重量W3があります。これらの荷重の大きさに応じて力のつり合い条件(之=0,禰=0,熱=0)を満たすように,壁面にR1,底面にR2の地盤反力が発生します。
擁壁の剛性が高いか低いかによって擁壁の曲げ変形量が異なるため,地盤反力度の分布形状に影響します。剛性が高くて剛体と見なせば地盤反力は直線分布なり,剛性が低いと曲線分布になりますが,反力の大きさには剛性は関係ありません。
擁壁が安定していれば,反力R1は主働土圧PAと受働土圧PPの間に,反力R2は地盤の支持力Qより小さい範囲にあります。R1,R2がそのような範囲に存在しなければ,背後の盛土あるいは基礎地盤が破壊するということになりますが,ブロック積み擁壁は一般に荷重が小さいのでPA<R1<PP,0<R2<Qの範囲にあります。
R1,R2を求める問題は,不靜定問題であるため力のつり合い条件のみでは求めることができません。地盤係数法等を用いる必要があります。

Q240 有効載荷幅法と最大地盤反力度法で支持力に対する安全率は大きく異なるか
| 下図のような粘性土地盤上にL型擁壁を計画していますが、「擁壁Q&A選集」P-127の"(b)有効載荷幅による照査法"により置換え厚の検討をした結果は次のとおりです。 全鉛直荷重 V=1047 kN ,全水平荷重H=328 kN 底版幅B=5.80m ,偏心量e=0.855m 擁壁地盤反力度q1=340 kN/m2 q2=21 kN/m2 置換え厚 h=0.0mの場合(N値=12) Df =1.20m, Df '=0.00m, B =5.80m , B'=B-2*0.920=3.96m tanθ= 0.31 Nc =3.0 ,Nq =1.0,Nγ= 0.00 α=1.0, β=1.0,k =1.00 q =22.8 ,γ1=18,γ2=19 c =75.0 ( c=12/1.6*10) Sc = 1,Sq =1,Sγ =1 Qu =3.96*{1.0*1.0*75.0*3.0*1.0+1.0*22.8*1.0*1.0+1/2*18*1.0*3.96*0.0*1.0}=981.29kN 地盤の許容支持力 Qa=1/3 * QU =1/3 *981.29=327.1<1047kN OUT 置換基礎 h=2.00mの場合(N値24) B'=3.96+ 2*2.00*tan30°= 6.269m Nc =3.0 ,Nq =1.0,Nγ= 0.0 α=1.0, β=1.0,k =1.0 q =60.8 ,γ1=18,γ2=19 c =150 ( c=24/1.6*10) Sc = 1,Sq =1,Sγ =1 Qu =6.269*{1.0*1.0*150*3.0*1.0+1.0*60.8*1.0*1.00+1/2*18*1.0x6.269*0.0*1.0}=3202.21kN 地盤の許容支持力 Qa=1/3*QU =1/3*3202.21=1067.4>1047kN O.K 以上のように有効載荷幅による照査法では,置きかえ厚h=0でOUT,置きかえ厚さh=2mでOUTとなりました。しかし、"(a)最大地盤反力による照査法"により検討したならN値=12(粘着力c=75kN/m2)で十分支持力は足ります。この差が大きいことよりどの照査法を適用すべきか考えています。御教授いただけないでしょうか。 ![]() |
回答
最大地盤反力度によって支持力を照査すると下記のようになり,置きかえしない場合には有効載荷幅法と同様にOUTになります。
qd=α・k・c・Nc・Sc+k・q・Nq・Sq+1/2・γ1・β・B'・Nγ・Sγ
=1.0*1.0*75.0*3.0*1.0+1.0*22.8*1.0*1.0+1/2*18*1.0*3.96*0.0*1.0
=225+22.8=247.8kN/m2
qa=qd/3=247.8/3=82.6kN/m2<q1=340kN/m2 OUT
置きかえ無しの場合の支持力に対する安全率は
有効載荷幅法 Fs=Qu/V=327.1/1047=0.31
最大地盤反力度法 Fs=qd/q1=82.6/340=0.24
最大地盤反力度法の安全の率が小さくなります。
| 「続・擁壁の設計法と計算例」第7章計算例、7.12U型擁壁の計算例について、質問を致します。 (1)後壁の土圧をランキンでしているので,沈下を除く安定性、部材の安全性の確認は安全側で設計されていると思いますが、沈下の照査の際には厳密にはクーロンで再計算し、土圧の方向性を考慮し、地盤反力の確認計算を行ったほうが、よりよいと思うのですが。 (2)図7.12.2解析モデルの図で背面土圧は台形分布が正しいのでは? (3)既に正誤表がHPに紹介されている場合は失言になりますが、P321 (3)果樹の集計のモーメントの列 で4.188×1.181+5.700×0.151は 4.188×1.18-5.700×0.151ではないでしょうか?またP322の上から3段目はの1/2×1196は1/6×1196ではないでしょうか? (4)バネ解析で前壁の地盤反力を算出していますが、これは擁壁を剛体として変形を一切無視して、かつ擁壁自体がわずかに動こうとするという前提条件に沿って考えられていると思います。これはこれで、1設計手法としては理論的に間違いがないと思います。 しかし、厳密には擁壁が動かない(滑動しない)ように設計する前提条件を考慮し、又実際に考えられる擁壁壁面の変位性から考慮すれば、前壁が剛性とならない場合図7.12.2で例えれば、右方向にたわみ、実質弾性土圧が発生し(擁壁が背面土を十分に押せてない)、擁壁全体が滑動しようとする時だけ剛性が高い範囲のみ地盤反力が発生するのではと小生は思っています。よって小生は、まず滑動の計算を行い、動く条件の場合に地盤反力を算出した方がより説明性がいいのではと考えています。 といっても結局のところ接地構造物なので、地盤の早期・長期塑性変位量が不明な以上変位量も算出できませんので、結局弾性理論の域を脱出できず近似値解しか出来ないのかもしれませんが・・・・。 この考えは間違っているのでしょうか?実際の場合とこの計算例は多少違うのではという違和感があり図7.12.4をみて思いました。 (5)そこで今一度地盤係数法の基本的な考え方で確認したいのですが、 @地盤係数法で、公式化されているものは、実験および経験値から算出された近似値式である。 AN値換算なので、N値が低い=軟らかい、緩い。N値が高い=堅い。ので反発係数みたいな感じである。 B軟弱=著しい塑性変形(側方流動など)の場合は適用できない。 C地質による補正が現段階では、データが不足しておりできない。 (6)最後に、出版のリクエストなんですが、擁壁の設計で限界状態設計法を導入した場合、地盤の塑性理論等に配慮したもを期待しております。(既に出版しておりましたら申し訳ないです。)また次回の書物も楽しみにまっています。 |
回答
(1)について
ランキン土圧理論もクーロンの土圧理論も壁面が水平方向わずかに移動して塑性平衡状態になることを想定しています。鉛直方向の変位は考慮されていません。したがってクーロン土圧やランキン土圧を用いるレベルでは厳密な議論は意味を持たないように思います。
(2)について
図7.12.2は地表面載荷重がない場合を描いているため,土圧分布を三角形としています。より一般的な表現をするには,載荷重を描き,土圧を台形分布にするのか゜よかったと思います。
(3)について
ご指摘の通り,著者のミスです。
(4)について
拙著では,主働状態になるためには擁壁が動くと表現していますが,これは滑動するという意味ではありません。盛土にせん断強度が発揮されるためには(すべり面に摩擦力が発現するためには)擁壁がわずかに前方へ動く必要があるという意味です。擁壁が全く動かなければ,壁面土圧は静止土圧になります。擁壁に作用する土圧は,一般的には静止土圧と主働土圧の中間にあると考えられます。
擁壁が全く動かなければ底面及び前面の地盤も歪みが0であるため地盤反力は発生しないことになります。
壁の変形は,壁の剛度と地盤の剛度の相対的なものです。地盤が軟弱であれば壁厚が薄くても剛体に近い挙動をするし,岩盤のように硬ければ少々壁厚が大きくても弾性体的挙動をすると考えられますが,根入れ抵抗が問題になるのは軟弱な地盤の場合と考えられるため,水路を剛体と見なしても問題ないと思われます。
(5)について
地盤係数法とは,地盤を離散型のバネとしてモデル化しています。このため,実際とはかなり異なると考えられますが,計算が容易なことから設計の実務では一般に地盤係数法が用いられています。
直接基礎やケーソン基礎では基礎を剛体,地盤を離散型バネとして,杭基礎では杭を弾性体,地盤を離散型バネとして地盤反力を算定していますが,これらはいずれも地盤係数法です。
(6)について
支持力や土圧は塑性理論に基づいていおり,終局限界の耐力は現行の方法で求めることができます。しかしながら,土圧や支持力問題では変位量の算定が非常に困難です。地盤解析においてFEM解析が普及せず,現在なお極限平衡法が主流を占めているのは結局変形の計算が困難なためと考えられます。したがって,使用限界状態をどのように決めるかが難しいと思います。道路土工指針は将来性能規定に移行することが決まっていますので,それが改定された時点で限界状態を考慮した図書を出版致します。
なお,現在は,「土圧・支持力・地盤反力」に関する著書を執筆中です。この本は,平成16年5月頃に日経BP社から出版される予定です。
| 私は○○市の開発指導課に勤務しています。仕事上、擁壁の安定計算について勉強しているのですが、クーロンの土圧係数式KAを誘導する計算過程がわかりません。土圧の釣り合いで求められたPaの式を微分してdP/dωが0、もしくはその2回微分が<0になるという条件で求められるという理屈はわかるのですが、KA式がどうしても導けません。他の参考書は、この様な点は式が長くなるため省略されております。たまたま先生のHPを見させていただき聞いてみようと思った次第です。どうぞご指導お願い致します。 |
回答
クーロン主働土圧公式の誘導はかなり複雑ですので,pdfファイルにしておきました。参考にして下さい。
クーロン式の誘導pdfファイル
Q243 間知ブロックに大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアルが適用できるか
| 現在、積みブロックに関しては設計法が確立されておらず、一番活用されているのは「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル(社)土木学会四国支部」のようですが、間知ブロックに大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアルを適用しても問題はないでしょうか?問題となるとしたらどのような点ですか。マニュアルでの大型ブロックの定義が、ブロックの寸法(壁厚)が50p以上となっているため、それ以下の寸法、35pでも安定すれば設計に用いても問題ないか教えてください。 |
回答
平成7年の兵庫県南部地震でブロック積み擁壁が被害を受けました。この震災を受け,耐震性に優れたブロック積み擁壁について研究するため,平成8年に「耐震性大型ブロック積み擁壁に関する研究委員会」(委員長 八木則男 愛媛大学教授)が土木学会四国支部に設立されました。委員会の2年間の研究成果をとりまとめたのが「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」です。
控長35cmの間知ブロックについては,耐震性に劣るという理由から「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」の適用外にしていますが,耐震性を期待しないのであれば,このマニュアルを適用することができます。
間知ブロックは,設計法が確立されていないという理由で,道路土工指針では経験的に決められた法勾配や直高が示されています。これの安定性をマニュアルで照査するとOUTになり,擁壁工指針と整合しなくなることになります。この点をどのように解決するかが課題になると思われます。
Q&Aコーナー
Q244 合力の作用位置が底面から後方へ外れるブロックの応力照査法
| 「土木工学会四国支部−大型ブロック積擁壁設計・施工マニュアル」に基づき転倒照査を行った結果、合力の作用位置が擁壁底版を後方へ外れたが、安全率がFs=1.50以上であったので構造上問題ないと判断した。ところが、「近畿地方建設局―設計便覧(案) 第3編
道路編」(P3-6)に、合力の作用位置が底版中央を外れている場合は、駆体内部に発生する引張り応力について検討する必要があると書かれており、引張り応力について検討を行うように指示を受けています。 設計で用いた大型ブロック積擁壁は、中空ブロックを積層し中空部にコンクリート打設するタイプのブロックを用いています。 駆体内部に発生する引張り応力の照査はどのように行えば良いのでしょうか。ブロック上部に外力(鉛直力)が作用する場合の引張り応力照査の方法もお答え頂けないでしょうか。 なお、「新・擁壁の設計法と計算例」P164−6.6断面力の算定にある地盤反力分布幅=壁面長lの0.25倍とありますが、なぜ0.25倍と仮定するのかお答え頂けないでしょうか。 ![]() |
回答
(1)合力は底面から後方へは外れない
擁壁の背後は盛土で支えられており,後方回りの回転が拘束されているため,合力の作用位置が底面から後方に外れることはあり得ません。合力の作用位置が底面から後方に外れるのは,壁面土圧を主働土圧と仮定しているためです。ブロック積み擁壁やもたれ式擁壁では,盛土の歪みが圧縮歪みになるため,主働土圧は作用しないのですが,大型ブロック積擁壁設計・施工マニュアルでも便宜的に主働土圧を作用させていますが,その代わりに図1(b)のように壁面の地盤反力を考慮しています。

図1
(2)壁の応力度の照査法
図2に示すように照査断面より上部に作用する荷重を求め,照査断面位置で断面力(軸力,せん断力,曲げモーメント)を算定します。その断面力を用いてせん断応力度,曲げ応力度の照査をすればよいでしょう。
具体的な応力度の照査法については,大型ブロック積擁壁設計・施工マニュアルのp40-45に記述してあるので参考にして下さい。

図2 応力度の照査
(3)壁面の地盤反力分布幅
大型ブロック積擁壁設計・施工マニュアルのp30〜p33に詳細に説明してありますのでご覧下さい。
Q&Aコーナー
| 「新・擁壁の設計法と計算例」P.103の地盤反力度の算定で、e<B/6の場合とe≧B/6の場合が示されています。一般に地盤反力の照査には前者の式を用いますが、後者の式はどのような場合に用いても良いのでしょうか。教えてください。 |
回答
一般に,常時荷重に対しては荷重合力が底面の中央1/3(ミドルサード)に入るように設計していますが,地震時や自動車荷重衝突時,暴風時などの異常時には荷重の合力がミドルサードから外れることを許容した設計が行われています。e>B/6の地盤反力算定式はそのような場合に適用します。
| 主働土圧係数KAを用いて、擁壁下端の土圧強度がγHKAで表される時に、擁壁全体にかかる土圧合力は、∫(γhKA)dh=1/2×γ×H^2×KAという具合に鉛直方向に積分した形になっています。 水の世界では、全水圧を考えるときに壁面の傾斜に沿って積分すると思うのですが、土の世界では、鉛直方向に積分すればよい理由は、土圧係数KAがそういう係数であるからなのでしょうか? |
回答
土圧合力PAの算定には、一般に土圧を鉛直方向に積分して求められた式(1)が用いられています。これは、その方が使い勝手がよいという理由だと思います。しかし、場合によっては壁面長Lに沿って積分した式(2)で土圧合力を算定することもあります。

| 平成8年までの道路橋示方書では、「tanθは上載荷重qと粘着力cの比q/cで示された線が限界で、その値より小さくなければならない。」と記述されています。 平成14年の道路橋示方書では、「荷重の傾斜tanθは、地盤の抵抗を示す上載荷重qと粘着力cとの比q/cよりも大きくはなり得ないので、tanθがq/cよりも小さい領域にのみ適用できるものである。」と記述が若干見直されています。 これまで、あまり深く考えずにグラフをそのまま使用していましたが、「tanθはq/cよりも大きくなり得ない」とは、どのような状態をいっているのかについて、今更ながら疑問を持つようになりました。私なりに色々と考えてみたのですが、意味がつかめず困っています。 お忙しいところ恐縮ですが、この疑問についてお教え下さい。 |
回答
道路橋示方書に示されている支持力係数NcとNqの図表は駒田らの式によって求められたもので,Nγはソコロフスキーの数値計算結果をグラフ化したものである。

図1駒田らの支持力式で仮定しているすべり面
駒田らの支持力式では,鉛直極限支持力度qdを粘着力と載荷重のみによる鉛直支持力度qd1と地盤の自重のみによる鉛直支持力度qd2の和として表している。

Nc、Nqは地盤の自重を無視したライスナーの支持力係数を拡張したものである。Nγは解析解を求めることができないため、cとqを無視したソコロフスキーの数値解析結果を用いるものとしている。
粘着力と載荷重のみによる水平支持力度qh1は式(5)で求めることができる。

荷重の傾斜は式(7)で表される。

式(4)と式(6)の支持力係数には未定量ωが含まれているので、式(7)の条件を満たすωを試行錯誤的に決定する。
ところが、φ=35゜、c=10kN/m2,q=20kN/m2,tanθ=0.5の場合の支持力係数を駒田らの式で求めると、Nc=12.613、Nq=9.832となるが,道路橋示方書の図表ではNc=13.82,Nq=9.17となっている。
式(7)から明らかなように、支持力係数はφ、tanθ以外にq/cに影響されることになるのであるが、道路橋示方書では、Ncはq=0の場合について、Nqはc=0の場合についてグラフ化しているためである。
Nqのグラフの読み方について、道路橋示方書「Nqをθcr線の上側(Tの領域)で見出せない場合にはθcr線の下側(Uの領域)を用いる。このときtanθはq/cで示された線が限界で、その値より小さくなければならない」と解説している。この意味は、下記のように解釈すればよい。
Nqのグラフはc=0の場合について作成されているため、tanθ<tanφでないと適用することができない。しかし、理論上は式(7)を満たせばよく、c>0の場合にはtanθ>tanφであってもよい。こうしたことから、θcr線の下側(Uの領域)でφとq/cから求められるtanθが基礎に作用する荷重傾斜を下回っていれば、θcr線上の(荷重傾斜角をtanφとした)Nqを採用しても良いと言うことである。なお、θcr線はtanθ=tanφとなるラインである。
数値を用いて具体的に説明すれば、例えばφ=30゜、c=10kN/m2,q=10kN/m2,tanθ=0.7の場合、tanφ=0.577<tanθであるのでθcr線の上側(Tの領域)でNqを見出せない。しかし、θcr線の下側(Uの領域)でφ=30゜、q/c=10/10=1に対応するtanθを読み取ると0.73であり荷重傾斜tanθ=0.7より大きいので、θcr線上のφ=30゜に対応するNq=2.76を用いることになる。Nq=2.76は、駒田らの式でφ=30゜、c=0,tanθ=tanφ=0.577として求めることができる。ちなみに、φ=30゜、c=10kN/m2,q=10kN/m2,tanθ=0.7に対する支持力係数はNq=3.34になり道路橋示方書の図表で求められる値よりも大きくなる。
道路橋示方書式のもとになっている駒田らの式は、地盤の自重γを無視した粘着力cと上載荷重qによる支持力項と、粘着力と上載荷重を無視した自重による支持力項を単純に重ね合わせるものとなっている。しかし、地盤の自重を無視して得られるすべり面と、自重を考慮して得られるすべり面は大きさが全く異なるため、単純な重ね合わせは成り立たない。
また、道路橋示方書の支持力係数を算定するグラフで、Ncを求めるグラフはγ=0,q=0という条件で、Nqを求めるグラフはγ=0,c=0という条件で、Nγを求めるグラフはc=0.q=0という条件でそれぞれ作成されている。これは単にグラフ作成の単純化を図るためと思われる。
パソコンが普及していない時代にはやむを得なかったのかも知れないが、設計計算の全てがパソコンで行われている時代であるので、少なくとも支持力係数に関しては便宜的な仮定のもとに作成されたグラフで求めるのではなく、数値計算によって算定すべきである。また、どうせパソコンで計算するのであれば、地盤自重を無視した駒田らの式でなく、自重をも考慮した支持力式を採用すべきであると思える。
Q248 φ=0のときの支持力係数を道路橋示方書のグラフから読みとる方法
| 下記の条件で構造物の支持力を道路橋示方書式で照査したところ,Nqが領域Uになり,使用しているメーカーソフトではNq=0となってしまいます。 B=2.1m,L=2.8m,q=43.2kN/m2,γ=18kN/m3,V=195kN,H=58kN,e=0.32m 支持地盤は粘性土でφ=0、c=36kN/m2 手計算で支持力を計算しようと思いますがφ=0でtanθ=0.3、q/c=1.2の場合,道路橋示方書のグラフでNqの値をどう読み取るのか解りません。今まで砂質土がほとんどで、φ=0のような計算をした経験がございません。初歩的質問で恐縮ですが、お教え下さい。 |
回答
(1)φ=0,q/c=1.2のときのNqのグラフの見方
下図のようにφ=0,q/c=1.2の点(赤○)をグラフ上にプロットし,その点から水平線を引き縦軸と交わった点の値を読みとればNq=1.0,鉛直線を降ろし,水平軸と交わる点が限界のtanθ=0.26となります。荷重の傾斜は0.3であれば,底面が滑動するため支持力は求まらないことになります。
tanθの条件で支持力を得るためには,地盤改良等でcを大きくするなどの方法でq/c<0.8とする必要があります。
なお,図のグラフの緑の文字は,小生が書き込んだものです。

(2)計算による支持力係数の値
道路橋のNc,Nqを求めるグラフは駒田らの提案式をもとにして作成されたものですが,Q247でも回答しているようにNcのグラフはq=0,γ=0という条件で,Nqのグラフはc=0,γ=0という条件で作成されています。道路橋示方書のグラフを使うよりも,c,qを考慮して支持力係数が求められる駒田らの式を用いて計算されることをお勧めします。
駒田らの式は,Q247の回答で紹介していますので,これを用いると下記のように支持力係数を求めることができます。ただし,φ=0とすると計算できないのでφの値として小さい値を入れる必要があります。φ=0.001゜ぐらいの値を入れて計算すると誤差は無視できる程度になります。
計算条件
φ=0.001゜,c=36kN/m2,q=43.2kN/m2,tanθ=0.3
支持力計算
ω=98.3゜(1.715rad)と仮定する。
式(4)よりNq=1.000,Nc=1.995
式(6)よりNq'=0.00,Nc'=-0.958
式(2)よりqd1=11504kN/m2
式(5)よりqh1=-34.50kN/m2
式(7)よりtanθ=0.300 計算条件の荷重傾斜と一致する。したがって,ω=98.3゜は正しい。
以上より,支持力係数は
Nq=1.000,Nc=1.995
である。
(3支持力理論について
駒田らの式の誘導に関しては,下記の文献に詳細に紹介されています。もしも入手可能なら一読されることをお勧めします。
@建設省土木研究所:偏心傾斜荷重に対する極限支持力計算法,土木研究資料第226号,昭和41年12月
A建設省土木研究所:浅い剛体基礎の極限支持力に関する研究,土木研究資料第1611号,昭和55年10月
今年の6月頃になるかと思いますが,「土圧,支持力,地盤反力」の考え方について平易かつ詳しく説明した本を日経BP社から出版することになっています。出版されましたら是非ご覧になって下さい。
Q249 落石防護柵基礎の設計法
| 落石防護柵基礎の設計に関する下記の事項についてお教え下さい。 (1)落石防護柵基礎の背後にポケットを設けた場合、防護柵基礎の安定性の検討は,防護柵に落石衝突荷重が作用するとして行うべきか,それとも基礎に崩土による土圧が作用するものとして行うべきだろうか。 (2)基礎の高さが1m程度のように小さい場合でも,基礎に直接落石が衝突するとして安定性の検討を行う必要があるか。 (3)落石の衝突高さyは,y=2h/3+Hとすべきか,それとも2(h+H)/3とすべきだろうか。 ![]() |
回答
(1)設計荷重について
防護柵基礎の設計で考慮する荷重は,ご質問ように考えるのではなく,常時,落石時,堆積時毎に荷重の組合せを考えて照査する必要があります。
落石対策便覧では,落石が防護柵に衝突する場合は「落石防護柵基礎」として,落石が基礎に直接当たる場合は「落石防護擁壁」として計算することになっており,荷重の組合せとして下記のように示されています。なお,落石対策柵基礎では,自重を死荷重,慣性力を地震と表現していますが,落石防護擁壁と用語を統一して表記しています。
落石防護柵基礎の場合
常 時 自重+土圧
落石時 自重+土圧+落石
地震時 自重+土圧+慣性力
落石防護擁壁の場合
常 時 自重のみ
落石時 自重+落石
堆積時 自重+土圧
地震時 自重+慣性力
荷重の組合せが落石防護柵基礎と落石防護擁壁とで異なっていますが,私は,落石防護擁壁の方に統一すべきと考えています。落石時に崩土による土圧を考慮しないのは,落石衝撃荷重が作用するのは0.1秒以下と非常に短い時間であり,設計時に想定するような崩土土圧と落石衝撃が同時に作用する確率機極めて小さいと考えられるためです。ただし,常時崩土が堆積しているような状況であれば,土圧と落石荷重を同時に作用させる必要があります。
(2)落石衝突荷重について
落石対策便覧では,落石防護柵基礎の場合,基礎に落石荷重が衝突することを想定されていませんが,基礎の規模に関係なく落石が衝突する可能性があるのであれば,基礎に落石を衝突させて安定性を照査すべきです。
(3)落石荷重の作用高
落石対策便覧では,落石防護柵基礎の場合にはy=2h/3+H,落石防護擁壁の場合には明記されていませんが一般にはy=0.9Hとしています。
しかし,落石荷重が衝突する可能性のある範囲は
(2h/3+H)≦y≦D/2
です。ただし,Dは落石径です。
この範囲で,基礎の安定に対して最も危険となる位置に作用させるのが基本だと思います。上限値を2h/3+Hとしているのは,柵は落石の跳躍量よりも柵高の1/3だけ余裕高を見込んで設計されているということが前提です。跳躍量に対する余裕がなく,柵の頂部に衝突する可能性があるなら
(h+H)≦y≦D/2
とすべきです。
「落石防護柵基礎」として設計すれば,基礎に対して最も危険となる衝突位置は,y=D/2+Hとなります。落石防護柵基礎では,落石荷重を支柱2本分の降伏荷重,つまりP=2Fyとしているため,支柱の根元に近いところに衝突するほど降伏荷重Fyが大きくなるためです。y=HではFyが無限大になり計算不能になります。しかし,これは基礎が全く動かない場合であって,基礎の回転を考慮して解析すればこのようなことにはなりません。
具体的な計算法はQ181で回答していますのでご覧になって下さい。
なお,平成13年度度と14年度に国土交通省では落石防護柵基礎の重錘衝突実験を実施しており,平成16年度中に研究成果が公表されることになると思います。また,落石対策便覧の設計法も,その研究成果に基づいて新しい設計法に改定されると思います。
Q250 新・擁壁の設計法と計算例の式(3.12)は間違っている
| 「新・擁壁の設計法と計算例」のP51式(3.12)は土塊の断面積をダブルカウントする部分がないでしょうか?私の間違いであれば申し訳ありません。 |
回答
ご指摘頂き感謝申し上げます。式を照査したところ,下記のミスがありました。

| 『改訂新版 建設省河川砂防技術基準(案)同解説 設計編[T]P79』の水中における見かけ震度の式の改訂目的は、『堰の設計:山海堂発行P247』の文面より、『以前の式は水面下に入ったとたん震度は、見掛震度k’になりk’を使用して土圧係数k’Aを求めることにより、土圧強度は、水面境界部の真上・真下で異なる結果を呈し、水面上部の土重にも見掛震度が影響してしまうので注意しなければならない。このため、ここでは、これらの矛盾を整理するため、空中土重と水中土重の比から換算見掛震度を求める運輸省第二港湾建設局が提案する式を採用した』との記載がありますので、改訂前の考え方では水面境界部の真上・真下で土圧強度が異なる考え方を使用していたが、改訂後の考え方では水面境界部の真上・真下で土圧強度が同じにすると言うことでよろしいのでしょうか。ただし、水面以下の深度が深くなると過小評価となるため、砂防基準では2〜3mごとに計算することを原則とすると記載されているのでしょうか。 |
回答
私は,河川・砂防や港湾関係の仕事に携わった経験がないので具体的なことはわかりませんが,下記のように考えられます。
地下水があり,盛り土の全部または一部が飽和しているときの土圧は,有効重量法で計算するのが一般的です。これは,壁面摩擦角の影響で土圧と水圧の作用方向が異なるためです。
地震時土圧を有効重量法で計算する場合には,水平震度として見掛けの水平震度を用います。地震時の慣性力は,
地震時慣性力(H)=全重量(W)×水平震度(kh)
として表されます。このため,全重量Wの代わりに有効重量W'を用いるのであれば,地震時慣性力が同じになる見掛けの水平震度kh',つまり,次式の関係を満たすkh'を用いなければなりません。
全重量(W)×水平震度(kh) =有効重量(W ')×見掛けの水平震度(kh')
したがって,見掛けの水平震度kh'は次のように表されます。
kh'=(W/W')kh
以上の方法で,地震時土圧を計算した例を下記に示します。
見掛けの水平震度は,地下水以下では深さ方向に増加します。この結果,地震時の土圧分布は完全な直線とはなりません。このため,砂防基準では2〜3m間隔に計算するようにしているのだと思われます。


| 置換え土底面での地盤反力の検討の際に偏心を考慮した有効載荷幅による照査法により算定していますが、置換え土の重量も考慮すべきかどうか教えてください |
回答

置き換え土を考慮した地盤の許容支持力は式(1)で表されます.
支持地盤が粘性土でφ=0であれば,式(1)は式(2)となります.
さらに,置き換え土と軟弱地盤の単位体積重量が同じ(γ3=γ2)と見なすことができれば,式(2)は式(3)となります.
以上のことから置き換え土の重量を無視できるのは,φ=0でγ3=γ2の場合ということになります.

| Q122の最後のところの「地盤支持力の低下」につきましてもう少し説明して下さい。 有限要素法などによる検討が必要となるのでしょうか。 |
回答
地盤の支持力は,地盤のc,φ,γ,基礎幅,根入れ深さ,荷重の傾斜角によって変わります.Q122で説明したように,底面が縦断方向に傾斜していると,底面に作用する荷重の傾斜角が変わるため,支持力も変わるということです.しかし,c,φのばらつきや支持力理論上の便宜的な仮定による支持力の誤差を考えれば,底面の傾斜の影響は微々たるものであり無視してもよいと思います.
地盤が均質と見なせる場合には,支持力公式て゛計算しても有限要素法で計算しても全く同じ結果になります.有限要素法による照査が必要な場面は,地盤の変位量が問題になる場合,土質を一様と見なせなず支持力公式が適用できない場合だと考えられます.有限要素法を利用する場合は,土の構成則,破壊条件,境界条件等を適切に設定して解析しないと間違った結果になるので注意が必要です.まずは,極限平衡法による支持力理論を理解し,適用条件をきちっと把握した上で,有限要素法を活用するのがよいと思います.
| Q&Aコ−ナ−のNo.189の衝突荷重と載荷重の組合せが必要ない理由の回答で(1)ではご指摘の通りと書かれていますが、それは「自重+土圧+載荷重+衝突荷重」という組み合わせで照査すると言うことでしょうか? そうだとすれば回答(2)で載荷重を考慮してない理由を書かれているのは、なぜでしょうか? この質問の回答は「自重+土圧+載荷重+衝突荷重」なのか「自重+土圧+衝突荷重」であるのか |
回答
衝突荷重を道路土工指針のように静的に載荷させて計算するのであれば「自重+土圧+衝突荷重」,衝突荷重を衝撃荷重として応答解析するのであれば「自重+土圧+載荷重+衝突荷重」とすべきということです.
| 山間地の斜面上に道路拡幅のための路側擁壁を計画しています。道路土工-擁壁工指針では「斜面上に擁壁を設置する場合には背面盛土および支持地盤を含む全体としての安定について円弧すべり法などにより検討を行い、必要に応じて対策工を検討するのがよい。」と記述されています。擁壁構築後の斜面全体の安定に対する検討を行いたいのですが、斜面の安定解析に用いる土質定数の設定方法についてご指導をお願い致します。 標準貫入試験によりN値は解っていますがc、φの決定方法がわかりません。現況安全率を1.00もしくは1.05とし逆算法によりc、φを求めた場合、擁壁構築後の計画安全率はいくつで計算すればよいのでしょうか? また、EPS軽量盛土工法の基準書では、斜面全体の計画安全率は1.20以上とするよう記述されています。しかし、逆算法により求めたc、φを用いて計画安全率を1.20として斜面全体の安定解析を行えば、必ず対策工が必要になり現実的でないと思われます。 斜面全体の安定に対する検討方法および土質定数の決定方法等についてご指導をお願い致します。 |
回答
ご質問の内容は,土質力学の中で恐らく最も難しい問題であり,私がこの業界に入ってからもほとんど進歩していない分野でないかと思っています.
解析が困難な理由には
@地山の土質は礫分や砂分を含んでいるので不攪乱資料の採取など土質試験が困難なため,正確にc,φを求めがたい.
A三軸試験を行っても,実際の拘束圧を考慮した試験が難しい.
B斜面崩壊の多くは降雨時に発生することから,間隙水圧の影響が大きいと考えられるが,間隙水圧を考慮した解析が難しい.
C斜面崩壊の解析では一般に土を剛塑性体と仮定しているが,実際の破壊は進行性破壊であるので,すべり面の場所によって発揮されるせん断強度が異なる.
D斜面の土質は均質でなく,強度が場所や方向によって異なっている.
などがあります.
斜面が安定か不安定かを議論する上で大事な点は,いつの時点を念頭におくかだと思います.数百年先であれば現状の地山勾配が安定勾配であろうし,何万年も先には現状の地山勾配でも不安定になるでしょう.数日先であれば,鉛直に近い角度でも安定するでしょう.地山は時間と共に風化が進行するので,それを考えて安定性を論じるのは極めて難しいと思います.
現実的な対応としては,現地の状況や道路の重要性を考えて,擁壁を含む斜面安定解析が必要かどうかを技術者が経験的に判断する以外にないと思います.対策を保険と考えて実施するのと,崩壊した場合には災害復旧に持ち込むのとどちらが得策かを考えるのも実際的対応と考えられます.
斜面安定解析が必要と判断されれば,ご質問の中で記されているような方法で解析する以外にないとおもいます.
Q&Aコーナー
| 擁壁の耐震設計は、一般に擁壁高8mの規模のものに対して行われているが,擁壁高8m以上とした理由をお教え頂きたい.解析・実験・被災例などから規定されているのではないかと思いますが、教えて下さい。 |
回答
擁壁高8mは旧建設省の標準設計図集と大きな関わりがあると思われます.旧建設省が擁壁の標準設計図集を最初に作成したのは昭和42年です.
擁壁の土圧計算には,テルツァギーの半経験的図表が使用されていました.テルツァギー・ペックの著書によれば,「擁壁高が20ft(6m)を超える場合には裏込め土の性質を試験で求め土圧理論に耐えうるように設計する必要があるが,小さい擁壁については図表で土圧を求めて設計するほうが大体経済的になる」と書かれています.標準設計に収録されている逆T型擁壁はH=3〜7m,控え壁式擁壁はH=4〜8mの範囲となっているのは,テルツァギーの著書を目安とした可能性があります.当時の擁壁設計では,土圧計算にテルツァギーの半経験的図表が用いられているため地震時の照査は行われていません.
この標準設計図集は昭和52年に改定されました.改訂版では,地震時を考慮せずテルツァギーの半経験的図表で土圧を求めた擁壁と,試行くさび法で地震時を考慮した擁壁と二種類が収録されています.
耐震設計の考え方について示されたのは,この標準設計がはじめてと思います.当時の標準設計の考え方を,工藤真之助氏が,土木技術Vol.35.6号に書きのように書かれています.
@過去の事例より,地震時の土圧力の増加が直接の原因で損傷を受けた例は少ない.
A過去の施工実積から,8m以下の一般的擁壁については,地震の影響を考慮しなくても良く,設計の簡便化を図ることからテルツァギーの実験土圧を用いる.
Bテルツァギーの土圧図表によって与えられる土圧は,物部・岡部式による設計震度0.14程度の土圧力に相当し,ある程度の地震力が考慮されている.
C8mを超える擁壁については,実測結果が少なく,不明な点が多い.また,構造的にも大規模となり,倒壊や傾斜は大事故につながり,その補修をするにしても多大の費用を要する.
以上の説明から推察されるように,8m以下の擁壁に関しては,過去の実積から地震による被害を受けていないので耐震設計は不要であるが,8mを超える規模の擁壁に関しては経験が少ないので,とりあえず地震時の照査もしておきましょう.ということだと思います.
Q&Aコーナー