Q206 異なる径の鉄筋の重ね継手長の考え方

 異なる径の鉄筋の重ね継手長について、著書【新・擁壁の設計法と計算例】のp187には、「継手する鉄筋の径が異なる場合は大きい方の径」とあり、私もこの意見に賛成するのですが、他の指針又は書籍(例:基本建築基準法関係法令集2002年p301、コンクリート構造物の配筋とそのディテール p33)では、小さい方の鉄筋の×倍と記載されています。これは理論的に正しいのでしょうか?
 私は、鉄筋が大小共(同時)に降伏点に達しても、鉄筋が引抜かれない付着力を確保する長さ分の基本定着長Lを必要とすると考えると、大径を基準とし×倍すべきだと思います。ですが、短い方を基本とする考え方だと、径が小さい方が先に降伏点に達し、大径に相当する応力を伝達できないと思うのですが、先生のご意見を御願い致します。

回答

 拙著に記述した重ね継手長の説明は不適切でした。
 例えば,図−1の片持梁について考えてみます。φ1の鉄筋の許容張力をTa1とすると,この鉄筋が引き抜けないためにはla1=Kφ1の重ね継手長(定着長)が必要になります。φ2の鉄筋に対してはla2=Kφ2の重ね継手長が必要になります。
 図−2のような単純梁であると,φ1の鉄筋の必要定着長はla1=Kφ1,φ2の鉄筋の必要定着長はla21=Kφ2です。この場合は,la1=la2でなければならないので重ね継手長はla1とla2のどちらか大きい方ということになります。
 単純に鉄筋径の大きい方の定着長を採用するという考えは間違っていると思われます。定着させる鉄筋に対して必要定着長を確保するように重ね継手長を決定すべきと言えます。


Q&Aコーナー

Q207 大型ブロック積み擁壁の底面地盤反力算定式の適用条件

 「大型ブロック積擁壁設計・施工マニュアル」のP.24「2.3.5底面および壁面の地盤反力の計算」中の「(2)壁厚が擁壁高の1/10程度で、かつ・・・」と書かれておりますが、壁厚と擁壁高の比が1/10と異なる場合の照査方法はどのように行うのでしょうか。 同頁式(2.11)が適用できないのでしょうか。

回答
 大型ブロック積み擁壁では,下図のように擁壁の底面と壁背面に地盤反力が発生します。地盤反力を決定するには,V,H,Q,ξ,ηの5個の未知量を求める必要があります。ところが,力のつり合い条件式は3個しか立てられないので二次の不靜定問題になりります。このため,マニュアルでは地盤係数法によって地盤反力度を算定する方法を採用しています。マニュアルのp24の2.3.5(1)には,地盤反力度は,地盤係数法によって算定するのを原則とすると書いてあります。
 地盤係数法で計算するのは計算が複雑で,コンピュータが必要になります。このため,制限条件を設けて簡便な方法を示したのが2.3.5(2)の説明です。
 通常のブロック積み擁壁の壁厚は壁高の1/10程度です。また,支持地盤と盛土地盤のN値の比は1〜10の範囲にあると考えられます。さらに,図−1のような壁厚が等厚とすれば,試算の結果ξ≒0.52b,η≒0.25lになることがわかりました。そうすると,未知量はV,H,Qの3個になるので力のつり合い条件から地盤反力を算定することができます。2.3.5(2)に示してある地盤反力度の算定式(2.11)は,このようにξとηを仮定して求めています。
 壁厚と擁壁高の比が1/10程度でない場合,基礎コンクリートも考慮して地盤反力を算定する場合などには式(2.11)は使用できません。その場合は,地盤係数法で計算して下さい。なお,ソフトが必要であればご連絡下さい。


Q208 試行くさび法とクーロン土圧とランキン土圧の関係

 プレガードの安定計算では,土圧をランキン式で求められていますが,道路土工−擁壁工指針に準拠するのであれば,試行くさび法またはクーロン式を用いて土圧を計算すべきでないでしょうか。

回答

 試行くさび法とは,すべり面の角度をいろいろと変化させて,試行錯誤的に正解の主働あるいは受働土圧を算定する数値計算法(図解法)です。試行くさび法と言えば,一般的にはクーロンの土圧理論に基づいた数値計算法を指しますが,道路土工−擁壁工指針では壁面に直接作用する土圧はクーロンの土圧理論に基づいた試行くさび法で,逆T形擁壁やL形擁壁などのかかと版を有する擁壁の仮想背面に作用する土圧はランキン土圧理論に基づいた試行くさび法を適用することにしています。
 
 擁壁工指針では,仮想背面における土圧の傾斜角δを地表面の傾斜角βと同じとしています。これは,ランキンの土圧理論によるものです。このことから,仮想背面に作用する土圧を求める場合の試行くさび法は,ランキンの土圧理論に基づいた試行くさび法と言えます。

 地表面が水平か一様勾配の場合には,試行くさび法を適用せずとも解析解として得られた土圧公式を使って土圧を求めることができます。重力式擁壁の場合の試行くさび法の解析解はクーロンの土圧公式になり,仮想背面の土圧を求める場合の試行くさび法の解析解はランキンの土圧公式になります。

 プレガードは地表面が水平の場合のみを対象としています。したがって,プレガードの仮想背面に作用する土圧は,ランキン式で算出しても,道路土工−擁壁工指針の試行くさび法による計算結果と全く同じになります。
 プレガードのたて壁に作用する土圧計算では,道路土工−擁壁工指針に準拠すれば,壁面摩擦角をδ=2φ/3とすべきなのですが,プレガードの設計では土圧を安全側に(大きめに)算出するためδ=0としています。壁面の傾斜が鉛直(α=0)で,壁面摩擦角がδ=0であれば,クーロン式とランキン式は同じになります。



Q209 擁壁底面の縦断方向勾配の制限

 建設省 道路設計要領 2-28 によると、縦断的に高さが変化する場合、床面の勾配は10%以下にするという、基準が設けられているのですが、他の基準書(擁壁工指針等)ではそのような記述はありません。安定計算上は基準を設けているのでしょうか?また、床面が岩盤の場合でも、その勾配を守る必要があるのでしょうか?宜しく
お願いします。

回答
 擁壁底面に縦断方向の勾配を付けると滑動に対する安全率が減少するため,制限を設けているのだと思われます。計算によって滑動に対する安全性が確保されていることを証明すれば,縦断勾配が急であっても問題ないと思われます。縦断勾配が付いた擁壁の滑動安全率の計算法はQ122で回答していますのでそちらをご覧下さい。

Q210 地面が屈曲している場合の切土部土圧の計算法

 下図のように地山面が屈曲している場合,重力式擁壁に作用する土圧の計算法をお教え下さい。

回答

 主働土圧を試行くさび法(極限平衡法)で算定するには,下記の要領で行うことが設計できます。
 下図で赤の矢印あるいは赤の記号は未知量を,黒の記号と矢印は既知量を表しています。また,ブロックの交点の●は固定する点,○移動させる点を表しています。すべり面角度ω1r,ω1f,ω2f,ω3rを変化させてR3fの最大値を求めれば,それが主働土圧合力PAとなります。
 詳細は,拙著「続・擁壁の設計法と計算例」第1章極限平衡法を見て下さい。


Q211宅地擁壁の支持力の安全率

 「Excelによる擁壁設計」では,支持の安全率として3.0(異常時は2.0)を採用されていますが建築では1.0以上であればよいと思います。その場合,計算結果でFs>=3.0をFs>=1.0に訂正して使用してよろしいでしょうか。

回答

 建築基礎構造設計指針(日本建築学会)と道路土工−擁壁工指針(日本道路協会)では,擁壁の地震時の安定計算に用いる荷重および許容支持力の考え方が異なっています。擁壁工指針の安全率を単純に変えて計算するだけでは,建築基礎構造設計指針に準拠した設計とはなりません。

●地震時における擁壁の設計法

建築基礎構造設計指針 道路土工擁壁工指針 道路橋示方書下部構造編
考慮する荷重 @自重+地震時土圧
A自重+自重に起因する地震時慣性力+常時土圧
 @とAの両方で照査
自重+自重に起因する地震時慣性力+地震時土圧 擁壁工指針と同じ
仮想背面における土圧の計算法 ランキンの土圧理論 ランキンの土圧理論 クーロンの土圧理論
支持力算定式 ・荷重の傾斜による支持力の低減はマイヤーホフの近似法による
・寸法効果による支持力の低減は考えない
土質,N値等から経験的に決定 ・荷重の傾斜を考慮した支持力係数は,駒田らの方法によって算定
・寸法効果による支持力の低減を考慮
支持力の安全率 使用限界状態(常時)1.5
損傷限界状態(中規模地震時)1.5
終局限界状態(大規模地震時)1.0
常時  3.0
地震時 2.0
常時  3.0
地震時 2.0


Q212 主働土圧の鉛直成分は無視するのか

 もたれ式擁壁に作用する土圧力(地震時)を次式により水平及び鉛直成分に分解しますが,かっこ内が負の値となった場合,鉛直成分は負の値となり,下から上方向に作用することとなります。このような場合,鉛直力を集計する時は,躯体自重から負の値となった鉛直成分を差し引いても問題ないのでしょうか?
水平成分 P×cos(δ+α)
鉛直成分 P×sin(δ+α)

 ここで,δ=11°(1/2×φ:土とコン),α=−16.699°(0.3勾配)

回答

 壁面における土圧の作用方向は,擁壁と裏込め土の相対変位によって決まりますが,主働土圧の計算では一般に擁壁は前方へ水平に変位するものとし,壁面摩擦角は常時δ=2φ/3,地震時δ=φ/2としています。このδの値は経験的なものです。そうしますと,土圧合力の分力は,
 土圧合力の水平方向分力 PH=P×cos(δ+α)
 土圧合力の鉛直方向分力 PV=P×sin(δ+α)
と表されます。もたれ式擁壁の場合,壁面の傾斜角αが負の値になるので,δ+α<0となればPV<0になります。


Q213 支持力算定における形状係数βについて

 大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアルについて質問させて頂きます。
P.34の支持地盤の極限支持力に関してですが、(解2.37)にて基礎の形状関数α・βを求めておりますが、(解2.36)式においてはαのみでβを用いておりません。
Nγの項にβを乗じなくても良いのでしょうか?

回答

 p34の式(解2.3.6),p75の式(1)ともβが欠落しています。
 正しくは
 qd=α・κ・c・Nc+κ・q・Nq+1/2γ2・β・B'・Nγ
 です。訂正をお願いします。
 なお,ブロック積み擁壁の場合には,一般に,基礎幅Bに対して延長Lが長いので帯状基礎と考えることができ,α=1.0,β=1.0と見なすことができます。


Q214 かかと版の断面変化点の曲げモーメント計算法


 L型擁壁(道路用)のかかと部付け根の断面検討を行う際、たて壁付け根のモ-メントをかかと部付け根のモ-メントが上回る場合は、つり合いの関係上、たて壁のモ-メントを採用することになっています。
 この時、下図に示したように、かかと部先端の断面検討を行う場合は、どのように算出したモ-メントを用いれば良いのでしょうか。
 宅地の場合は、たて壁付け根のモ-メントをかかと部全長に作用する分布荷重に換算して、かかと部の各検討断面位置のモ-メントを算出し、断面照査を行うことができます。
 通常は、一般的な道路使用の条件下では、かかと部先端の検討は行わないと思いますが、宅地の時と同じ様な考え方でいいでしょうか。それとも、地盤反力から求めたモ-メントを用いるべきでしょうか。
 今回、控え壁タイプの擁壁を検討するため、かかと部先端位置での断面照査を行って置きたいと思っています。かかと部先端位置での断面照査に用いる作用力の算出方法、かかと部先端位置の断面照査の必要の有無について御教授頂けるよう、宜しくお願い致します。

回答

 かかと版の断面が不連続に変化している場合には,ご質問のように断面の不連続部で応力度の照査が必要です。
 曲げモーメントの算定法としては,ご質問にあるように下記の2つが考えられます。
@付け根の曲げモーメントが得られる等分布荷重に換算し,等価等分布荷重を用いて断面変化点の曲げモーメントを算出
A自重,地盤反力から断面変化点の曲げモーメントを算出
 かかと版の曲げモーメントを算出する際に,かかと版の上面に作用する荷重の計算において壁面摩擦力を無視している,かかと版底面の摩擦力(水平方向地盤反力度)を無視しているなどのため,かかと版付け根の曲げモーメントがたて壁基部の曲げモーメントより大きくてなるという不合理な結果になります。このため,擁壁工指針では,かかと版付け根の設計用曲げモーメントとして,たて壁基部の曲げモーメント以下という制限を設けています。
 本来はAの方法で曲げモーメントを求めるべきでしょうか,上記の理由でAの方法を採用すると付け根の曲げモーメントがたて壁基部の曲げモーメントを超えるという不合理を生じます。したがって,一般には@の方法で計算していると思います。


Q215 安全率を大きくするとアンカー抑止力が小さくなるか?

「土木構造物 設計・施工の盲点」のp.73 3.2 いろいろあるアンカー抑止工の安全率で、切土のり面対策として
(3-12)式
           Σ(c・l+Wcosαtanφ)+Psinθtanφ
Fs=───────────────────────── (3-12)式
                  ΣWsinα−Pcosθ

地すべり対策として(3-13)式
       Σ(c・l+Wcosαtanφ)+P(cosθ+sinθtanφ)
Fs=────────────────────────── (3-13)式
                   ΣWsinα

が示されています。これを各々展開・変形すると、
(3-12)式は
       F・狽vsinα−Σc・l−ΣWcosαtanφ)
P=────────────────────── (3-12’) 式
               sinθtanφ+Fcosθ

(3-13)式は
      F・狽vsinα−Σc・l−ΣWcosαtanφ)
P=────────────────────── (3-13’) 式
           sinθtanφ+cosθ
となります。
道路土工指針(1999)のp.266とp.376の式と比較すると、(3-12’)は地すべり、(3-13’)は切土のり面対策などで使用される式と同じです。御著書の印刷ミスで逆に なっているのでしょうか。
  また (3-12’)の分母に効いてくるFは、道路土工指針記載の計画安全率であるとすると、安全率を上げるほどアンカー抑止力が小さくなるという矛盾した結果になるのですが、ご教示いただければ幸いです。

回答

 拙著「土木構造物 設計・施工の盲点」では,式(3-12)を切土のり面対策,式(3-13)を地すべり対策で使用されているとしていますが,ご指摘のようにこれは誤りです。正しくは,式(3-12)は地すべり対策,式(3-13)は切土のり面対策で使用されているとすべきです。
 式(3-12')と式(3-13')でFとθを変化させてPを計算した結果を下記に示します。いずれの式を用いてもFが大きくなればPも増加します。ご質問のような矛盾した結果は生じません。


Q216 杭基礎を用いた大型ブロック積み擁壁の安定計算

 大型ブロックに杭基礎(矢板基礎)を用いようと考えています。
 プレキャストL型擁壁と同じ要領で杭と一体化したベースコンクリートを設け,その上に大型ブロックを置こうと考えています。そうした場合、大型ブロックは転倒・滑動を、基礎は上の水平力・鉛直力を考慮して計算を行えばいいのでしょうか?もしくはモーメントまで基礎は考慮すべきなのでしょうか?
 また、大型ブロックと基礎の一体化を行って大型ブロックの滑動の照査を省略することは可能なのでしょうか?

回答

@大型ブロック積み擁壁の安定計算
 ベースコンクリートの上面で,大型ブロック積擁壁の転倒,滑動に対する照査が必要です。これは,直接基礎として計算できます。支持力に対する照査は不要です。
 大型ブロックとベースコンクリートの接合面にコンクリートの突起等のすべり止めを設けることができれば,滑動の照査は不要になります。この場合は,突起のせん断応力に対する照査が必要です。

A杭基礎の設計
 ベースコンクリートの上部に鉛直力V(鉛直方向地盤反力),水平力H(水平方向地盤反力),モーメントM(鉛直地盤反力の偏心によるモーメント)が作用するものとして計算します。杭体の曲げモーメント,杭頭部の水平変位の計算は,杭頭部に水平力とモーメントを受ける弾性床上の梁(林−チャン式など)として計算します。杭体の応力度は,曲げモーメントと軸力(鉛直力)が作用するものとして計算します。

Bベースコンクリートの応力照査
 大型ブロック積み擁壁の安定計算で求められた鉛直方向地盤反力を荷重として載荷させ,杭で支持された片持ち梁として曲げモーメントを求め応力照査をする必要があります。



Q217 落石防護擁壁の計算法

 右城先生が考案された落石防護擁壁の計算手法は、「落石対策便覧 平成12年6月改訂版」のP169に記載されている”(2)擁壁基礎地盤の塑性変形を考慮した可能吸収エネルギーの算定”と同じ手法と解釈してよろしいでしょうか。

回答

 小生の設計法と落石対策便覧の設計法は考え方が異なります。
 落石対策便覧の方法は,落石の運動エネルギーを地盤の塑性変形で吸収するものとしています。小生の方法は,落石防護擁壁が設置される個所は地盤が良質であり地盤の変形はわずかであると考えられるため,地盤の変形によるエネルギー吸収は無視しています。

 落石の衝突によって生じる衝撃力による回転モーメントが自重による抵抗モーメントより大きいと,擁壁はある角速度で回転運動を始めます。擁壁が回転すれば,重心が上昇するため,擁壁の回転エネルギーは位置エネルギーに変換されます。したがって,回転エネルギーから擁壁の回転角が求められます。擁壁重心が擁壁のつま先より前に出なければ擁壁は転倒せず,元の姿勢に戻ります。小生の設計法は,以上の考え方に基づいており,擁壁の回転角を求め,回転角が許容値以下にあるかで安定性を評価する方法です。詳細はQ181を見て下さい。

 落石対策便覧の方法で設計すると,@擁壁高が小さい場合擁壁の規模が大きくなりすぎること,A基礎地盤が硬い(バネ定数が大きい)ほど基礎の規模が大きくなること,B擁壁底面と地盤を弾性バネで固定しているため擁壁の回転角が微小な場合しか適用できない等の問題があります。また,落石対策便覧では反発係数を1.0,転倒に抵抗する有効長は壁高の4倍以下といった仮定を設けていますが,これらの妥当性は明らかになっていません。

 小生の設計理論を検証する目的で,H13年度とH14年度の2カ年かけて,国土交通省で重錘衝突実験を行いました。擁壁の回転角が小生の理論で精度良く求められることがわかりました。現在,落石対策便覧も性能照査型に移行させるべく,改定の検討が行われています。時期は定かでありませんが,改定の折りには小生の設計理論に変わるものと思われます。