Q183 置き換え基礎における滑動の照査法


 『 続・擁壁の設計法と計算例 』 の 7.8 逆T型擁壁の計算例(P280)について
  原地盤が粘性土という条件で、置き換え土(礫質土)による地盤の支持力の計算をされていますがその中で、滑動に対する検討は、摩擦係数 μ=0.6 で、砂質土として計算はされています。
 道路土工−擁壁工指針の中では、支持地盤の種類が砂質土では μ=0.6 、粘性土では μ=0.5 となっていますが置換厚が、どれくらいの厚さがあれば、砂質土として摩擦係数 μ=0.6 を使用できるのでしょうか?
 たとえば、礫質土の厚さが h=0.30 でも μ=0.6 を使用しても、滑動に対する検討は問題はないのでしょうか?
 

回答

 置き換え基礎の厚さに関係なく,滑動に対する照査は,擁壁底面と置き換え基礎の下面の2ケース行うのが良いでしょう。置き換え基礎下面での照査法としては,下図に示すような方法が考えられます。滑動抵抗力として,底面の抵抗力と根入れ部の受働抵抗を考えて照査する方法です。cは粘性土地盤の粘着力(一軸圧縮強度の1/2),αは受働土圧の低減係数で,道路土工指針では1/2としています。


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Q184 プレキャストL型擁壁に杭基礎を設ける方法

 擁壁に杭基礎を施工する場合,現場打ちコンクリート擁壁では一般に杭頭を擁壁の底版に埋め込んで固定する方法が採用されています。しかしながら,プレキャストコンクリート擁壁では杭頭を底版に埋め込むことがて゜きません。この対策として,杭頭をベースコンクリートで固定し,ベースコンクリート上に擁壁を設置する方法が考えられます。そこで,発注官庁に相談したところ,ベースコンクリートを施工する方法は過去の実積がなく一般的な方法とは言えないので駄目だと言われました。どのような問題があるのでしょうか。


回答

 1995年の兵庫県南部地震では,多くの基礎杭が被害を受けました。被害の大部分は杭頭部に集中していました。杭の耐震性能を向上させる方法として,@杭頭部を補強する,A杭頭部に耐震機構を導入するなどの方法が現在研究されています。
 下図に示すベースコンクリートを施工する方法は,耐震機構を導入する方法の一つと考えられます。基礎地盤から大きな地震波が入ってきたとき,方法Bのような構造にしておくと,地震加速度がある値を超えた場合,擁壁はベースコンクリート上で回転運動あるいはすべり運動ができますので,それによって地震エネルギーが吸収されます。このため,杭頭部に過大な応力が発生することを制御できると考えられます。
 方法Aと方法Bとでは,方法Bの方がはるかに耐震性能に優れていると言えます。


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Q185 車止め用コンクリート柱に作用する衝撃力の算定方法

先日車止めの性能を役所より依頼されました。構造計算のできる人を探したところインターネットより先生のホームページを拝見し失礼を承知して質問をなげかけました。
転落防止柵の強度より車の衝撃荷重およびスピードを算出することが可能でしょうか?本来とは逆になりますが。基礎部は無視した車止め本体の破壊です。

回答

 質量mの車両が速度v0で剛壁に衝突する場合の最大衝撃力Fmaxは以下のように導くことができます。
 過去の自動車衝突実験(江守一郎著:自動車事故工学)によると,k/m=41g/mとされています。したがって,ω=20rad/s,衝突の持続時間はπ/2=0.08secとなります。
 ただし,被衝撃体がコンクリートのポールの場合にはk/m=24.6g/mになるという実験データがあります。車両の変形が大きくなりますが衝撃力には関係ありません。
 m=2tの車両が速度v0=20km/h=5.6m/sで衝突するものとすれば,最大衝撃力はFmax=2×5.6=11.2kN,車止め下端の最大曲げモーメントはMmax=6.16kN-mになります。
 ご質問のコンクリートの曲げ強度1446kgの意味が理解できませんので,破壊限界速度に対しては回答できません。



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Q186 土圧作用面を鉛直仮想背面とできる後フーチング長さ

 道路橋示方書では逆T式橋台は一般に後フーチングの突出が長いため仮想背面を設定する(W下部構造編)と記述されていますが,突出が長いとはどこまでを指すのか常々考えています。
 土木技術再入門の片持ばり式擁壁の土圧計算法にも記載されていたように,仮想背面を設定する基準は無いのでしょうか?
 右城様の著書を何冊か読んではいますが,どの本に記載されているか等教えてください。
 また,「橋台の設計で仮想背面を考えて土圧を計算したため会計検査で問題になった例もある。」とは,かかと版の長さがどれぐらいだったのでしょうか?

回答

(1)道路橋示方書W下部構造偏
 道路橋示方書W下部構造偏では,土圧作用面を仮想背面とできる後フーチングの長さに関して下記のように解説されています。

昭和55年版,平成2年版 平成8年版,平成14年版
重力式橋台のように後フーチング突出長が20〜30cm以下のにうな短い場合の土圧作用面は,躯体コンクリート背面に直接作用させることとした。
逆T式や控え壁式橋台の場合は,一般にフーチング突出長が長いため,安定計算では後フーチング上の載荷土を躯体の一部とみなし,仮想背面を土圧の作用面とする。
重力式橋台のように後フーチング突出長が短い場合の土圧は,躯体背面に直接作用させる。
逆T式橋台の土圧の作用面は,一般にフーチングの突出長が長いため,安定計算では後フーチングの上載土砂を躯体の一部とみなし,de面を仮想背面として土圧を作用させる。

 平成2年度版までは後フーチングの長さが20〜30cm以下であれば短い,それ以上であれば長いと判断していたようですが,平成8年度版からは具体的な数値が削除されました。

(2)会計検査院の指摘 

 土圧を壁面に直接作用させるべきところ,誤って仮想背面に土圧を作用させたという事例は,平成2年度と平成3年度の会計検査報告にあります。後フーチングの長さがいくらであったのか具体的な数値不明ですが,30cm以下であったと思われます。


(3)後フーチングが長いと見なせる長さ

 橋台が前方へ変位すると,下図のようなすべり面S1,S2が発生します。後フーチングが短いと(b)図のようにS2のすべり面がたて壁に当たって折れ曲がります。すべり面が(a)図のようになる場合は,後フーチングが長いと見なせ,ランキン式やクーロン式で仮想背面に作用する土圧を算定することができます。ただし,この場合,土圧は水平に作用します。従って,クーロン式を適用するときの壁面摩擦角はδ=0になります。道路橋示方書で,仮想背面での壁面摩擦角をδ=φとしていますが,これば明らかに誤りです。
S2すべり面がたて壁にあたる場合は,改良試行くさび法を使用して,土圧及び壁面摩擦角を算定する必要があります。

(4)仮想背面の考え方

 仮想背面をすべり面と思っている人が多い(道路橋示方書も同じ)のですが,これは誤りです。安定計算の便宜上設定しているにすぎません。仮想背面は,道路橋示方書のように鉛直としても,建築基礎構造設計指針のように斜めに設定しても,仮想背面の土圧と傾斜角,作用高さを正確に求めて計算すれば,全く同じ結果になります。
詳細はQ174を参照して下さい。


(5)仮想背面と土圧の考え方に関する著書

 下記の著書に記述してあります。

@土木構造物設計・施工の盲点(理工図書)p52-64
A擁壁Q&A撰集(理工図書)p62-87
B続・擁壁の設計法と計算例(理工図書)p73-115
CExcelによる擁壁設計(理工図書)p48-75

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Q187 水中における見かけの震度

「改訂新版 建設省河川砂防技術基準(案)同解説 設計編[T]P.79」にクーロン公式における見かけの震度は記載されていますが、擁壁等を試行くさび式を用いて安定計算した場合における、水中以下の見かけの震度の考えを教えて下さい。

回答

(1)水中の見かけの震度の基本的な考え方
 地震時の慣性力は,H=M・G・kH=W・kHで表されます。
 水中の土塊の場合,
 @全重量Wと水圧Uが作用している
 A見かけの重量W'が作用している
という2つの考え方ができます。いずれにしても,慣性力は全重量に水平震度を乗じたものです。
慣性力Hが見かけの重量W'に見かけの震度k'Hを乗じたものとして表すものとすれば,見かけの震度は式(4)となります。
 

(2)砂防技術基準の式
 砂防技術基準の式は,土塊の一部h2だけが浸水し,土塊の上部にQという載荷重が作用する場合の見かけの震度を算定するものです。
 飽和土単位体積重量をγt,水の単位体積重量をγw,水中の見かけの単位体積重量をγ'とすると,見かけの震度は式(5)〜式(8)のように誘導できます。

(3)試行くさび法で土圧を算定する方法

 主働すべり面が水平面となす角度をω,大気中の土塊の面積をA1,水中の土塊の面積をA2とすると,主働土圧PAは水平震度kHを用いた式(9),見かけの水平震度k'Hを用いた式(12)のいずれでも計算できます。ただし,壁面の傾斜角をα,壁面摩擦角をδとしています。

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Q188 U型擁壁の底版上の荷重の取り扱い方

道路土工指針には「底版の設計で舗装も含めた底版自重や中詰め土を考慮する」と記載されています。しかし,底版自重を含まないで計算した方が底版上側の断面力は大きくなると思うのですがどうなんでしょうか?
また、断面力の算出のとき底版上の活荷重(車、歩行者)は考慮するのでしょうか?安定計算時には考慮していいと思うのですが...。
教えてください。よろしくお願い致します。

回答

 設計の基本的な考え方を下記に示します。
 @死荷重は常に作用する荷重であるので,考慮するのが安全側であろうと,危険側であろうと載荷させます。
 A活荷重は,常に作用する荷重ではありません。従って,部材に対して作用させた方が危険となる場合には作用させますが,作用させない方が危険になる場合には載荷しません。安定計算に対しても同様です。活荷重を載荷させた方が支持力に対しては危険であり,滑動に対しては安全になるようなケースもあります。この場合には,活荷重載荷時と載荷させない場合の2ケース検討する必要があります。


Q189 衝突荷重と載荷重の組合せが必要でない理由

 ガードレール基礎(プレガード)の設計に対し,衝突時の照査は「自重+土圧+載荷重+衝突荷重」の組合せで行うべきという指摘が某コンサルタント会社よりありました。道路土工−擁壁工指針(p40)では,「自重+土圧+衝突荷重」の組合せで照査することになっていますが,某コンサルタント会社は,「衝突時には自動車が擁壁直上にいるので,これが載荷重として含まれていないのはおかしい」という意見です。私も擁壁工指針に対してコンサルタントと同様の疑問を持っています。
 衝突時の荷重の組合せを「自重+土圧+衝突荷重」としている理由をお教え下さい。

回答
(1)荷重の組合せについて
 擁壁工指針に示されている荷重の組合せの意図は分かりませんが,ご指摘の通りと思います。

(2)プレガードの設計では載荷重を考慮していない理由
 自動車衝突荷重は,図−1に示すような衝撃力(作用時間が非常に短い)であるため,ガードレール基礎の安定性は衝突荷重の作用時間を考慮した解析(動的応答解析)で照査すべきと考えています。衝突荷重を静的荷重と見なして設計すると実際とはかけ離れた過大設計になるためです。
 土木建築構造物の耐震設計では動的応答解析が一般的になりつつあります。しかし,擁壁などの小構造物では,動的応答解析は一般的でありません。このためプレガードに動的応答解析を用いた場合,ユーザーの理解が得られないと思われます。ユーザーや会計検査官に対する説明を容易にするため,過大設計になことを承知の上,擁壁工指針に準拠した静的設計法を採用しています。擁壁工指針に示されている荷重の組合せ以外に載荷重まで考慮すると,更に不経済な設計になるので,載荷重は考慮しないことにしました。

        図−1 プレガードに作用する荷重

(3)静的設計と動的設計の違い
 図−2のように延長10mで単位重量がW=7.81kN/mのB種用ガードレール基礎に自動車が衝突した場合を想定し,滑動に対する安定性を考えて見ます。ただし,底面の摩擦係数は0.6です。

          図−2 計算条件

@衝突荷重を静的荷重と見なした場合
 載荷重を無視した場合の滑動安全率 
   Fs=Wμ/(P+PA)=7.81×0.6/(3.0+0.62)=1.29>1.2 safe
  載荷重を考慮した場合の滑動安全率   out
  Fs=Wμ/(P+PA)=7.81×0.6/(3.0+1.93)=0.95<1.2 out
 載荷重q=10kN/m2を考慮すると,滑動の安全率は1.0を下回りすべり運動をすることになります。
A衝突荷重を衝撃荷重と見なした場合
 自動車が壁やポールに衝突したときの衝撃作用時間は,0.08秒(江守一郎著:自動車事故工学)とされています。ガードレールに衝突した場合も同程度と考えられますので,ここでは衝撃力の作用時間をΔt=0.08秒として計算します。衝撃力波形は,実際は図−1のようになるのですが,ここでは長方形波形と見なします。
 載荷重q=10kN/m2を土圧に考慮した場合の滑動安全率は0.95<1.0であるため,基礎はすべり運動をすることになるので,どれだけ前方へ滑るのかを計算してみます。
すべり量xは次式で求めることができます。

                   図−3 すべり運動

 すべり量はわずか1mmですので全く問題ないと判断できます。静的荷重の場合ですと,荷重の作用時間が無限であるため,滑動の安全率が1未満になれば速度を加速させながら運動することになります。しかし,衝撃力の場合は,作用時間が限定されるため運動しても停止します。問題は,どれだけ滑るかということになります。

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Q190 任意断面の断面2次モーメントの計算法 

任意断面の断面二次モーメントを計算する必要があり、インターネットで検索したところ、右城さんのホームページに行き当たり、「任意図形の断面諸元」をダウンロードさせていただきました。
 試しに使ってみたところ、断面二次モーメントの計算が合いませんでした。具体的には、12×12の断面を入力したところ、1728.0となるべきところが、6912.0となっています。他にも試してみましたが、やはり合いませんでした。
 計算の理屈も理解していないため、自分で修正しようにもできずにいます。お忙しいところ申し訳ありませんが、修正方法など、ご教授いただけませんでしょうか?

回答

 ソフトの入力に際しては,どの軸に関する断面2次モーメントを算出しているのかをハッキリさせる必要があります。
貴方の入力方法では,長方形の下端に関する断面2次モーメントが計算されています。

 入力画面のコピーを下記に示しますので入力の参考にして下さい。


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Q191 土圧算定における壁面摩擦角

 「続・擁壁の設計法と計算例」では安全側ということでU型擁壁の設計で壁面摩擦角をδ=0とされていますが、それは正しい計算なのでしょうか。
土工指針では片持ち梁式擁壁の竪壁に準じて行うとあり、壁面摩擦角は考慮するものの水平分力のみににより計算するのだと思うのですがどうでしょうか。
 またU型擁壁と同様に大型のU型水路も同様の計算でいいのでしょうか。これは右城先生のやり方で計算していましたが、社内で指摘されたため質問するものです。

回答

 構造物の設計ではいろいろと便宜的な仮定を行って計算しています。例えば,土圧計算の場合ですと,@すべり面は直線とする。A土圧作用面がコンクリートの場合の壁面摩擦角はδ=2/3φとする。B土圧分布は三角形とする,などがあります。壁面摩擦を考えるのであれば,すべり面を直線と仮定することや土圧を三角形分布に仮定することは理論的に不合理です。しかし,理論に忠実に計算すると大変ですし,厳密な解析を行ったとしても結果はたいして変わらないことが分かっています。だから,理論的には不合理であっても認められるのです。むしろ,たいした構造物でもないのに手間暇かけて厳密な解析をしたら頭がおかしいのではないかと疑われます。
 U型擁壁の土圧計算でも同様です。δ=0とすれば,ランキン式が適用できるので土圧計算が著しく簡単になります。しかも,土圧は壁面摩擦角を考慮した場合に比べて大きめに算出されるため安全側です。安全側といっても,それによって部材断面が大きくなり不経済な設計にならなければ全く問題ないはずです。もしも,U型擁壁が大規模で,δ=0と仮定することによって著しく不経済になるのであれば,当然実際に近いδを用いて土圧を算定すべきです。
 指針類に書かれている内容を設計の参考にするのは良いのですが,絶対的なものと考えるのは間違いです。海外では日本のマニュアルは全く役に立ちません。指針類を丸暗記するのではなく,書かれている背景や理論をきちんと理解して使用することが技術者にとって大切です。マニュアルを暗記して使うだけなら,素人でも簡単にできます。

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Q192 ストンガードの照査に用いる落石エネルギーの算定法

 ストンガードの照査に用いる落石のエネルギーは、落下高さが非常に高い場合、ある上限の高さ(30m〜40mを上限とする)の落下エネルギーを使用するのかどうか、それとも高さによる制限はないのか一般的な考え方を教えて下さい。

回答

 落石対策便覧では,落石の速度は等価摩擦係数μを用いた式(1)で算定するものとしています。落石の運動エネルギーは,線速度エネルギーに回転エネルギーの影響を加味した式(2)で推定するものとしています。Hは落石の落下高さ,θは平均斜面傾斜角,mは落石の質量です。この式は,落石が一様勾配の斜面をすべり運動するものと見なして求められるものです。

等価摩擦係数は,0.05〜0.35の範囲で用いるものとしています。
 式(1)で落石の速度を推定すると,落下高さに伴って速度が速くなり,長大斜面では非現実的な速度,エネルギーが与えられます。
 落石対策便覧p11に,「既往の実験結果によれば,斜面が長大となって落下高さが40mを越えると,落石速度は一定値(終端速度)に達する傾向があることが分かっている」と書かれていますが,この文章は正しくは「昭和48年に日本道路公団が薗原ダムサイトで行った落石実験では,落下高さが40mを越えると,落石速度は一定値(V=26m/s)になる傾向が見られた」と表現すべきと思います。過去に十数カ所で落石実験が行われていますが,落下高さ40m以上で落石の速度が一定値に収束する傾向が見られているのは,薗原ダムの実験だけですので,これを落石の一般的な運動特性と解釈するのは問題があるためです。

 斜面を落下する落石の速度は,
   運動開始→加速運動→減速運動→停止
となるはずです。終端速度が一定値になるというのは誤りで,終端速度は必ず0になります。
 また,等価摩擦係数μも運動開始から停止するまでの間において,0<μ<tanθの範囲で変化するはずです。
 図−1は,斜面上の落石の痕跡を基にから求めた等価摩擦係数を示しています。落石実験から求められた等価摩擦係数は0.1〜0.4の範囲にあります。これに対して痕跡から求めると(0.6〜1.0)tanθとなっています。等価摩擦係数は運動開始点から落下高さ10mまでの区間で等価摩擦係数の最小値が出現します。落石実験で求められている等価摩擦係数は運動初期の値です。これに対して,痕跡から求めた等価摩擦係数は斜面下端の道路際,あるいは落石発生源から数十m下方の地点の値です。落石の速度や等価摩擦係数は,斜面のどの位置で測定するかによって全く異なります。


        図−1斜面勾配と等価摩擦係数の関係


       図−2斜面勾配と飛行速度の関係

 図−2は落石が跳躍運動した箇所で,飛び出し速度と着地速度を調べた結果です。着地速度は10〜20m/sの範囲にありますが,飛び出し速度は10m/s以下になっています。図−3は初速度6mで飛び出した場合の着地速度を計算した結果です。当然のことですが,斜面傾斜角が急なほど飛行時間が長くなるため,着地速度は大きくなります。しかし,斜面に衝突すると,地盤が破壊されエネルギーが吸収されます。衝突速度が速いほど吸収エネルギーが大きくなり,跳ね返り速度はある値以上にはなりません。直径1m程度以下の落石の跳躍量は,経験的に2m以下になるということが分かっていますが,これは跳ね返り速度がある値以上にならないためです。
 
 芸予地震では,多くの地点で1t〜3tの落石がストンガードを直撃しました。ストンガードは損傷しましたが,十分機能を発揮していました。式(2)で落石の運動エネルギーを推定すると,200〜400kJとなります。ストンガードの可能吸収エネルギーは30〜50kJですので,式(2)ではエネルギーを過大に評価することは明らかです。
 落石が斜面下端まで到達する過程で,位置エネルギーの多くが地盤に吸収された結果と考えられます。

 以上のことより,落石の速度やエネルギーを等価摩擦係数を用いて推定するのは無理と思われます。最近は,数値シュミレーションで速度を予測する方法が開発されていますが,斜面にあった信頼できる入力パラメータを特定できるまでには至っていません。
 過去に大きな規模の落石があった箇所や,道路際に崖がある箇所,斜面崩壊が予想される箇所では,ストンガードは適さないと言えますが,それ以外の箇所ではストンガードを採用しても問題ないと考えられます。落石のエネルギーを精度良く推定できない現状では,過去の経験に基づいて設計する以外にないと思います。

 ちなみに,国土交通省では,落石の運動エネルギー予測法に対する前述の問題点を踏まえ,合理的かつ現実的な予測法を開発するため,H15年度より研究を開始する計画になっているようです。

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Q193 橋梁下部構造設計における水位の考え方 

 橋梁下部構造の設計では,安全側を考えて一般的に下記の組合せで照査を行っています。
  常  時 浮力無視
        浮力考慮(HWL)
  地震時 浮力無視
        浮力考慮(MWL)
 安全側を考えるのであれば,浮力無視のケースにおいても極限支持力は地下水位面がフーチング下面と一致していると見なして計算すべきと思われます。
 水位の考え方についてお教え下さい。

回答

(1)支持力に対して危険となる水位
 説明を簡単にするため,
 @フーチングの厚さと根入れ地盤の深さが同じDfである。
 Aフーチング上面にVの鉛直荷重が作用する。
 B単位体積重量は,コンクリートがγc,支持地盤がγ1,根入れ地盤がγ2,水がγwとする。
 C地下水面はフーチング下面よりhの高さである。
そうすれば,支持力に対する安全率は式(1)で表せます。
 式(1)から明らかなように,安全率はhが大きくなるほど小さくなります。したがって,支持力に対して最も危険となる水位は,根入れ地盤の表面ということなになります。
 


(2)設計に用いる水位について
 常時はHWL,地震時はMWLの水位を考えるのが必ずしも一般的とは思えません。
 小河川のHWLは1/5〜1/10年の確率雨量で,大河川では1/100〜1/150年確率雨量で設定しています。再現期間が1/10年程度であれば常時と見なせますが,1/100〜1/150年場合を常時とは見なせないと思います。

(3)浮力を考慮する場合の安全率について
 橋梁下部構造に作用する荷重には,自重,土圧,地震時慣性力などがあり,これらはいずれもあるばらつきを有しています。しかし,浮力はばらつきを有していません。したがって,土圧や地震時慣性力と同列に取り扱うのは不平等です。今後は,荷重の信頼度に応じて荷重に係数を乗じる方法(荷重係数法)に移行すべきと思います。

(4)浮力無視の照査の必要性
 浮力を無視するという発想は,地下水の場合には浮力が100%作用するかどうかよく分からないので安全側を考えて,浮力を無視したケースに対しても照査しておこう,というものだと思われます。
 支持地盤が砂や砂礫の場合には100%浮力が期待できるため,浮力無視のケースは照査する必要がないと思います。
 粘性土や岩盤の場合は,透水係数の問題であって,ある程度の時間が経過すると浮力は100%発生するという意見もありますが,良く分かりません。
 下図に示すように支持層が岩盤の場合には,浮力が作用しないことが想定されるため,浮力無視の照査は必要でしょう。しかし,フーチング底面地盤が粘性土の場合には,砕石基礎を用いますので,浮力は100%作用すると考えられます。したがって,浮力無視の照査は必要ないと思われます。

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Q194 二段積み擁壁の下部擁壁に作用する土圧計算法

 貴著では,二段積み擁壁で下段擁壁に作用する土圧を計算する際に,上段擁壁からの水平地盤反力Qhが考慮されていますが,これは無視すべきではないでしょうか。
 設計手順として、初めに上段の安定を照査し、その結果を下段擁壁に反映させることになりますが、その際、水平力に対してはQv・μが発揮されこれで抵抗することになります。
 Qv・μはマイナス方向に作用する訳ではないのでQhと相殺されると考えれば、下段にはQvのみを考慮すればよいのではないでしょうか ?

回答

(1)まずは剛体力学の基本から考えて見ましょう

 自重のない剛体ブロック@とブロックAが積み重なっており,ブロック@に鉛直力Vと水平力Hの荷重が作用している場合について考えて見ましょう。
 ブロック@に作用する外力は,V,Hと底面の反力Qv1,Qv2です。反力は力のつり合い条件からQv1=V,Qh1=Hとなります。
 次は,ブロックAに注目しましょう。ブロックAに作用する荷重は,Qv1,Qh1です。底面からの反力をQv2,Qh2とすると,力のつり合い条件からQv2=Qv1,Qh2=Qh1となります。
 ブロック全体に注目すると,荷重はV,Hです。底面の反力はQv2,Qh2です。これらの外力はつり合っているので,Qv2=V,Qh2=Hとなります。この場合,ブロック@とブロックAに作用する力Qv1,Qh1は内力と言います。
 同じ力でも,何に注目して眺めるかによって外力となったり内力となったりします。
 以上の説明は,ブロック底面が粗で滑らないということを前提にしています。ブロック底面の摩擦係数をμとすると,Qh1<μQv1,Qh2<μQv2の条件が満足されているという前提です。
 ブロック@に左右する荷重VとHは,ブロックAの底面に伝達されることが理解されたでしょうか。



(2)二段積み擁壁に作用する土圧も同じ

 二段積み擁壁に作用する土圧も同じ,ブロックを積み重ねた問題と同様に考えることができます。

 上段擁壁の背後の土くさびに作用する力は,下図(a)のようになります。
 上段擁壁に作用する外力は,下図(b)となります。
 下段擁壁の背後の土くさびに作用する外力は,下図(c)となります。これは,下図(d)のように考えても全く同じことになります。
  



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Q195 もたれ式擁壁の壁面土圧の考え方                    

 もたれの大きい擁壁とは「合力の作用位置が底面の核の後方に外れる場合」とありますが、核=ミドルサードと考えてよいのでしょうか ? 森林土木構造物標準設計では貴著から引用してそのように定義しています。
 しかし、壁体の重心位置が底面内にあれば、背面土に支持されないでも自立するといえるわけで背面土圧PEを考慮するのは、重心が底面を外れた場合からと考えてはいけないのでしょうか ?
 また、極端な例かもしれませんが簡便法ではθ=45゜でも計算は成り立ちますが違和感があります。等厚断面などでこの論が成り立つθの大きさはどこまでと考えればよいでしょうか ?
 補強土壁のように1:0.6と定義されていればよいのですが、θとφの関係などで説明出来るものでしょうか ?  

回答

 擁壁に作用する土圧(壁面土圧)は壁の変位によって変化します。擁壁が全く動かなければ静止土圧P0が作用します。
 擁壁がわずかに(壁高の1/1000〜5/1000程度)前方へ移動すると,裏込め土が緩むため土圧は減少し,すべり面が発生します。このときの土圧を主働土圧と呼び,擁壁の設計では普通,この主働土圧が作用するものとして計算しています。
 壁面を逆に後方へ押すと,土圧は静止土圧よりも大きくなります。変位が大きくなると土圧も大きくなります。このときの土圧を弾性土圧と呼びます。どんどん後方へ押してゆくと,土圧もどんどん増加し,最後にはすべり面が発生します。そのときの土圧を受働土圧と呼んでいます。受働土圧とは,土が耐えうる限界の力ですので,支持力と同じです。
 土圧の大きさは主働土圧が最も小さく,受働度あっヶ最も大きく,PA<P0<PE<PPの関係となります。
 もたれ式擁壁の場合は,自重で擁壁が後方へ変位するため,壁面に作用する土圧は主働土圧ではなく,弾性土圧となります。


 もたれ式擁壁の場合は,一般に下図ののように変位します。つまり,下方は前方へ,上方は後方へ変位するため,壁面に作用する土圧は下方が主働土圧,上方が弾性土圧となります。
 私は,壁面の一部が少しでも後方へ変位するような擁壁はもたれ式擁壁と考えています。ただし,便宜的には,自重と主働土圧を作用させて計算した結果,これらの荷重の合力が底面の中央1/3より後方へ外れなければ自立式擁壁と見なして計算しても問題ないでしょう。


 私はもたれ式擁壁を,擁壁と言うよりも「折れ曲がり基礎」と考えればよいと思っています。擁壁の底面と壁面に,荷重につり合う地盤反力が発生すると考えるのです。その解析法として,地盤係数法を提案しています。
 下図は,壁面の傾斜角を変化させて計算した結果です。



下図は,壁面勾配と主働土圧,壁面地盤反力の関係を表しています。壁面勾配が緩くなるにしたがって主働土圧は減少し最後には0になります。逆に壁面地盤反力は傾斜が緩くなるにしたがって増加します。


 もたれ式擁壁はθ=0でも計算できます。ただし,この場合は直接基礎と呼ぶべきでしょう。
 もたれ式擁壁の壁面土圧は,地盤反力と同様に変位に比例すると考えられます。主働土圧や受働土圧のように地盤がせん断破壊するときに出現する極限土圧ではないため,土の内部摩擦角とは無関係です。

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Q196 杭頭の定着鉄筋の考え方

 新・擁壁の設計法と計算例のP121に書かれている杭頭定着鉄筋の処理の考え方についてお教え下さい。
本書には,『フーチングの厚さが薄く鉄筋の定着長を鉛直に確保できない場合は杭頭鉄筋に直角フックを付け定着させても良い』と有りますが、この処理の方法(直角フックをつけても良い)について、示方書等で定義されていますでしょうか。道路橋示方書、設計便覧等調べましたが見当たりませんでした。
 実は私の設計でやはり杭頭鉄筋を折り曲げて設計いたしました。杭頭の定着鉄筋長は道路橋示方書に沿って、35d+D/2としましたがわずかにフーチング厚が足らず85mm程度曲げて設計いたしました。

 ところが、発注者側からの質問で『建設省関東地方建設局監修河川構造物の手引き(案) 平成12年3月』によると底版内の杭頭鉄筋所鉄筋処理はこの様に書かれております。
『底版に埋め込まれる杭頭面から上方の補強鉄筋は、底版上面鉄筋方向にまっすぐに伸ばすものとし、上面鉄筋位置で水平方向に折り曲げてもよい。
ただし、折り曲げた長さは鉄筋の定着長に含めてはならない。』と有り、これはおかしいのではないか、との質問でした。

 この事は私としては理解できないため、定着長の長さがあれば良い。と考え説明いたしました。説明の課程は省略しますが、なかなか上手く説明できなく、そこで、発注者側には、本の題名は伏せて置きましたがP121のことを説明したところ、その根拠は何処にあるのかたずねられ、困ってしまいました。

 杭頭鉄筋を折り曲げて良く、しかも定着長と考えても良い根拠を御教えください。

回答

 擁壁の場合,構造上水平変位が問題になることはないため,ヒンジ結合でよいということになっています(擁壁工指針p116)。ヒンジ結合ですと,理論上曲げモーメントが0となるため,連結鉄筋に引っ張り力は発生しません。したがって,引張鉄筋としての定着長は不要ですが,安全側を考えて35dの定着長を取るものとしています。
 国土交通省の土木構造物設計マニュアルでは,鉄筋を折り曲げた場合は,曲線部を無視し,直線部の和を定着長と考えいよい,ということになっています。これを参考にされたら良いと思われます。
 道路橋示方書は橋梁を対象としているため杭頭は剛結を原則としており,そのまま適用する必要はないと思います。

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Q197 L型擁壁に上載荷重が作用する場合の土圧計算法

 L型擁壁の安定計算において、壁背面は水平と考え、上載荷重を見込んでおりましす。
 その時の土圧の算定に用いる式をクーロン式・試行くさび法のどちらが良いのですか。両方で計算してみましたが、クーロンでは、転倒に対してOUTになり、試行くさびでは、OKになります。
 私も調べましたが、確かに土圧の計算はどちらも同じ結果になると言うことはわかりました。しかし、作用力のMが違う結果が生じます。どうしてでしょうか。

回答

 地表面が水平であれば,ランキン式,クーロン式,試行くさび法のいずれを使って計算しても同一の結果が得られます。
 異なった結果が得られた原因は,土圧理論の違いではなく,適用したマニュアルの違いによるのではないかと想像されます。技術基準は,それを作った委員の方の考えが反映されているため,仮想背面における壁面摩擦角δ(土圧合力の作用方向)や土圧分布の考え方が異なっています。
 例えば,道路橋示方書ではδ=φ,土圧分布は台形,擁壁工指針ではδ=β(地表面傾斜角),土圧分布は三角形としています。
 貴方が計算されたのは,試行くさび法は擁壁工指針の考え方で土圧を三角形分布とし,クーロン式は道路橋示方書に基づいて台形分布としたため転倒モーメントに差異を生じたのでしょう。

 ちなみに,理論的には,δは擁壁工指針,土圧分布は道路橋示方書が正解です。ただし,これは上載荷重が満載される場合であって,仮想背面の後方のみに載荷されている場合にはδは載荷重の大きさによって変化するため,擁壁工指針,道路橋示方書のいずれも間違っています。
 

Q198 改良試行くさび法におけるすべり面の角度について

 『 続・擁壁の設計法と計算例 』の P.80の上から7行目以降の式(3.9)に,すべり角の取り得る範囲が示されていますが,地表面が水平で上載荷重が部分載荷(後面)の場合の範囲がわかりません。
 現在は、盛土水平のみに限定して開発を行っています。φ=30゜の場合、30゜≦ω1≦60゜、60゜≦ω2≦90゜ の範囲で探索しています。この範囲での探索で良いのかが疑問なのです。
 また,かさ上げ盛土がある時のすべり角のとりうる範囲も知りたいと思います。盛土が擁壁天端から立ち上がる場合は前述の式でカバーできると思うのですが、小段幅がいろんな値をとりうると考えられますので。

回答

 盛土の形状,載荷重の有無によって主働すべり面の形状は下図のようになります。
 (a),(b)のケースでは,すべり面が直線となり,2つのすべり面で挟まれた角は90-φとなります。
 (c),(d)のケースでは,すべり面は曲線となります。この場合も,すべり面の挟角は90-φです。
 改良試行くさび法は,計算を簡単にするため,クーロンの土圧理論同様にすべり面を直線と仮定しています。このため,理論上正しい解が得られるのは,(a),(b)のケースだけです。(c),(d)のケースは近似解になります。(c),(d)のケースですべり面の挟角が90-φとならないのはこのためです。
 ω1とω2の取る範囲は,地表面の形状や載荷重に関係なく,下記のようになります。


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Q199 擁壁の支持力算定に道示を適用すべきか

 擁壁の極限支持力を求めることになりました。擁壁工指針では「道路橋示方書・同解説W下部構造編」によるとなっています。下部構造編では平成14年度版から、基礎の寸法効果を考慮した極限支持力式を用いることとなっています。
 橋梁では,構造物の変位が大きな設計要素となっていると考えられるので,擁壁の場合では極限支持力に関する考え方も異なるのではないでしょうか?下部構造編を擁壁の支持力計算に適用すると,、あまりにも極限支持力が小さくなりすぎるように思います。
 何か、アドバイスをいただけると幸いです

回答

(1)道示の支持力公式は,支持力を過小評価するか

 道路橋示方書の支持力公式は
 @支持力係数Nc,Nqには,土の自重を無視して求められたものが用いられている。
 A根入れ地盤のせん断抵抗が無視されている。
 B地盤の破壊は進行性破壊であにも関わらず,全般せん断破壊と仮定している。
 C地盤の構成式を剛塑性にモデル化しており,破壊までの変位が考慮されていない。
など多くの問題点があります。だからと言って,支持力を過小に評価しているとは一概に言えません。
 支持力を評価する上では,支持力公式の厳密性よりも,計算に用いる土質定数の問題が大きいと思います。
 一般には,実際よりも小さなφやcを用いるた,支持力が小さく与えられる場合が多いように思われます。

(2)橋梁下部工と擁壁で支持力計算法を変えるべきか
 道路橋示方書の支持力公式は,地盤を剛塑性体と仮定して計算しているため,得られる極限支持力に変位は全く考慮されていません。
 このため,道路橋示方書では,地盤の変位は別途地盤係数法で求めて照査する,あるいは最大地盤反力度の上限を抑えることで変位を制御することを示しています。
 極限支持力に関しては,橋梁下部工と擁壁で支持力公式を変えるのが合理的という理由は見あたりません。

(3)擁壁の支持力の決定法

 擁壁の支持力算定は,下記のように行うのが実際的と考えられます。

 @三軸圧縮試験などによりc,φが求められている場合には,支持力公式で支持力を算定する。
 A土質試験が行われていない場合には,擁壁工指針に示されている許容支持力度の値を用いる。


Q200 擁壁背後にガードレール基礎を設置する場合の考え方 

Q&AのNo.74にある「ガードレール基礎の大きさ」の説明は,ブロックの天端に基礎が設置された例ですが,基礎が土中に設置された場合には考え方が変わってくると思います。受動土圧も考慮できるとおもわれます。その場合には,どのように設計すればよろしいでしょうか。

回答

 衝突荷重で,下図のようにガードレール基礎が擁壁に接した状態を考えれば,ガードレールには擁壁天端からの反力Hと地盤反力Qが作用して安定すると考えられます。
 0点に関するモーメントのつり合いより Ph=2/3lQ ∴ Q=3Ph/(2l)
 水平力のつり合いより H=P+Q
 したがって,擁壁天端には H=P(1+1.5h/l)
の力が作用することになります。
 Pはガードレール支柱の降伏荷重で,A種の場合50kN,B種C種では30kNです。

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Q201ブロック積みの背後に土中用ガードレールを設置する場合の考え方

 間知ブロック積擁壁にガードレール(土中用)を,離れ0の状態で設置する場合の構造上の注意点と照査方法を教えて下さい。

回答
 Q200の場合と同様にブロック天端に水平力Hを作用させて照査することができます。
 照査項目としては,
@擁壁の転倒,滑動の検討
Aブロックの曲げ引っ張り応力度に対する照査
Bブロックのせん断破壊に対する照査
 などが考えられます。
 なお,最近は,下の図に示すようなプレキャストガードレール基礎が開発され,プレガードという商品名で全国的に製造・販売されています。国土交通省のNETISにも登録されています。高知県,鳥取県などでは,ブロック積み擁壁やテールアルメ,L型擁壁などではプレガードを標準的に使用するように通達が出されています。
 プレガードに関しては,下記にお問い合わせ下さい。
 有限会社創友 tel 088-878-1322 HomePage

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Q202 地すべり地には大型ブロック積み擁壁を適用できないか

 大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアルの総則の1.3適用範囲に,(4)地すべりなどの恐れがなく、地山の安定した箇所との記述がありますが、地すべりに対応できない構造上の問題があるのでしょうか?
 地すべり性の小さな表層崩壊に対して、大型ブロック積み擁壁で設計上、持てば問題ないと考えられるのですが,小さな崩壊でも地すべり性のものに対して大型ブロック積みを適用できなくて困っています。コメントをお願いします。

回答
 このマニュアルは,道路土工−擁壁工指針と同様に,大型ブロック積み擁壁を盛土箇所に設置した場合,安定した地山を切土した箇所に設置した場合を想定して,そのときに発生する主働土圧の算定法と,安定計算法を示しています。地すべりや斜面崩壊に伴って発生する土圧は,地形条件や土質条件,間隙水圧の影響なと゜があり,その算定法は非常に複雑になるため,このマニュアルでは対象外としています。

 総則に記述している適用範囲の説明は,擁壁設計・施工マニュアルの適用範囲を示したもので,大型ブロック積み擁壁の適用範囲を制限しているわけではありません。誤解される記述になっているようですので,今後改訂する際には訂正します。

 地すべりや斜面崩壊がある場合においても,外的安定性(転倒,滑動,支持力),内的安定性(曲げ応力,せん断応力)が確保されれば,大型ブロック積み擁壁を使用しても問題はないと思います。
 

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Q203 ブロック積み擁壁の滑動の照査

 間知ブロック積擁壁の安定計算において、滑動の安全率が所要の数値を満足できません。間知ブロック積擁壁の安定計算においては、滑動に対する安定を無視してもよろしいのでしょうか、ご教示願います。

回答

 ブロック積み擁壁の変状事例を見ると,転倒がほとんどだと思います。この原因は,根入れ部の受働抵抗が効いている,基礎底面の摩擦係数が設計で用いている値(μ=0.6)より大きい,ことが考えられます。
 農林関係のマニュアルでは,滑動に対する照査を省略しているようですが,これは,実際の変状事例を考慮したものと思われます。しかし,解析手法,設計計算に用いるパラメータの推定法を研究し,実態に即した設計法を追求するのが技術者の責務であると思います。滑動の照査をしないということは,設計計算をしないと言うことであり,技術を放棄していることになります。
 摩擦係数を調べて,実態に即した値を用いて滑動の照査をするのがベストですが,それができないとすれば,根入れ地盤の受働抵抗を期待する,基礎底面に傾斜を付ける等により滑動の安全率を確保するのがよいでしょう。


Q204 L型擁壁の根入れ深さ

L型擁壁の一般的な根入れ深さはどの程度必要ですか

回答
 道路土工−擁壁工指針では0.5m以上となっています。
宅地造成等規制法施行令第8条第4号では下記のように規定されています。
 @第一種地盤(岩,岩屑,砂利,砂利まじり砂) 擁壁高さの15%以上かつ35cm以上
 A第二種地盤(真砂土,関東ローム,硬質粘土,その他これらに類するもの)擁壁高さの15%以上かつ35cm以上
 B第三種地盤(その他の土質)擁壁高さの20%以上かつ45cm以上

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Q205 粘性土(φ=0)の支持力計算

 先日ホームページより「荷重の偏心傾斜を考慮した支持力・安定計算(道路橋示方書による)」のソフトをDLして使用してみたのですが、粘性土地盤においてせん断抵抗角Φ=0°を入力したところ支持力係数等の値にエラーが表示されました。粘性土において粘着力c(N値より推定)はでますが、せん断抵抗角は三軸圧縮等の土質試験をしなければならないので試験のデータなしにこのソフトは使用できないのでしょうか?
 粘性土地盤において「道路橋示方書・同解説」により地盤の極限支持力を求める際に同書や「続・擁壁の設計法と計算法」にも載っている地盤支持力係数図表をよみとる時Φ=0°で(私の会社では)よんでいましたが、右城様の著書や”質問1”のソフトでも粘性土地盤においてもΦ及びcを同時に考慮しているように思われます。

回答

 地盤の自重を無視した(γ=0)ときの支持力係数は次式で表せます。道路橋示方書式は,この式を基本にして荷重が傾斜した場合に拡張したものです。この式を見れば明らかなようにφ=0は計算できません。φ=0の計算をするには,φ=0.001のように非常に小さい値を入力すれば計算できます。
 また,φ≒0の場合には,荷重の傾斜角tanθ=H/V≒0でないと計算できません。