Q117 混合擁壁の土圧計算法

質問1 「擁壁設計Q&A」の「Q16混合擁壁の土圧算定法」について
 擁壁設計Q&Aでは,混合擁壁の上部擁壁に作用する土圧P1は(式1)で,下部擁壁にかかる土圧P2は(式2)あるいは(式3)で求めることができるとされています。

 上部擁壁に作用している土圧P1が土圧P2中にも含まれるのはどうしてですか?土圧P1が上部擁壁から伝わる力にも含まれ,土圧P2にも含まれ2重に土圧をカウントしているように思われますが良いのですか?
 上部擁壁が重力式擁壁(主働土圧作用),もたれ式擁壁(弾性土圧作用)でも下部擁壁に作用する土圧P2の求め方は変らないのですか?

質問2
 現在,ブロック積み擁壁の上に重力式擁壁が載っている下図に示す混合擁壁の安定計算をしています。計算方法は先に重力式擁壁に作用する土圧を試行くさび法で求め(cdeの土塊),擁壁底面の地盤反力を外力としてブロック積み擁壁の天端に作用させる。次に,ブロック積に作用する土圧を土塊abcefについて試行くさび法で求めています。土塊cdeを抜いた理由としては土塊cdeから発生する土圧はすでに上部重力式擁壁に作用する外力として分布荷重に含めたと考えたからです。この考え方には問題があるのでしょうか。

回答

質問1について

 混合擁壁に限らず壁面が折れ曲がった擁壁の土圧は,下記のように計算する必要があります。
 先ず,図1のab面に作用する土圧P1を計算します。これは,土塊abcの極限つり合い条件から求めることができ,クーロン式あるいは試行くさび法が適用できます。極限つり合い式をたてればすべり面bcに作用する力R1も求めることがだきます。
 次に,下部擁壁のbd面に作用する土圧を算定します。この方法は,図2の方法,図3の方法があります。
 図2の場合は,土塊bdecに作用する力のの極限つり合いを考え,土圧P2を算定します。そうすれば式2が得られます。ここで注意すべきは,bc面にR1の力が作用することです。
 図3の場合は,土塊abdeに作用する力のの極限つり合いを考え,土圧P2を算定します。そうすれば式3が得られます。ここで注意すべきは,ab面にP1の力が作用することです。
 図2,図3いずれの方法でも同じP2が求められます。これは,力のつり合いを示す連力図から容易に理解されると思います。
 P1が主働土圧であれ,弾性土圧であれ,式2,式3は適用できます。

質問2について
 貴方の考えは間違っています。ecに作用する反力を忘れているのです。土塊cdeに作用する力のつり合いを考えたとき,ecに反力が発生していたはずです。この反力は,土塊abcefに伝達されますので,P2を算定する時にはこの反力を外力として考慮する必要があります。
 正しくは,下図のように考えるべきです。V2は土塊に伝達される重力式擁壁底面の鉛直反力,H2は土塊に伝達される重力式擁壁底面の水平反力です。V2,H2の求め方は,少し複雑なので,ここでは説明を割愛します。
 土圧理論を理解するには,自分自身で式を誘導されることをおすすめします。

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Q118 ブロック積み擁壁の限界高さ

 擁壁Q&A選集の質問4.4に,示力線法を用いたブロック積み擁壁の限界高さの算出方法として,岡積,尋木,農林水産省の3通りの方法が示されていますが,要求される性能(安全率)や土質定数等により、適宜使い分けて良いものですか。

回答

 擁壁Q&A選集の質問4.4は,示力線法について説明し,その方法には岡積,尋木,農林水産省の方法があることを紹介したものです。示力線法によってブロック積み擁壁の限界高さを算出することを勧めているわけではありません。逆に,示力線法でブロック積み擁壁の安定性を評価した場合には,下記の問題があります。
@示力線が壁体のミドルサード内にあれば転倒しないことにはなるが,裏込土のせん断強度定数のばらつきを考慮した場合,転倒の安全性が十分保証されることにはならない。
Aブロック積み擁壁は,一般に滑動の安定性で限界高さが決定されるが,示力線法では滑動に対する安全性を評価できない。
B示力線法では,地盤支持力,壁体の曲げ応力度の安全性が評価できない。

 ブロック積み擁壁の安全性を評価するには,現在のところ,「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」以外にはないと思います。

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Q119 もたれ式擁壁の設計に地盤係数法を用いると会計検査で問題にならないのか

 このたびは先生の御著書「続・擁壁の設計法と計算例」を拝読させていただきました。具体例が多いため、理解しやすく、実際の業務に適用できる箇所も多く非常に重宝しております。
 特に「もたれ式擁壁の地盤反力算定式」の箇所につきましては非常に興味深く読ませていただきました。弊社の製品でよくもたれ式擁壁の設計を行う際には「地盤反力の算定」を依頼されます。
 
 通常使用する参考文献である「道路土工−擁壁工指針:社団法人 日本道路協会」におきましては、重力式の地盤反力算定式しか記載されておらず、これを元に計算を行えば先生が著書で記述されておられる通り荷重合力が底面そのものから外れるか、もしくは外れないとしても、非常に過大な数値がでてくるため非常に難儀しておりました。
 
 先生が記述されておられるように壁面の地盤反力を考慮した「地盤係数法」ならば実際に近いモデルであるため今後はこの方法で設計を検討するように考慮しております。

 ただこの際一つ懸念がございます。 懸念と言いますのは会計監査の際、検査官に説明する場合です。多分この算式を引用した場合、参考文献を要求されます。その場合多くは「日本道路協会」等のいわゆる政府の外郭団体が発行したものの場合は簡単に理解されるのですが、本書の式の参考文献は学会の論文であります。今一つ理解されない危惧があります。
 このような場合はどの様に対応したらよろしいでしょうか。何かいいお考えがございましたらアドバイス頂けましたら幸いに存じます。

回答

 ブロック積み擁壁やもたれ式擁壁については,地盤係数を適用しないと合理的な設計ができないこということを会計調査官も知っています。
 高知県ではH10年度より,「高知県土木部・技術関係通達集」に地盤係数法で設計した大型ブロック積み擁壁の標準断面を掲載し,運用しています。また,国土交通省四国地方整備局では,地盤係数法に基づいた「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」(土木学会四国支部)を1998の高知水害の復旧工事以後適用し,大型ブロック積み擁壁の設計をしています。長野県では,会計調査官の指摘で,H13年度よりブロック積擁壁擁壁の設計に,「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」(土木学会四国支部)を県の基準として採用しています。
 地盤係数法を適用したからといって会計検査で問題にされることはありません。

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Q120 擁壁の地震時土圧計算法

 道路土工 斜面安定工指針では、地震時の切土のり面の安定検討に用いる設計水平震度として,過剰間隙水圧算定用と慣性力用と2つ示されていますが,擁壁工指針では過剰間隙水圧用の設計水平震度が示されていません。どちらも土圧を算出するのに・・・。擁壁や橋梁の場合は、間隙水圧を考慮した設計水平震度を使用するのか教えてください。


回答

1.道路土工のり面工・斜面安定工指針について

 道路土工のり面工・斜面安定工指針に記述されている地震時の安定解析法の解釈に,少し誤解があるのではないでしょうか。

 道路土工のり面工・斜面安定工指針で地震時の安定解析法について説明しているのは,盛土の場合だけであり,切土のり面や地すべりに関しては地震時の安定解析にふれていないと思います。
 盛土の中規模地震に対する円弧滑り計算法としては,下記の二つの方法が示されています。
@地盤の液状化が盛土の安定性を損なう可能性が高い場合には,地震動によって発生する過剰間隙水圧ueを設計水平震度より算定して与えて解析する。この場合には,土塊に作用する慣性力は無視する。
A山岳盛土で地下水の影響が少なく,地震時に土の強度低下がない場合には,過剰間隙水圧をue=0とし,土塊に慣性力を作用させて安定解析をする。
 のり面・斜面安定工指針には,@の場合の過剰間隙水圧を算定するための設計水平震度と,Aの場合の慣性力を算定するための設計水平震度が別々に示されています。

2.切土法面では地震時の安定解析をしない理由 

 自然地盤は,土質,地質的に極めて複雑で不均一な構成になっています。しかも,切土のり面は応力解放に伴う緩み,降雨などによる風化によって経年的に強度低下が進行します。このため,信頼できる地盤強度定数を求め,解析によって斜面の安定性を評価することは大変困難な状況にあります。こうしたことから,道路土工指針では,経験的に切土に対する標準のり面勾配を示しているのだと思います。
 地震時の安定解析になると更に困難が伴います。地震時の安定解析法には,一般に震度法が用いられています。これはすべり土塊に慣性力(設計水平震度×土塊重量)が作用するものと仮定して静的解析する方法ですが,実際には慣性力は時間的に変化します。瞬間的に大きな加速度が土塊に作用し,すべりを生じたとしても,作用時間が短いと大きな変位は生じなく,問題を生じることは滅多にありません。地層や土質強度がハッキリしないのに複雑な動的解析を行ってもあまり意味がありません。ですから,経験的に切土勾配を決めているのが実情でしょう。,

3.擁壁の地震土圧の計算

 地下水が高く,擁壁の裏込め土が地震時に液状化するよう状態であれば,過剰間隙水圧を考慮した土圧計算が必要になるのかも知れませんが,一般には,裏込材として液状化しない良質土を使用するため,地震時の過剰間隙水圧まで考慮して設計する必要はないと思われます。
 地震時土圧の計算には,一般に,物部・岡部式を使用していますが,これには地盤と擁壁との応答が考慮されていません。この式が適用できるのは,擁壁と裏込め土が相対変位を生じることなく一体的に運動する場合に限られます。一般には,水平震度が0.2程度以下の場合です。水平震度が大きくなると,擁壁は滑動し,裏込め土と擁壁は相対変位を生じます。この結果,地震時土圧は水平震度0.2程度として物部・岡部式で求めた土圧よりも大きくならないことが最近の研究で明らかになっています。
 擁壁の耐震設計は,地震による応答を考慮した動的解析を行うべきなのですが,便宜的には,0.2程度の水平震度を用いて物部岡部式で土圧を算定し設計しておけば,大地震に対しても安全性が確保される,という理由で擁壁工指針のような記述になっているのだと思われます。
 詳細については,下記の論文をご覧になって下さい。

擁壁の地震時主働土圧に関する考察

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Q121 粘着力を考慮した土圧計算について

 「擁壁設計Q&A」を読んで勉強しています。その本に添付されている「試行くさび法による土圧算定(c-φ土を対象」のソフトの出力についてお教え下さい。なお,インプットデータとしては下記の値を入力しています。
擁壁形状
 擁壁高さH=5.0m,壁面傾斜角α=0.0゜
盛土条件
 傾斜角β=60゜,単位重量γ=1.6tf/m3,内部摩擦角φ=15.8゜,粘着力c=0tf/m2,壁面摩擦角δ=0゜
過載荷重 q=0tf/m2,設計水平震度kH=0
@出力で粘着力による自立高さzcとは,土圧作用高yと考えて良いでしょうか。
A土塊重量がW=-35.79tf/mと計算されますが,負の値のなるのは何故でしょうか。
B土圧Pとすべり角ω,自立高さzcの関係を示したグラフが凸型にならないのは何故でしょうか。

回答
 @について
 zcとは,粘着力による自立高さであって,地表面からクラックが発生する深さを意味します。土圧作用高さではありません。
 壁面傾斜角α=0の場合の土圧作用高はy=(H-xc)/3となります。Hは擁壁高さです。ただし,道路土工擁壁工指針では,便宜的に安全側を考え粘着力の有無に関わらずy=H/3としています。

 A,Bについて
 貴方がお使いになられたソフトは,盛土地表面勾配が水平か一様勾配の場合を対象にしています。この場合,β<φの条件を満たさないと盛土が安定しません。つまり,β>φとなるような盛土は理論的にあり得ないということです。
 入力された値が,β=60゜,φ=15.8゜となっていますので,土圧は計算できません。このため,意味のない結果が出力されています。

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Q122 重力式擁壁を縦断方向に傾斜させて施工する場合の留意点

 緩傾斜(0°〜15°)の山麓に沿って壁高2.0m、天端幅0.5m、前勾配4分の単一断面の重力式擁壁(延長80m)を計画しています。支持地盤は風化花崗岩や転石が推積しています。
 縦断方向の傾斜が緩いところもあれば、25%(延長15m)のところもありますので,基礎を水平にし,段切りすると掘削深が大きくなり、工事が困難になります。また,斜面の安定性にも影響が考えられます。このため,地形に沿わし,基礎底面に縦断方向の傾斜(最大25%)を付けるように施工したいと考えています。その場合の,設計・施工上の留意点があればお教え下さい。

回答

 国土交通省の標準設計図集では,擁壁を水平に施工することになっています。これは,縦断方向に傾斜を付けると滑動の安全率が低下するためと考えられます。
 擁壁の縦断方向の傾斜角をθとすると,擁壁底面のせん断力として,土圧の水平分力によるせん断力S1=PAH以外に土圧の鉛直分力PAVと擁壁自重Wによるせん断力S2=(PAV+W)sinθも発生します。また,擁壁底面の垂直力は,N=(PAV+W)cosθとなります。
 せん断力S(S1とS2の合力)の作用方向を考慮すると,滑動の安全率Fsは,下記のようになり,傾斜角θが大きいほど低下することになります。したがって,所定滑動の安全率が確保されていることを確認する必要があると考えられます。



 擁壁底面に作用するせん断力Sが増え,垂直力Nが減少するということは,滑動の安全率だけでなく,地盤支持力も低下します。支持力に対しては,底面に作用する荷重の傾斜tanβ=S/Nを考慮した照査が必要でしょう。

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Q123 二段擁壁の安定計算法

 下図のように、上部はL型擁壁・下部はもたれ式擁壁の特殊な構造を検討しています。検討方法の考え方が正しいか御教授お願いします
検討方法は、以下の順序で行いました。
 1.上部のL型擁壁を試行くさび法で安定検討を行う。
 2.下部擁壁の検討はL型擁壁の仮想背面を背面土砂形状とする。
 3.L型擁壁の安定検討より作用力(V、H)を下部擁壁の天端に作用させ、試行くさび法により安定検討を行う。
この考え方に問題があるでしょうか。


回答


 ご質問のように考えると,下部擁壁に作用する力として,土圧P1を2回計上していることになります。このような場合は,下図のように考えるべきです。
 先ず,土塊@に作用する力について考えてみます。土塊@に作用する力は,W1,R1,P1です。P1,R1は力のつり合い条件より求めることができます。
 次に,土塊Aに作用する力のつり合いを考えます。土塊Aに作用する力は,W2,R1,R2,P2です。R1は土塊@のつり合い条件で既知ですので,P2を求めることができます。
 これとは別に,土塊全体について考えてもP2を求めることはできます。全体土塊に作用する力は,W1,W2,P1,R2,P2です。このうち,P1は土塊@のつり合いで既知になっているので,P2を求めることができます。
 
 上部擁壁に作用する力は,土圧P1,自重V1,反力RV1,RH1です。力のつり合い条件から,RV1,RH1,RV1の作用位置は決定されることになります。
 下部擁壁に作用する力は,自重V2,上部擁壁から荷重RV1,RH1,土圧P2,底面の反力RV2,RH2です。

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Q124 L型擁壁を嵩上げした場合の安定計算法

 民家で,下図のようにL型擁壁を嵩上げしているのをよく見かけます。ところが,L型擁壁の嵩上げの考え方で計算すればOUTになり,現実とは一致しません。どのような方法で安定計算をすべきなのでしょうか。


回答

 下図のように擁壁高がH=h+Δhであるものと見なして,自重W,主働土圧PAを算定し安定計算することができます。
実際に安定しているにも関わらず,計算で不安定となるとしたら,それは,計算に用いた裏込材のせん断強度定数が適切でないためと考えられます。
 擁壁設計では,一般にφ=30〜35゜,c=0として土圧を計算していますが,これはかなり小さめの値であり,実際には粘着力があるか,あるいはφが大きいと思われます。
 私の経験では,一般的な土質の場合φ=35゜,c=H(kN/m2)程度は見込めます。この値を用いて計算すれば,きっと,安定という結果が得られるでしょう。

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Q125 試行くさび法による土圧計算

 試行くさびの計算中で P=sin(ω-φ)/cos(ωーφーδーα)×W の分母のωーφーδーα <0の時の扱いはいかようにしたらよいか、何卒お教え下さいますようお願い致します。

回答

 下図のように壁面の傾斜角αが大きいと,ωーφーδーα <0となります。これは,下図の力のベクトル図のPとRの挟角が90゜よりも大きくなるというだけのことで,何ら問題にする必要はありません。ωーφーδーα <0であっても,分母のcos(ωーφーδーα)は正になります。

 

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Q126 プレキャストL型擁壁にガードレールを設置する方法

 プレキャスト擁壁部にガードレールを設置する場合,ガードレールを擁壁からどれだけ離せば良いでしょうか。離す距離は,ガードレールの種別に応じて変える必要があるのでしょうかお教え下さい。

回答

 ガードレールは自動車が衝突した場合に変形し,その変形によって衝撃を緩和させると共に,自動車の運動エネルギーを吸収するように設計されています。このため,擁壁にあまり近づけて設置すると,自動車の衝突にによる衝撃力が擁壁に伝達し,たて壁を破壊することが考えられます。
 ガードレールをどの程度離せば擁壁に影響を及ぼさないのかについては,定かでありません。土木研究センター発刊の「補強土(テールアルメ)壁工法設計・施工マニュアル(1999)では,重錘衝突実験の結果より1.5m以上離す必要があるとしています。しかし,実車による衝突実験ではありませんので,1.5m離しておけば安全なのかどうかはわかりません。
 仮に,1.5m離せば問題ないとしても,路側部にそのような余裕がある箇所は限られますので,現実的対応とは思えません。擁壁から離して土中式ガードレールを設置するよりも,下図のように擁壁の上部にガードレール基礎を設置し,衝突荷重に対してはガードレール基礎のみで抵抗させるものとして設計するのが現実的と考えられます。
 なお,高知県コンクリート製品協同組合が,A種ガードレール,B・C種ガードレールに対応したプレキャストコンクリート製のガードレール基礎(商品名プレガード)を開発しています。

 

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Q127 プレキャストコンクリート擁壁の最大縦断勾配は

 大型ブロックマニュアル(H13年度版)P.50〜51に示された縦断勾配5%の根拠は何でしょうか。
 また,このことは、プレキャストL型擁壁などの設置に着いても適用できるのでしょうか。
以上、ご教示頂ければ幸いです。

回答

 大型ブロックマニュアル(H13年度版)に示している縦断勾配5%の値は,理論的なものではありません。このマニュアルの委員に入っておられるコンクリート製品メーカーの方の経験に基づいたものです。

 プレキャストL型擁壁の縦断勾配については,土木研究所施工研究室が,平成9年の「四国地建における一日土研」において,下記のような回答をしています。
 @縦断勾配がある場合,自重,背面土砂などの荷重の作用方向が明確でないこと地震時の挙動が明らかでなく,現状では設計法が確立されていない。こうしたことから,底版下面を水平に設置するのが原則である。
 A縦断勾配が小さく,基礎地盤が良質であれば,縦断勾配に合わせて擁壁を設置することも可能であると考えられるが,その場合にはFEMなどで三次元的な挙動をシミュレートする必要がある。
 ただし,この一日土研の発表会の際に,四国地方建設局(現・四国地方整備局)の職員の質問に対して,底面を傾斜しても許容される縦断勾配の目安値は,3%であると口頭で回答されています。
 こうしたことから,国土交通省四国整備局発刊のプレキャストL型擁壁設計施工マニュアル(案)改訂版(平成13年12月)には,縦断勾配が3%以下の場合は,勾配施工とする。なお,3%を超える場合は,階段施工とすると明記されています。

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Q128 大型ブロック積み擁壁で浮力を考慮する必要がある場合とは

 大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアルによりますと、『河川護岸などに大型ブロック積み擁壁を利用する場合で、浮力,又は揚圧力の作用が考えられる場合はこれらの荷重を考慮しなければならない。』とありますが、考慮する場合とは、どのような条件を示すのでしょうか。常時水位がある護岸または、洪水時のみ水位がある等の使い分けでしょうか。

回答

 河川の護岸擁壁に対して,会計検査で「浮力は考慮されているのか」と質問を受けたということをよく聞きます。そのせいか,最近,発注者によっては,浮力を考慮して設計するように指導している所もあるようです。
 しかし,私は,一般には浮力を考慮する必要がないと考えています。
 下図は,根入れが1mある大型ブロック護岸の河川で,水位が3mの高さまで上昇した場合,護岸背後に浸透水が到達する時間をざっと計算した結果です。地盤がきれいな砂であれば,透水係数が大きいので比較的短時間に背後の水位は上昇します。それでも,壁背面の水位が河川の水位−0.1mまで上昇するのに4日間かかります。シルトなら173年かかります。
 このことは,洪水で河川の水位が上昇したとしても,背後にはほとんど浸透しないことを意味します。むしろ,前面の水圧が大きいため,転倒や滑動に対して安全側に作用することが考えられます。
 これまでに設計された河川護岸は,浮力は一般に考慮されていないと思います。それにも関わらず,浮力によって転倒や滑動を生じた被害事例が無いのは,前述の理由によると考えられます。

 

 

 私が30年間の中で,水圧によって護岸が前方へ回転変位した事例を2度経験していますが,これはいずれも下記のような特殊な条件の場合でした。
 @河川水位が護岸より上まで上昇した。
 A護岸の上部は舗装等が施されず,上から容易に浸透する条件にあった。
このような場合は水圧の影響を考慮した設計が必要と思われます。一般には,河川護岸はHWLより上まで施工されますのでこのような場合は極めて特殊と言えるでしょう。
 その他に,擁壁根入れ部に被圧層があるような場合,根入れ地盤や裏込材の透水性が大きい場合が考えられます。

Q128-1 河川水位と地下水位が連動する理由は

Q128に関する質問です
 擁壁背後の地盤がきれいな砂であっても河川水が浸透するのに4日間かかるということですが、あるところでは護岸を挟んで潮位と背後地盤の地下水位がほぼ同値のサイン曲線を示す所がありました。
 透水係数は10^2〜10^3cm/secと推定されるのですが、水みちがあるせいだろうと思っております(吸い出しによる宅地、建物の変状があるところです)
 ただ、観測孔は10箇所ほどあり、全ての観測孔が水みちで海とつながっていたとも思えないのですがといっても上記のような高い透水性を示す地盤があるとも思えず釈然としません
 何か考えられることがあれば教えていただけませんかよろしくお願いします。

回答




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Q129 砕石基礎の支持力

 右城様の著書には何度となく助けられており、本当に感謝しております。
 現在、砕石による置き換え基礎について検討を行っております。弱い砂層の地盤をどの程度砕石に置換すればよいのか検討をしている中で、次の問題にぶつかりました。

1.擁壁工指針では、擁壁の支持力は最大地盤反力度で照査することになっております。そして、右城様の著書のなかでもこれに準じた考え方をとっているも のと思います。
  極限支持力を支持力公式から算出した際にも、やはり最大地盤反力度に対して支持力の照査をしなければならないのでしょうか。また、道示と同じように、鉛直力を有効載荷幅で除したものに対しての照査は間違っているのでしょうか。
 右城様の著書「擁壁Q&A選集」においては、P127(質問4.20)で、 ”最大地盤反力度で照査する方が安全側である”といったコメントはありますが。  

2.二層系地盤の支持力計算により、置換層(砕石層)とその下面の層の支持力 の照査を行っているのですが(続・擁壁の設計法と計算例−P155)、周辺条件が決定されており、根入れが深くできない等の問題もあり、砕石層での支持力が満足出来ません。砕石層の土質定数としては、
   γ=10kN/m3(水中),φ=40度,C=0kN/m2
 として計算をしております。 砕石の土質定数として、上記の設定は不適当でしょうか。また、本件のような場合でも、やはり、砕石層での極限支持力による照査は行わなければならないものでしょうか。また、地盤反力度の照査を行う際の許容支持力はどのくらいとするのが妥当でしょうか。
 


回答

 ご質問への回答の前に,道路土工指針に示されている許容支持力度について説明させていただきます。地盤の種類と許容支持力度の関係を示した表は,以前の道路橋示方書に掲載されていたものを引用したと考えられますが,現行の道路橋示方書からはこの表が姿を消しています。
 以前に,この表の出所を土木研究所のある室長に質問したことがありましたが,よくわからないと言う返事でした。私は,地盤の許容支持力度についてずっと気にかかっていたのですが,2002年2月の「基礎工」という月刊誌の巻頭言に,岸田英明先生が建築基礎構造設計の変遷について書かれています。その中に,下記の記述があり,許容支持力度表が理論的に根拠のないものであることがわかりました。
 日本建築学会では1952年に最初の「基礎構造設計指針(案)」を発刊した。当時は,地盤調査や土質試験が普及していなかったので,簡便な常用許容地耐力表を掲載した。この常用許容地耐力表が,建築基準法施行令に地盤の許容応力度表として掲載されたことが,日本の基礎構造設計の合理的な進歩・発展を非常に阻害した。基礎の支持力は,境界値問題であり,「地盤の許容地耐力度(地盤の許容支持力と建物の許容沈下量の両者を勘案して決めた値)」はあるが,「地盤の許容応力度」は存在せず,土質力学を全く知らない人間の誤った発想である。

質問1について

 支持力を計算する上で最も大きな問題は,計算に用いるc,φです。c,φの精度を考えれば,最大地盤反力度で照査すべきか,有効載荷幅で除した値で照査すべきかの議論は大した問題ではないと思います。ただし,現在使われている支持力理論では,基礎底面に作用する荷重を等分布と仮定して極限支持力を算定していますので,理論的には有効載荷幅を考えた照査法が正しいと思われます。

質問2について

 国土交通省四国地方整備局が香川県内の国道の工事で実施した砕石基礎での平板載荷試験データがあります。それを下記に示します。いずれも極限状態まで載荷されていませんので実際の所はよくわかりませんが,これらの結果から判断して,φ=35゜,c=20〜40kN/m2程度のせん断強度は期待できると思われます。

載荷最大荷重 kN/m2 沈下量 mm
事例1 566 1.74
事例2 400 2.85
事例3 560 1.02
事例4 560 2.57
事例5 480 2.46

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Q130 大型ブロック積み擁壁の計算に用いる盛土のN値について 

ブロック積み擁壁のプログラムを使用し、大型ブロック積み擁壁の設計を行っております。こちらのプログラムの入力で
 (2)盛土に関する条件−N値の箇所で、”標準は10”とされていますが、こちらは γ=20kN/m3,φ=35°,C=0の砂質土を想定された場合において、問題のないN値であると解釈することでよろしいでしょうか。
 現在設計しようとしている箇所は、裏込め材にストックしてあるズリを使用する計画になっており、三軸圧縮試験を行った結果γ=20kN/m3,φ=38°,C=13kN/m2といった結果を得ました。ただし、N値は未調査であり、今回設計するにあたり、どのように設定すればいいのか悩んでおりました。そこで、”N=10”を使用してしまってもよろしいものでしょうか。また、何か根拠などありましたら御教示願います。

回答

  盛土のN値は壁背面のバネ定数を算出するために用いています。ブロック積み擁壁では,自重が小さいため変位は問題にならないので,バネ定数は荷重が背面と底面に分配される比率を求めるためのものと考えることができます。
 荷重分配率は,底面のバネ定数と背面のバネ定数比によって決定されます。つまり,盛土のN値の大きさというよりも,底面と盛土の相対的なN値が意味を持ちます。もしも,盛土と支持地盤が同じ締まり具合の土であれば,どのようなN値を用いても地盤反力の計算に影響を与えません。 このこと理解した上て,入力データを決められたらいかがでしょうか。
 また,ブロック積み擁壁の計算では,道路橋示方書式により,N値とバネ定数が線形関係になるものと仮定してバネ定数を算出していますが,実際はそんなに単純なものではありません。このようなことを考えれば,あまり細かく検討する意味はないように思えます。盛土のN値を変えることによって,計算結果がどの程度影響するかを把握した上で,使用するN値を検討するのも大事と思えます。

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Q131続・擁壁の設計法と計算例の正誤表について 

HPの著書正誤表で,「続・擁壁の設計法と計算例」のP85,86の図と式について,下記の2つのPDFファイルで訂正を行っていますが,両者が異なっており、どちらが正しいのか分かりません。下記のPDFファイルのどちらに従って訂正すればよろしいでしょうか。
「続・擁壁の設計法と計算例(1998年10月初版)の訂正について
「改良試行くさび法に関する式の訂正について」

回答
 「続・擁壁の設計法と計算例(1998年10月初版)の訂正について」の中の図3.13において,壁面の垂直面とPACのなす傾斜角がδと表記されていますが,これぱδ0の誤りです。
 なお,「続・擁壁の設計法と計算例(1998年10月初版)の訂正について」で用いている記号PAC,δ0は「改良試行くさび法に関する式の訂正について」ではRc,δcとしていますのでご注意下さい。
 数式自体は間違っていないと思います。


Q132 鉄筋の許容引張応力度を160N/mm2としている根拠

 擁壁設計Q&Aの中で,鉄筋の許容応力度が、SD295A 1600kgf/cuとなっていますが何か理由がありますか。私は,SD295Aの場合,いつも2000kgf/cuを使ってきました。

回答

 擁壁設計Q&Aをはじめ,擁壁設計に関する小生の著書は全て基本的に道路土工−擁壁工指針(日本道路協会)に準拠しています。このため,SD295Aの鉄筋の許容引張応力度は160N/mm2(160MPa,1600kgf/cm2)としています。
 宅地擁壁など建築関係においては,鉄筋コンクリート構造計算規準(日本建築学会)に基づいているようですので,SD295Aの鉄筋の許容引張応力度として200N/mm2(200MPa,2000kgf/cm2)を採用すべきでしょう。
 設計規準によって許容応力度が異なる理由はよくわかりません。

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Q133 護岸設計で根入れ部の受働土圧を期待できるか

 底版厚1m、根入れ1mの河川護岸擁壁の設計で滑動を検討をす際、根入れ地盤の受動土圧を考慮しても問題ないのでしょうか。教えて下さい。


回答

 護岸の根入れ深さは,河川の洗掘深さより決定するのが一般的と思われます。したがって,その場合には,根入れ部の受働土圧を無視すべきです。ただし,河床に硬質な岩盤など明らかに洗掘を受けないされない地盤があり,その層に根入れしている場合,あるいは洗掘深さよりもさらに深く根入れさせる場合には,洗掘深さより下方の根入れ部の受働土圧を考慮しても問題ないでしょう。

 

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Q134 坂路擁壁の土圧計算法

 貴著「土木構造物設計・施工の盲点」に,本線擁壁にL型の坂路擁壁のかかとを密着させて下図のように施工した場合,坂路擁壁に作用する主働土圧の計算法が示されていますが,主働土圧は下図に示すLの寸法の影響を受けないのでしょうか。

回答
 
 下図の(a)のように,Lが大きくて主働すべり面acが坂路擁壁のたて壁に当たらない場合は,壁面abに作用する土圧は式(1)で計算できます。しかし,(b)図のようにすべり面adがたて壁に当たる場合は,切土部擁壁と同じになるので,式(2)で計算する必要があります。
ここに,αは本線擁壁の壁面傾斜角,εは坂路擁壁の壁面の傾斜角,δは本線擁壁の壁面摩擦角,δ0は坂路擁壁の壁面摩擦角,R0はcd区間に作用する主働土圧であり,クーロンの土圧公式で計算できます。

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Q135 擁壁の許容支持力について

 擁壁設計における地盤の許容支持力について、道路土工擁壁工指針には
1)道路橋示方書下部構造編により求める場合
2)平板載荷試験により直接的に求める場合
が示されています。
いま,
3)平板載荷試験を実施し、この結果から、下部構造編によりC、Φを決定し、
4)下部構造編により、偏心を考慮した極限支持力(KN)を求める。
ことを考えていますが,4)の偏心を考慮した極限支持力を有効載荷面積A’で除した値とする,ことで、擁壁工指針に従った設計となると解釈しておりますが、いかがでしょうか。

回答

 道路土工擁壁工指針に記述されている支持力決定に関する文面をフローにすると,図−1の実線の矢印のようになります。
 平版載荷試験しによる支持力算定は,道路橋示方書では方法Cとなっていますが,擁壁工指針は方法Dのように行うと解釈されます。
 支持力の算定法には,表−1に示す各種の方法があります。
 平版載荷試験から支持力を求める方法は,擁壁工指針と道路橋示方書で異なっています。支持力は,基礎寸法以外に荷重の偏心・傾斜の影響も顕著に受けるのですが,擁壁工指針の文面を読む限りでは,これらの影響は全く意識されていないように思われます。擁壁工指針は,φ=0と見なされる粘性土地盤を念頭において記述されているためかもわかりませんが,理由はよくわかりません。
 ご質問に書かれている平板載荷試験の方法は,道路橋示方書の方法であり,擁壁工指針に準拠しているとは思えません。しかし,擁壁工指針に比べて,道路橋示方書の方法が合理的なのは明らかなので,道路橋示方書に準拠して支持力を算定されておれば問題はないと思います。

図−1支持力決定のフロー


表−1各種支持力決定法と問題点

支持力算定法 問題点
@
実物載荷試験
@実物の基礎を施工し,それに鉛直荷重を載荷して荷重−沈下曲線から降伏荷重を決定する。 @試験規模が大がかりとなり多額の費用が必要。
A支持力が得られるのは施工後であるため,照査用としては価値があるが設計には適用できない。
A
支持力公式
@地盤を剛塑性体と仮定して,すべり線法,極限平衡法,上界法などにより地盤が全般せん断破壊するときの解を求める方法。
A地盤のせん断強度,基礎の寸法,荷重の偏心・傾斜の影響を考慮して支持力が求められる。
@解析結果は,地盤のc,φに敏感に反応する。信頼できるc,φが求められていないと解析結果も信頼できない。
A解析結果は,基礎底面と地盤の間の摩擦角の影響を受けるが,その値がハッキリしない。
B実際の地盤破壊は,局所せん断破壊であり,全般せん断破壊と仮定すると支持力を過大に評価する。
C地盤が緩いと,せん断破壊するまでに大きな変位が発生する。このため,変位に対する照査が必要となるが,変位の予測はせん断破壊の予測以上に難しい。
B
平版載荷試験1
@一般には,直径30cmの平版に鉛直荷重を載荷して,荷重−沈下曲線から降伏荷重を求め,その値より支持力公式でc,またはφを逆算し,逆算されたc,φを用いて支持力公式により基礎の支持力を決定する。
A地盤のせん断強度,基礎の寸法,荷重の偏心・傾斜の影響を考慮して支持力が求められる。
@平版載荷試験で得られる降伏荷重は,載荷面から深度0.2m位までの地表面の降伏荷重である。これより深い地盤の降伏荷重は確認できない。
A深度方向にN値が増加する地盤では小さめの支持力が得られるが,深さ方向にN値が減少する地盤では過大に評価される。
B土質試験によって,cまたはφのいずれかが既知である必要がある。
C
平版載荷試験
@一般には,直径30cmの平版に鉛直荷重を載荷して,荷重−沈下曲線から降伏荷重を求め,その値より許容支持力度を決定する。 @平版載荷試験で得られる降伏荷重は,載荷面から深度0.2m位までの地表面の降伏荷重である。これより深い地盤の降伏荷重は確認できない。
A深度方向にN値が増加する地盤では小さめの支持力が得られるが,深さ方向にN値が減少する地盤では過大に評価される。
B支持力は基礎の寸法,荷重の偏心・傾斜の影響を顕著に受けるが,これらの影響が考慮されない。
D
経験式
A経験的に許容支持力はN値と等しいと見なし,許容支持力を決定する。 @支持力は,基礎の寸法,荷重の偏心・傾斜の影響を顕著に受けるが,これらの影響が考慮されない。
A得られる支持力が地盤のせん断破壊に対するものか,沈下によるものか不明。

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Q136 示力線法 

ブロック積みの地盤反力を求めるときの合力の偏心量を示力線法で求めるのは間違いでしょうか。

回答

 石積積み擁壁の限界高さを示力線法を用いて最初に求めたのは,当時,九州工業大学教授であった岡積満氏(1950年)です。それ以来,ブロック積み擁壁の安定計算には示力線法が用いられてきました。
 図−1(a)のように,天端から任意の高さyまでの擁壁に作用する荷重が,自重Wと主働土圧PAであるとして,この2つの荷重の合力Rが通過する位置を連ねて描いたものが示力線と呼ばれています。

 通常のブロック積み擁壁に対して示力線を描くと,図−1(b)のようになります。y=0の位置では荷重の偏心量eが0なので,示力線は壁体の中心にいますが,yが大きくなるにしたがって,自重による時計回りのモーメントが卓越するため,荷重の偏心量はすeは壁体中心から後方へ離れ,y=1.7m付近以上になると壁体そのものから後方へ外れてしまいます。このことは,「擁壁高がy>1.7mになると,擁壁は後方へ転倒する」ことを意味します。しかし,ブロック積み擁壁の背後には土があるので,前方へ倒れることはあっても後方へ倒れることはありません。

 従来の示力線法の大きな問題点は,壁背面に発生する地盤反力を無視したことにあります。ブロック積みやもたれ式擁壁には,図−2(a)のように,自重W,主働土圧PAの他に壁面地盤反力Qtが荷重として作用します。これらの荷重の合力が通過する位置を示すと図−2(b)となり,壁体から後方へ外れるという矛盾はなくなります。壁面の地盤反力や,底面位置での荷重の合力を求めるには,通常の擁壁のように力のつり合い条件だけでは求めることが出来ません。このため,私は,地盤係数法を適用しています。

 従来の,壁面の地盤反力を無視して合力を求める方法を「示力線法」と呼ぶのであれば,示力線法では,ブロック積み擁壁やもたれ式擁壁の合力位置を求めることはできません。ただし,本来は,天端からyの範囲に作用する荷重の合力が通過する線を示力線と呼ぶべきであると思われます。



Q137 もたれ式擁壁の設計法

質問1

 右城さんの作られている「もたれ式擁壁」のソフトによる計算書を見ると、
荷重の偏心量 e= -1.003 m
底面幅 B= 2.050 m
許容偏心量 ea= B/6= 0.342 m > -1.0028 SAFE
危険率 0.168 < 0.5 SAFE

転倒の安全率
荷重による抵抗モーメント Mr= 529.72 kN-m/m
荷重による転倒モーメント Mo= 61.01 kN-m/m
安全率Fs=Mr/Mo= 8.682 > 1.5 SAFE
と,なりっています。

 許容偏心量結果で「0.342=B/6」に対して「-1.0028」でOKとなってい ますが、 「H11年 道路土工 擁壁工指針 P76」によると、この「-1.0028」は絶対値で判断するように> なっています。そうであれば「OUT」となってしまうのですが。 この点についてはどのようにお考えでしょうか?

質問 2
 質問1と重複としますが、このソフトでは、合力の作用位置が背面方向となった場合、底版幅を超えた位置でも「SAFE」と判断しています。
これはどの程度まで背面方向に作用位置が位置しても問題ないと判断するべきでしょうか?
  「H11年 道路土工 擁壁工指針 P89」では、「(合力作用位置が)底版内に収まっていれば 擁壁が後方へ倒れるようなことはないと判断してもよい」とあるのですが、右城さんのソフトでは 底版から外れても「SAFE」となっています。
  また、底版から合力作用位置が外れた場合、擁壁前面の下部(つま先)が持ち上がるといった 挙動は考慮しなくても良いのでしょうか?

質問 3
 この安定計算は「変位法」という考えでされているようですが、これはどのような考えでしょ うか?
右城猛さんの「新・擁壁の設計と計算例」、「続・擁壁の設計と計算例」を参考に勉強してい るのですが、 基礎知識不足のためになかなか他人に説明できません。 簡単に説明できるような考えではないと思いますが、なにかヒントを頂ければ幸いです。

回答

質問1について
 擁壁の場合,背後には土がありますので,後方へは転倒しません。転倒するとすれば前方への回転です。
 擁壁が前方へ回転するとすれば,擁壁の壁面に作用する土圧は主働土圧となります。自重はほぼ正確予測できますが問題は主働土圧です。主働土圧も精度良く求められるのであれば,転倒に対する安全率は1.0で良いのですが,γやφに推定誤差があり主働土圧は推定値より大きくなることが予想されます。このため,転倒に対する安全率を確保する必要があります。

 通常の自立式擁壁では,偏心量がB/6以下であれば転倒の安全率が1.5以上確保されることが数学的に説明できます。しかし,もたれ式擁壁では偏心量がe<B/6であってもFs>1.5となることは保証されません。このことに関しては,拙著「続・擁壁の設計法と計算例」で説明しています。したがって,偏心量だけでなく,安全率も必要ということで両方の照査を行っています。
 ここで注意すべきことは,偏心量が負の値を示すときは,擁壁が後方に回転変位するため壁面に地盤反力が発生します。転倒の安定性の照査で用いている偏心量は,壁面の地盤反力を無視した見掛けの値であり,実際の偏心量ではありません。
 偏心量が大きく底面から後方へ外れることは,背後に土がある限り力学的にありえません。

質問2について
 Q7Q21Q136などを参照してください。
 荷重の合力について少し説明をしますと,道路土工指針等で表現している荷重の合力は,下図に示す合力Rを指します。これは,自重Wと主働土圧PAの合力です。この合力の偏心量はe1です。
 もたれ式擁壁の場合,実際には,壁面土圧は主働土圧とはなりませんが,私は,便宜的に壁面土圧を主働土圧PAと壁面地盤反力とに分けて計算しています。擁壁底面の実際の荷重の合力は,自重+主働土圧+壁面地盤反力と考えるべきで,その偏心量はe2となります。
 色々と試計算した結果では,e2が底面のミドルサードを外れることはありません。ただし,擁壁の天端に非常に大きな鉛直荷重が作用する場合や,背面の盛土地盤が極端に緩詰めの場合に,e2がミドルサードから外れることがあるかも知れません。その場合には,当然,つま先が浮き上がる現象が現れます。

質問3について

 基礎構造物の地盤反力を求める場合は,一般的に変位法(地盤係数法とも呼ぶ)が用いられています。地盤を離散型の弾性バネとして計算する方法です。

 直接基礎でも,地盤反力を台形分布あるいは三角形分布としていますが,これは地盤を離散型の弾性バネ,基礎を剛体と仮定しているためです。 ケーソン基礎でも同様に地盤を離散型の弾性バネ,基礎を剛体と仮定しています。杭基礎では,底版を剛体,杭を弾性体,地盤を離散型の弾性バネと仮定しています。 鉄筋コンクリートの応力度の計算にも変位法が用いられています。

 最も簡単な問題として図−1(a)を考えてみます。擁壁を前方からPの力で水平に押したとき,背面の地盤が受け持つ力R1と底面の摩擦で受け持つ力R2を求める問題です。

 力のつり合い条件は式(1)で表されます。ところが,未知量がR1とR2の2つなので,力のつり合い式だけでは問題を解くことが出来ません。このような問題を不靜定問題と言います。そこで,変位の適合条件として,荷重Pによって擁壁は水平にδ変位すると見なします(実際は回転を伴いますが話を簡単にするため回転は無視します)。また,地盤を弾性バネと見なせるものとし,背面の水平バネ定数をK1,底面のせん断バネ定数をK2とします。そうしますと,フックの法則より式(2)がたてられます。
 つぎに,式(1)と式(2)より水平変位δを未知量とする方程式(3)が得られます。これより変位δが式(4)のように求められます。式(4)を式(2)に代入すると,反力を求める式(5)となります。

 つまり,地盤のバネ定数がわかっていれば,R1,R2を決定することが出来ることになります。これが,地盤係数法あるいは変位法と呼ばれる方法です。 K1,K2は土質試験や平版載荷試験あるいは標準貫入試験のN値等から推定することができます。
 実際には,構造物に水平力だけでなく鉛直力やモーメントが作用しますので,水平変位u,鉛直変位v,回転角θが発生します。このため,水平方向の力のつり合い条件の他に鉛直方向のつり合い条件,モーメントのつり合い条件をたてて,三元連立方程式を解いてu,v,θを求め,それより地盤反力分布を算定する必要があります。

 

 

 もたれ式擁壁やブロック積み擁壁では,図−2のように擁壁背面を離散型の垂直バネ,底面を離散型のせん断バネと鉛直バネで支持されたものとして解析しています。ただし,壁面のバネは,圧縮領域のみに設けるものとしています。


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Q138  着定方式置き換え基礎について

 逆T式擁壁に着定方式置換え基礎を採用しようと思いますが、擁壁高さが7m程度あります。先生の著書である「擁壁設計Q&A」によれば大規模な擁壁には着定方式置換え基礎は不適と書かれています。その理由を教えてください。
 また、どのようにすれば適用可能となりますか。この件についても教えてください。
梁も設計を行っているのですが、橋梁基礎に着定方式置換え基礎は適用できないのでしょか。
以上の3点について、ご教授をお願いします

回答

 擁壁高H(m)と最大地盤反力度q(kN/m2)の関係は,経験的にq=50Hで表されます。擁壁が大規模(高さが8mを超える)であると,ざっと考えて最大地盤反力度はq=400kN/m2以上となります。一般的に考えて,置き換え基礎の許容支持力度はこの当りが上限ということです。
 最大地盤反力度は,擁壁の形状(つま先版の長さ)や嵩上げ盛土の有無などによっても変わります。実際に,地盤反力を算定し,最大地盤反力度が400kN/m2程度以下であれば,置き換え基礎でも安全と思われます。ただし,置き換え基礎には砕石などを使用し,十分転圧する必要があります。
 橋梁基礎でも置き換え基礎は使えます。ただし,置き換え地盤の支持力は平板載荷試験によって確認する必要があるでしょう。

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Q139 左右へ地盤が傾斜した基礎の支持力

先生の執筆図書である「続・擁壁の設計法と計算例」p.159にある「5.4斜面上の基礎の支持力計算」のところでお聞きしたいのですが、この図書の中にある考え方は、片側斜面のものばかりですが、両側が斜面であるような場合においては、どのような方法で支持力を算出するのでしょうか? 
(丁度、富士山の山頂に基礎が設置されているようなイメージの場合です。)

回答
 地盤が圧縮され塑性状態になると,基礎直下にくさびが形成されます。基礎からの鉛直荷重Qは,くさびの側面からの反力Rでつり合いを保つと考えることができます。くさびの側面を壁面と考えれば,Rは受働土圧と同じことになります。つまり,Rが受働土圧に達するときのQが極限支持力というわけです。
 地形が下図の上段のようであれば,くさびの右側の地盤が先に受働状態になり,下段のように左右対称の場合は,左右の地盤が同時に受働状態になります。しすし,受働土圧の大きさは,上段の場合も下段の場合も同じであるので,極限支持力Qは同じになります。
 つまり,地盤が左右に傾斜していても片側のみで計算すればよいと言えます。

 

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