Q107 U型擁壁の底面と根入れ地盤の荷重分担について

質問1
 続・擁壁の設計法と計算例のp309のU型擁壁の計算例では,底面と根入れ部に作用する水平力を下記のように求めています。
 @変位法で底面の水平変位u0を求める。
 A底面の水平地盤反力度は qH=ks×u0 (ksは底面のせん断バネ定数)
 B底面地盤が分担する水平力はHb=qH×B (Bは底面幅)
 C根入れ地盤が分担する水平力は Hs=H-Hb (Hは擁壁に作用する主働土圧)
 一方,続・擁壁の設計法と計算例のp178には道路橋示方書の方法が下記のように示されています。
  Hb=H/(1+β),Hs=β×H/(1+β),β=kH×Df/(2ksB)
 計算例の方法で求めた値と,道路橋示方書の方法で求めた値と一致しません。この理由は何故なのかお教え下さい。

質問2
 Q&Aコ-ナ-のQ25では、7.12中のミスを正誤表に掲載しているとあったのですが、正誤表にはそれらしきものが見あたりませんでした。正誤表の方もお願い致します。

回答

質問1について
 拙著の計算例に用いている方法と道路橋示方書の方法の違いを下図に示します。計算例に用いている方法は,荷重による鉛直変位,水平変位,回転が考慮されています。この考え方は,道路橋示方書のケーソンの地盤反力算定方法と基本的に同じです。
 一方,道路橋示方書の方法とは,下部構造偏(H8年)p264〜p268に示されている方法です。直接基礎において,「荷重を底面と根入れ地盤との共同で支持させる場合(簡便法)」として紹介されています。この方法では,鉛直変位,回転が無視されています。
 誰が提案したかは知りませんが,力学の基本である力のつり合い条件が無視されています。
 現在,道路橋示方書が改訂作業中であり,改定案に対する意見を求められましたので,この式や,モーメントを分配する式は削除するように提案しておきました。簡便法とは言え,力学を少しでも学んだ人ならビックリします。

道路橋示方書式は下記のように誘導されます。この式が成り立つのはモーメントが0,つまりHによるモーメントとHsによるモーメントが等しい場合に限られますが,そのような場合は考えられません。

 参考のため,以下に,βHを地盤のN値から求める式を示す。


質問2について
下記の訂正をお願いいたします。

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Q108 滑動の照査における受働土圧の考え方

 滑動の照査で受働土圧を考慮する場合、主働状態では土圧が受働土圧の1/2程度しか発揮されない事から受働土圧に0.5を乗じています。また,受働土圧は押す力ではなく、抵抗する力の限界値であり、100%発揮するためには擁壁がかなり変位しなければならないと先生の著書にも書かれています。
 ところが,ある計算例では受働側が舗装された車道になっているため、洗掘が無く良質土で埋め戻しされている事を理由に0.5ではなく1.0を乗じているケ−スがありました。
 受働土圧に0.5を乗ぜずに、滑働の検討に考慮しても良い場合があるのでしょうか。

回答
 下図は擁壁の変位と土圧の関係を示しています。大方の土質力学の教科書にはこのような図が掲載されています。
 「主働状態では土圧が受働土圧の1/2程度しか抵抗土圧が発現されない」というのは,擁壁背後の盛土も根入れ地盤も同じ土である場合のことです。
 例えば,盛土には緩い砂,根入れ地盤は密な砂が用いられたとすれば,主働土圧は下図の黒線のように,受働土圧は赤線のようになります。極端な例を言えば,根入れ地盤が岩盤でありコンクリートで埋め戻したとすれば,受働土圧に至るまでの変位はわずかです。そのような場合は,変位を考慮して受働土圧を割り引く必要はありません。

 拙著「続・擁壁の設計法と計算例」の中に,U型擁壁の設計計算例を示しています。これでは,地盤係数法(変位法)によって擁壁の水平変位と根入れ地盤の反力を求め,受働破壊に対する安全率を計算しています。その場合の受働土圧は割り引いていません。変位を算定し,変位が許容変位以下と確認されていれば,根入れ地盤が緩い場合でも受働土圧の低減を考える必要はありません。


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Q109 偏土圧を受ける自由勾配側溝の設計

 かかと版が無い標準型の自由勾配側溝(門型の側溝)において、偏土圧(片側は道路で反対側が畑などにより左右の作用土圧高さが違う)の場合の計算方法を教えてください。

回答

1.安定計算の方法
 (1)転倒の照査
  壁下面の接地圧(圧縮応力)は式(1),式(2)で算出できます。
  接地圧が全て圧縮なら,荷重はミドルサード内にありますので転倒に対して安全です。
(2)滑動の照査
  通常の擁壁と同じです。
(3)支持力の照査
  通常の擁壁と同様に基礎コンクリートの地盤反力を算出し,最大地盤反力が許容支持力以下なら安全です。

2.基礎コンクリートの応力照査
 図4に示すように地盤反力が作用する単純張出張りとして曲げモーメントを算出し,応力度を照査する必要があります。なお,この場合の地盤反力には基礎コンクリートの自重を無視して計算できます。
 


3.自由勾配側溝本体の応力照査における留意事項
 自由勾配側溝は全国的に普及していますが,応力照査上気になる点があります。
 本体の曲げモーメントを計算する際に,図5のように下端ヒンジのラーメン構造としていますが,このモデルが成立するためにはヒンジ支点の水平反力に対する拘束が必要です。自由勾配側溝は基礎コンクリートの上に設置し,水路内側にコンクリートを張るだけですのでこの水平力に抵抗できる構造になっていません。したがって,図6のような静定構造として曲げモーメントを算出すべきです。そうすると,下端ヒンジ構造に比べて頂版の曲げモーメントがかなり大きくなります。
 もしも,下端ヒンジ構造とするのであれば,図7のような構造にし,水平反力を水路の外側の突起で抵抗させる必要があります。

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Q110 示力線法について

 ブロック積擁壁の安定検討を行っておりまして、示力線法についてお教え下さい。
1)安全率について
 転倒に対する安全率 FO=3b・γc(n・y+b)/ (KA・y(3q+γ・y)
 滑動に対する安全率 FS=2bγc/( KA(2q+γ・y))μ
上記の式は、「誰も教えてくれなかった疑問に答える 擁壁設計Q&A 右城 猛著」 理工図書の[例題3.7]147ページに記載されているものです。上記の式の基本的な考え方、出典名を教え下さい。
2)ブロック積み擁壁の限界高における式中の安全率ついて
 岡積の限界高さを求める式の中の安全率と上記の式の安全率との関係について教え下さい。
3)確認事項
「誰も教えてくれなかった疑問に答える 擁壁設計Q&A 右城 猛著」の付録プログラム「示力線法」の出力データにおけます安全率(滑動および転倒)の計算式は、上記の式より算出されているのでしょうか?

回答

(1)安全率について

 転倒,滑動の安全率の算定式は式(1),式(2)のように誘導しています,なお,コンクリートの単位体積重量をγc,裏込め土の単位体積重量をγ,主働土圧係数をKAとしています。
 簡単に誘導できますので,誰の文献も参考にしていません。

(2)岡積の限界高さ
 岡積博士は,主働土圧をF倍(岡積はF=2としている)して求められる示力線が擁壁断面の中心線より後方に位置すれば転倒に対して安全としています。この考えで転倒に対する限界高さを定式化すれば式(3)となります。簡単に誘導できますが,もしも,わからなければ拙著「擁壁設計Q&A選集}理工図書,p93-94をご覧になって下さい。
 式(2)とは考え方が異なります。両者の関係を議論しても余り意味がないと思います。
 

(3)確認事項
 擁壁設計Q&Aの付属ソフトの安全率は式(2)で算出しています。

(4)その他
◆ 式(2)は土圧が水平に作用するものと仮定しています。道路土工−擁壁工指針に準拠するのなら,土圧は水平に作用するのではなく壁面の垂線からδ(=2φ/3)傾斜させて作用させるべきでしょう。
 このような計算が可能なソフトは,拙著「Excelによる擁壁設計」(理工図書)に添付されています。また,下記のホームページから入手することも可能です。
  示力線法のソフト入手先 http://www.h2.dion.ne.jp/~c-net-s/

◆ ブロック積み擁壁の設計に示力線法を適用するのは問題があります。最近,長野県の会計検査で,調査員の指摘があって以来,下記のマニュアルに準拠した設計が普及しつつあります。
  大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル(土木学会四国支部)
  このマニュアルに準拠したソフトも販売されています。  

 

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Q111 ブロック積み擁壁の支持力照査について

長野県では、平成13年4月より、大型ブロックの設計は、右城さんが中心となってまとめられた大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアルを採用することにしました。改訂版が出版され、よりわかりやすくなったと喜んでいます。
 ところで、極限支持力の算出式によりますと、編心を考慮した式に変更されましたが、極限支持力は、極限支持力度(kN/m2)としていますが、p34 鉛直力に対しての照査ですので、あくまで単位はkNにしたほうが、良いと思われますが?
その時の計算は、B'を乗じることになりますか?eが背面側ですとB'>BとなりますがこれでOKですか?関連計算例p77ご指導下さい

回答
 p78に安定計算の計算例を示していますのでご覧になって下さい。
 支持力の安全率は,下記のように支持力度qdでなく支持力Quで照査するようにしています。
 支持力の安全率  Fb=qd・B'/Qv
 有効幅B'に関しては,Q106をご覧になって下さい。

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Q112 根入れ地盤の抵抗を考慮した滑動安全率の計算

 貴著「誰も教えてくれなかった疑問に答える擁壁設計Q&A」に,根入れ地盤の抵抗を考慮した滑動の安全率の計算法が示されています。その中の道路橋示方書の方法も紹介されており,根入れ地盤のせん断破壊に対する安全率を式(1)で求めるとしていますが,受働土圧PPを1/2とした式(2)とすべきではないでしょうか。

回答

 道路土工−擁壁工指針では,根入れ地盤の抵抗を考慮した滑動の安全率の計算に際して,根入れ地盤の抵抗は受働土圧の1/2としています。その理由として,受働土圧が発揮される変位は主働土圧に比べて大きいため,としています。つまり,滑動による過大な変位を避けるためと解釈されます。
 一方,道路橋示方書では,破壊に対する安全性の照査の他に変位に対する照査を義務づけています。式(1)は破壊に対する安全性の照査です。変位は式(3)で求められますので,この値が許容変位以下であることを照査します。
 以上のことからわかると思いますが,道路土工指針では,変位に対する照査をしないため,変位を考慮た安全率を計算する立場をとっているのに対して,道路橋示方書では別々に評価しているということです。
 なお,式(3)はQ107で誘導していますので参考にしてください。

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Q113 主働すべり角について

 あるゼネコンの現場責任者の方から、もたれ式擁壁の設計のご依頼があり、主動土圧のすべり角度を ω=45°+Φ/2 (Φ:内部摩擦角)で決定するように、指示されました。
 以前にもこのようなお話を建築の現場の方から、指示されたのですが,これはどのような意味があるのでしょうか?

 回答



 クーロン式による主働すべり角は式(a)となります。壁面が鉛直(α=0)で地表面が水平(β=0)かつ壁面摩擦角δ=0の場合には式(b)となります。
 もたれ式擁壁の場合は,α<0,δ>0ですので,ωは式(b)で求めた値よりも小さくなります。
 セネコンの現場主任の方は,主働すべり角の意味をご存じないのではないでしょうか。

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Q114 もたれ式擁壁に張り出し歩道を設置する場合の計算方法

 既設のもたれ擁壁護岸の上に張出し歩道を設置する場合、合力の作用位置が底版後方に外れるため右城先生のもたれ擁壁で計算をしたいのですが、どのようにすればよいでしょうか。

回答
 拙著「EXcelによる擁壁設計」のもたれ式擁壁設計ソフトでは張出歩道荷重を入力できないので適用できません。しかし,このソフトを改良すれば,適用することができます。改良した設計計算用ソフトを添付しておきますのでダウンロードしてご使用下さい。
 下図の(1)のように既設のもたれ式擁壁護岸の上に張り出し歩道を設置する場合は,先ず(2)のように張出歩道に作用する荷重と地盤反力RV,RHを算定します。RVの作用位置はDとします。
 添付のソフトを使用して計算する場合は,壁前面は下図(c)のように一様勾配の場合しか適用できませんので,天端鉛直荷重の作用位置としてdで入力する必要があります。。また,載荷重は,活荷重の他にHmの盛土重量を加味する必要があります。
 添付ソフトでは,壁体及び底版の応力計算はできません。別途照査する必要があります。その際に,上部からの荷重,自重以外に背面の主働土圧,壁背面の地盤反力を考慮する必要があります。


 もたれ式擁壁の安定計算用ソフト

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Q115 飽和砂質土地盤におけるフローティング方式置き換え基礎の計算法


 著書「続・擁壁の設計と計算例」5.3.2フローティング方式置き換え基礎に、「軟弱な粘性土層の一部を置き換える・・・」とあるのですが、軟弱な飽和砂質土層の一部を置き換えて検討を行う場合にはどのように考えたらよろしいのでしょうか?
 また、著書「新道路土工指針による擁壁の設計と計算例」5.4フローティング基礎の極限支持力度も参考にしているのですが、式(5.2)に砂質土層であるため内部摩擦角を考慮して(Prandtlの式)、ef面上のせん断抵抗力の鉛直成分を加味し、式(5.7)に代入して式(5.8)を求めるわけですが、式(5.7)から式(5.8)は導き出せないと思うのですが、回答を頂きたいと思います。

回答
 「続・擁壁の設計法と計算例」,「新道路土工指針による擁壁の設計と計算例」のフローティング方式置き換え基礎は,いずれもφ=0の粘性土地盤を対象にしていますので砂質土地盤には適用できません。
 プランドル系の支持力公式を用いた,置き換え基礎底面での支持力照査法を紹介します。
 支持力は式(1)で照査します。Vは置き換え基礎の底面ad面に作用する全荷重(abcdの土砂も含む)です。
 許容支持力度qaは式(2)で計算します。この式はテルツァギー理論に基づいています。その考え方は図2に示しています。
 地盤の極限支持力度qdは式(3)で表されます。基礎の根入れDfが大きいと,図3に示すgfdの土塊の重量とdfの粘着力が支持力に及ぼす影響が大きくなります。この影響は根入れ効果であり,その影響を考慮した補正係数がκcとκqです。κc,κqは小生が導いた式です。
 支持力係数にはプランドルの式を拡張したライスナーの式,カコーの式およびソコロフスキーの数値解の近似式であるマイヤーホフの式を示しました。これらの支持力係数は,建築基準(H12年改訂),道路橋示方書ケーソンの支持力式に適用されています。




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Q116 擁壁底面に傾斜を付ける滑動対策工法の実積と施工上の留意点

 貴著のなかで滑動安全率を向上させる一方法として、基礎底面を10度傾斜させることが記述してあります。底面がフラットな場合、突起をつけた場合と比較して確かに安全率は向上しますが、実際に設計で取り入れらているのでしょうか。また、その際の施工上の留意点について教えて下さい。

回答
 日本の古い土木専門書を見ればわかりますが,石積やもたれ式擁壁など滑動の安全率で断面が決定されるような擁壁では図1(a)のように底面を傾斜させることが一般的に行われていたようです。また,アメリカでも同様の施工が行われているようです(図1(b))。
 日本では擁壁底面に傾斜を付けることが少ないですが,全くないわけではありません。図2は高知県土木部の技術通達集ですが,滑動の安全率が不足する場合には底面に傾斜を付けています。
 施工上の留意点としては,設計上の傾斜角が正確に施工されること,支持力が期待できるように掘削面を十分転圧することです。


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