Q1066 もたれ式擁壁の底面の地盤反力度について 

貴著「続・擁壁の設計法と計算例,p.139」について質問させていただきます。
 底面における合力作用位置dに応じて式(4.45)の簡便式で最大地盤反力度qvmaxを求めていますが,台形分布となっているもう一方の地盤反力度を求める式はないのでしょうか?
 つま先版などを設置した場合,応力計算するのにもう一方の地盤反力度が必要になってくるので,あれば教えて下さい。

回答

 「続・擁壁の設計法と計算例」の式(4.45)は,大型ブロック積み擁壁の地盤反力度を想定しています。適用できるのは,壁厚が高さの1/10程度で一定で,つま先版を有しない擁壁です。この条件に該当しない場合は,地盤係数法で計算して下さい。

 参考のために,式(4.45)の根拠を示しておきます。
 擁壁底面における合力の作用位置dが,31B/60より小さい場合の地盤反力度の算定式は理論式です。 ただし,@擁壁は剛体,A底面は離散形のバネに支持されている,という2つの仮定を設けています。
 合力が底面中心より後方に作用すると,擁壁は背後の地盤にもたれかかるように振る舞うので,背面に地盤反力が発生します。このため,底面の合力の作用位置は背面の地盤反力を考慮しないと求めることができません。しかし,大型ブロック積擁壁 を想定した試計算の結果,かかとの地盤反力度が最大となり,その値は地盤反力度を等分布と見なした値より1割程度大きくなることが分かりました。このため,q2=1.1Vo/Bとして算定することにしました。かかとの地盤反力度をこのように仮定すれば,つま先の地盤反力度はq1=0.9Vo/Bにしなければ辻褄は合わないことになりますが,安全側を考えればq1=Vo/Bとすべきです。
 31B/60は,q2=2Vo(2B-3d)/B^2の式でq2=1.1Vo/Bになるdを意味しています。 

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Q1067 粘着力を考慮した土圧の計算法

 擁壁の裏込め土として現地で発生する洪積粘土を最大乾燥密度の85%に締め固めて使用する予定です。洪積粘土の細粒分含有率は63%です。 土圧計算に用いる土質定数についてお教え下さい。

質問1
 道路土工−擁壁工指針では、主動土圧の算定に試行くさび法により計算するようになっていますが,常時の場合,粘着力を考慮できません。粘性土のようにせん断強度が粘着力に支配されるような土の場合,同指針に載っているφ=25°を使用するしかないのでしょうか。

質問2
 先生の著書「土質のトラブル回避術(日経BP社発行)」を読みました。同書P.156についてですが、φ=25°に相当する粘性土の粘着力としてc=5.4・zと書かれています。この結果をひも解くとc=強度増加率×単位体積重量×深さになり、強度増加率は0.3で通常の沖積粘土と同じになります。これは強度増加後の粘着力でありますが、これは強度増加後の値を使用するということでしょうか。また、現地発生土を締め固める場合、φ=25°を用いることが本当にふさわしいと言えるのでしょうか。

質問3
 道路土工−擁壁工指針では、土圧などの計算に用いる定数を一軸圧縮試験や三軸圧縮試験により求めることを原則としています。今回の様な土で三軸圧縮試験を実施するにはどのような試験条件で実施することがふさわしいとお考えでしょうか。私は三軸(UU)試験により粘着力を求めるのが良いと考えていますが、試験結果がそのまま試行くさび法に入力できないことに悩まされています。

質問4
 道路土工−擁壁工指針では,液性限界がwL<50%の粘性土を対象としていますが,wL>50%の粘性土についてはどのように考えればよいでしょうか。

質問5
道路土工指針では,主働土圧は試行くさび法で算出することとなっていますが、粘着力を考慮するにはランキン式以外ないのでしょうか。例えば円弧すべり検討などによる安定検討方法等では土圧の安定検討のような方法ではだめなのでしょうか。

質問6
道路土工指針では,8m以下の擁壁の場合には,土圧算定用の裏込め土の土質定数として経験的な値を示していますが,8mを超えるものについては土質試験を実施して土質定数を求めることになるのでしょうか。その場合粘性土ではどのように土質定数を設定するのでしょうか。また、その場合での検討方法も教えて頂けませんでしょうか。

回答

質問1について

 試行くさび法を用いれば,粘着力を考慮した主働土圧合力を求めることができます。例えば,拙著「土質のトラブル回避術(日経BP社発行)」の91頁の式(4.2)を用いれば粘着力を考慮した主働土圧合力が求められます。この式は設計水平震度(kh)も考慮できるようになっています。常時土圧の場合はkh=0とおけば計算できます。
 道路土工−擁壁工指針に「常時の場合,土圧計算に粘着力を考慮てぎない」とはどこにも書かれていません。粘着力が確実に期待できるのであれば,粘着力を考慮して土圧を求めることができます。
 Q&AコーナーのQ9をご覧になって下さい。

質問2について

 壁に作用する圧力のことを側圧と呼びます。側圧とは土圧と間隙水圧の総称です。粘性土では土圧と間隙水圧を別々に求めるのは難しいため,建築では側圧として評価されています。山留め設計施工指針(日本建築学会,2002年)では,土質に応じて経験的な側圧係数が表−1のように示されています。
 φ=25゜としてランキン式で主働土圧係数を求めると,KA=tan2(45-φ/2)=0.4となります。この土圧係数は表ー1に示されている硬質粘土〜中位の粘土の側圧係数に相当します。擁壁工指針では,裏込材に粘性土を用いる擁壁では,側圧係数0.4程度の土圧と間隙水圧を見込んで擁壁を設計するのが経験的に妥当と判断されているのだと思われます。
 拙著「土質のトラブル回避術」の156ページは,「道路土工−擁壁工指針では,粘性土の土圧を算出する場合のせん断強度定数としてc=0,φ=25゜の値を用いることになっているが,これはどの程度の粘着力を持つ粘性土に相当するのだろうか」という質問に回答したものです。筆者が粘性土の土質定数としてc=0,φ=25゜が妥当と言っているのではありません。

表−1 側圧係数(山留め設計施工指針,日本建築学会,2002年)

条  件 側圧係数 qu(kN/m2)
層厚の大きな未圧密ないし正規圧密の特に鋭敏な粘土 非常な軟弱粘土 0.7〜0.8 <50
層厚の大きな正規圧密程度の鋭敏な粘土 軟弱粘土 0.6〜0.7
正規圧密程度の粘土 軟弱粘土 0.5〜0.6
過圧密と判断される粘土 中位の粘土 0.4〜0.6 50〜100
安定した洪積粘土 硬質粘土 0.3〜0.5 100〜200
堅い洪積粘土 非常な硬質粘土 0.2〜0.3 200<

質問3について

 Q&AコーナーのQ9をご覧になって下さい。


質問4について

 表−2に土質とコンシステンシーの関係を示しています。wLが50%より大きいと,粘土分が多くなるのでφ=25゜が担保できなくなるということだと思われます。また,wL>50%の土は裏込材として不適当と考えてよいと思います。

表−2 土のコンシステンシーの例(土木工学全集編集委員会:土質力学,理工図書)

土質 液性限界wL(%) 塑性限界wp(%)
砂質ローム 25 18
砂質粘土ローム 30 20
シルト 35 18
シルト質粘土 45 25
粘土質土 55 20
粘土分のやや多い場合 80 30
砂質粘土ローム 100 40
関東ローム 150 80

質問5について

 試行くさび法で計算できます。計算法は「質問1について」で紹介した通りです。
 擁壁の設計では一般にクーロン式,ランキン式,試行くさび法が用いられていますが,円弧すべり計算が適用できないということではないと思います。
 すべり面が直線よりも円弧に近くなる場合は円弧すべり計算法が適しているかも知れません。

質問6について

 擁壁工指針では,土質定数は土質試験によるのを原則としています。しかし,規模の小さい擁壁の場合,いちいち土質試験を行って土質定数を決定するのは不経済となることから経験値を示しているのだと思います。全国どこでも使える経験値なので,かなり安全側(小さ目)の土質定数になっています。それを承知で使用するのなら,高さが8mを超える擁壁に対しても適用できます。実務では,一般的に,擁壁の規模に関係なく経験的な土質定数を使用しています。

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Q1068 二段重力式擁壁の安定検討

 中硬岩の切土に,下図に示すように二段重力擁壁を計画しています。Excelによる擁壁設計に添付されている二段重力擁壁のソフトでは、設計水平震度Kh が入力が出来ないことと,準拠指針が宅地防災マニュアル解説ではなく道路土工−擁壁工指針に準拠になっているためどのように対応してよいか困っております。 この二段重力擁壁が防災の観点から問題が無いか、また,このような二段重力擁壁の安定検討する方法について御教授お願い致します。

回答

 地山は岩盤であり,擁壁の底面が岩着している場合には二段擁壁として検討する必要がありません。二段擁壁としての検討が必要なのは,下右図のように地山が土砂の場合であって,上段と下段の擁壁の設置間隔が狭いため,すべり面が上段の擁壁に当たる場合です。
 ご質問のような場合は,単独の重力式擁壁として安定検討できます。


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Q1069 ブロック積み擁壁の上にコンクリート壁を載せたときの安全性

 海岸に隣接している公園で、潮位(水位)が上がるため、海水を堰きとめるため,ブロック積み擁壁の天端に高さ60cmのコンクリートの壁を下図のように設ける計画です。コンクリート壁には,波圧が直接当たることはありません。海面が上昇したときに海水が流れ込むのを防止する目的です。
 このような場合,、既設ブロック積はどういう計算で照査すれば、既設ブロック積みが安全と判断できるのでしょうか。発注者からは既設ブロック積みの上にコンクリート壁を設置することは構造的に無理と言われました。ブロック積みの上に、コンクリート壁をおいては駄目なのでしょうか。発注者を納得させる計算方法を教えて下さい。

回答

 ブロック積みの上にコンクリート壁を載せると転倒,滑動に対しては安全側,支持力に対しては危険側となります。支持力に余裕があれば問題有りません。その理由を下記に説明します。

 常時に擁壁に作用する力は,下図に示すように自重W1,W2,W3,主働土圧(水平成分PAH,鉛直成分PAV),有効受働土圧αPp,底面の摩擦力ΣVμ,鉛直地盤反力ΣVです。転倒と滑動に関しては主働土圧の水平成分PAHが増加し,FsPAHになったときにつり合いの限界状態になると考えます。支持力に対しては全鉛直荷重がFs倍になったときに限界状態になると考えます。
 そうしますと,転倒,滑動,支持に関するつり合いの限界状態は下記のようになり,転倒,滑動,支持に関する安全率を求める式が得られます。これらの安全率算定式から,W3があると転倒と滑動の安全率が大きくなり,支持力の安全率は小さくなることが容易に解ります。 


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Q1070 自立式矢板の根入れ長

 自立式の土留め鋼矢板にU型を使用するよりもV型を使用する方が必要根入れ長が大きくなります。V型を使用すると矢板の応力度や変位が小さくなるので根入れ長も小さくて良いと思われるのですが,逆にV型の根入れ長を長くしなければならない理由をお教え下さい。

回答
 道路土工−仮設構造物工指針では,自立式土留めの根入れ長はL=2.5/βとして計算するものとしています。理由として,根入れが2.5/β程度以上になると,矢板の変位や曲げモーメントがほとんど変化しなくなるためとしています。しかし,これでは説得力に欠けます。
 矢板を根入れするのは,矢板が転倒や滑動することを防ぐための筈です。そうだとすれば,矢板の剛性が大きいほど根入れを大きくしなければならないというのは変です。さらに変なのは,掘削深さhに関係なく,矢板型式と根入れ地盤のN値だけで根入れが決まることです。




 自立式の土留め矢板の設計法には,下記に示す3つの方法があります。
 極限平衡法は,矢板の背面が主働土圧,前面が受働土圧となったと仮定して,受働と主働土圧によるモーメントがつり合う深さ,つまりPPyP=PAyAとなる根入れ深さL0を求め,その1.2倍を根入れ深さとする方法です。昭和62年度版の道路土工指針では,極限平衡法が採用されていました。この方法では矢板の変位が求まらないと言う問題はあるのですが,私は簡便で合理的な優れた方法であると思っていました。なぜ弾性法に変わったのか不思議です。
 弾性法は,矢板の根入れ部が離散型のバネで水平方向に拘束されているとして解析する方法で,現行の道路土工指針に採用されています。根入れ長を2.5/β程度以上にすれば,半無限長の弾性梁と見なすことができるので,解析は簡単になります。この方法の問題点は,掘削面で地盤反力度が最大となり,根入れ部の上部で地盤反力が受働土圧よりも大きくなると言う不合理を生じます。また,前述したように作用荷重と無関係に根入れが決まるという問題点があります。
 弾塑性法は,弾性法の問題点を改善した方法です。地盤反力と受働土圧が等しくなる深さfまでの範囲は,根入れ地盤が塑性化して受働土圧に等しくなるとし,それより深い根入れ部が離散型のバネで水平方向に拘束されていると仮定して解析します。離散型バネで拘束された範囲の深さが2.5/β以上あれば半無限長梁と見なすことができるので,解析は比較的楽です。しかし,それよりも短いと有限長梁として解析しなければならないのでかなり複雑になります。弾塑性法では,矢板の応力度が許容応力度以下,矢板の水平変位が許容変位量以下,弾性区間の根入れ長が最小根入れ長以上となるような根入れ深さを決めることになります。3つ中では最も合理的な方法です。
 


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Q1071 底版を傾斜させたL型擁壁の根入れ深さ

 L型擁壁の底面を下図のように傾斜させた場合、根入れ深さとしてf1,f2のどちらを採用するのが妥当でしょうか。

回答
 擁壁の基礎を地盤に根入れさせる目的は,擁壁が過大な沈下や傾斜あるいは水平変位することを防ぎ,長期的に安定させることにあります。そのためには,
@支持力を確実に期待できる強固な地層まで根入れさせる。
A滑動抵抗が十分期待できる深さまで根入れさせる。
B地盤の凍結深さより深く根入れさせる。
C降雨,流水による洗掘深さ以上に根入れさせる。
ことが重要です。
 支持層となる地層が浅く,B,Cの影響を特に考慮する必要がない場合でも,地盤が土砂の場合には0.5m以上根入れさせるのが普通です。ご質問の場合にはf1を0.5m以上とするのが良いでしょう。

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Q1072 支持力係数の根入れ効果に対する補正係数

 支持力公式における「根入れ効果に対する係数」について調べております。
右城先生のホームページの「土木技術再入門」にありました「直接基礎の支持力計算法」を拝見いたしました。8ページから9ページにかけて、右城先生が導かれた理論式が記載されておりますが,この式は道路橋示方書に記載されている式κ=1+0.3Df/Bよりも、より現実を捉えた式であると考えていいのでしょうか?
 実は、「根入れ効果に対する係数」が何故「自重に関する項」に係ってないのか疑問に思い、調べてみようと考えたのが発端です。道路橋示方書の参考文献などを当たりましたが、どのような経緯で道路橋示方書にこのκ=1+0.3Df/Bという式が記載されるに至ったかを示す文献にはいまだめぐり合えず、Meyerhofの論文までさかのぼりましたが、こちらにもκ=1+0.3Df/Bという式が見当たらず、疑問に思っております。

回答

 私が誘導した支持力式も,道路橋示方書式も地盤を等方均質な剛塑性と見なし,極限平衡法に基づいて誘導しています。つま,支持地盤は全般せん断破壊と仮定しています。しかし,実際の破壊は進行性破壊です。徳島大学の望月教授や上野助教授らのグループが行った遠心載荷実験によると,荷重の増加に伴って主働塑性場→遷移場→受働塑性場が順に形成されていくそうです。支持力のピークが現れるのは主働塑性場が形成される時点だそうです。
 また,極限平衡法では,根入れ深さDfは一定と見なしていますが,実際には荷重の増加に伴って基礎は沈下するので,根入れ深さも増加していきます。このことも支持力に大きく影響します。
 破壊のメカニズムは,剛塑性理論とはほど遠いようです。したがって,私が提案した式をより現実を捉えた式とはまったく思っていません。
 道路橋示方書の支持力式については,「土木研究所 第226号 偏心傾斜荷重に対する極限支持力計算法 昭和41年12月 建設省土木研究所」,「土木研究所資料第1611号 浅い剛体基礎の極限支持力に関する研究 昭和55年10月 建設省土木研究所構造橋梁部基礎研究室」に詳しく書かれています。
 根入れ効果について,「土木研究所資料第1611号」では次のようなことが書かれています。
@根入れ効果は,理論的には算定が難しく,経験的に"depth factor"として求めている。
A大型基礎模型実験の結果と理論値を比較すると,根入れ深さが浅い場合には両者はほぼ一致するが,根入れが深くなると実験値が大きくなる。
B根入れ効果の補正係数にBrinch Hansen(1970)の式がある。れの補正式を使えば実験値にかなり近くなる。
κc=1+0.4Df/B
κq=1+2tanφ(1-sinφ)~2Df/B
Cより正確な根入れ効果を把握するための研究が必要

Q1073 中詰め式U型擁壁の土圧

 下記の中詰め式U型擁壁に関する質問です。擁壁の背後には側壁の高さまで盛土がされています。
 安定検討(全体検討)は外的荷重に対してですので、片側からの主働土圧により検討しました。次に、左右の側壁の応力検討にあたって、中詰め土砂は両側の壁にどのような土圧として作用するのかが問題になりました。私は,今までの経験や文献から、側壁は底板に固定されているため,中詰め土砂からの荷重は静止土圧として作用させていましたが、別の者が中詰め土砂も主働土圧として検討してよいのでは?と右城氏の著書に記載してある文面を出してきたので、その適用についての質問です。

回答
 壁面に作用する土圧の大きさは,壁の拘束の程度によって変わってきます。ですから,「壁面土圧は主働土圧より大きく,受働土圧よりは小さい。主働土圧と受働土圧の間のどこかにある」としか言えません。ただし,盛土が正規圧密状態であれば,「主働土圧と静止土圧の間」と考えられます。
中詰め式U型擁壁の側壁の応力計算に用いる土圧を,道路土工−擁壁工指針設計では主働土圧,港湾の技術上の基準では静止土圧を用いることになっています。
 私は,U型擁壁に限らず,L型擁壁でも剛体的安定検討に対しては主働土圧,応力計算に対しては静止土圧が理に叶っていると思っています。しかし,静止土圧の大きさを適切に求めるこど困難なことを考えれば,主働土圧でもよいと考えています。
詳しくは,「基本からわかる土質のトラブル回避術」(日経BP社)の60〜61頁をご覧になって下さい。
 また,U型擁壁の設計法と計算例については,「土木技術」に連載している「わかり易い擁壁の設計講座」の2006年4月〜6月号に詳しく紹介していますのでこちらもご覧下さい。

Q1074 土砂地盤に施工する段切り基礎設計の留意点

 砂防えん堤工の基礎部において,下流の洗掘防止や地耐力不足を解消するために,断切り基礎の計画を行いたいと思っております。
 「続・擁壁の設計法と計算例」や「土木技術」に示されている断切り基礎は,岩盤上への施工を前提とされているように思われますが,砂礫地盤等への適用は可能でしょうか?また,適用可能な場合,留意事項等がありましたら,教えて頂きたいと思っております。

回答

 荷重W,P1によって堰堤が破線のように変位すると,底面には鉛直地盤反力Qv1,Qv2と水平地盤反力QH1,QH2が発生し,安定を保つと考えられます。ただし,これは地盤が強くてせん断破壊しない場合です。もしも,支持地盤が土砂であると,下図の右図に示すように上段の地盤反力QV2,QH2に対して地盤が安定せず破壊することが考えられます。その場合には,QV2とQH2の載荷重による土圧P2が,段切り基礎の側面に働くことになります。これを考慮した検討が必要になります。




Q1075 ブロック積み護岸工の基礎材について

 新潟県の標準設計図集では,ブロック積工(H≦5m)の基礎材について,「護岸または地質がクラッシャーランのような場合は基礎材は使用しない」と記述しています。基礎材を設置した方が摩擦が大きくなり、滑りに対して安定すると思われます。また揚圧力の影響も小さいと思うのですが、右城先生の考えをお聞かせ下さい。

回答
 基礎地盤が岩盤あるいは良質な礫質土のような場合には,基礎コンクリートの下に基礎材を設けることはしませんが,粘性土地盤の場合には砕石等を敷くのが一般的と思われます。
 新潟県の場合,どのようなことを想定して標準設計図集が作成されたのか分かりませんが,護岸の基礎に砕石を敷くとそこが水みちとなり,土砂吸い出しの原因になるのを防ぐための処置かもしれません。
 


Q1076 部分的に地盤改良したときの支持力算定式

 「基礎からわかる土質のトラブル回避術」のP225のQ43に対する質問です。回答のなかで地盤改良体の底面での極限支持力を求める式(1)が紹介されています。
   Qu=B`e{α・C2・Nc・Sc+q`・Nq・Sq+1/2・γ2・β・Be`Nr・Sr−γ1・h}        (1)
 この式で,-γ1・hの項のある理由がかわかりません。
 また、許容支持力を求める際には,下記のような式とすればよいのでしょうか。

   Qa= 1/F・B`e{α・C2・Nc・Sc+q`・Nq・Sq+1/2・γ2・β・Be`Nr・Sr−γ1・h}      (2)

回答

 改良体の下の地盤の極限支持力Qu'は式(3)となります。道路橋示方書で示されている式と同じです。
    Qu'=B`e{α・C2・Nc・Sc+q`・Nq・Sq+1/2・γ2・β・Be`Nr・Sr }  (3)
 改良体の下面に作用する鉛直力をV'とすると,支持力に対して安全であるためには,
       V'<Qa=1/F・Qu'  (4)
 改良体の単位体積重量をγ1,高さをh,幅をBe,改良体の上面に作用する鉛直力をVとすると,
       V'=V+γ1hBe  (5)
 ですので,支持力に対して安全であるには次式となります。
       V<1/F・Qu'-γ1hBe   (6)
 式(3)を式(6)に代入すると
      V<1/F・B`e{α・C2・Nc・Sc+q`・Nq・Sq+1/2・γ2・β・Be`Nr・Sr-F・γ1h}   (6)
 慣例によって,支持力に対する安定条件を
      V<Qa    (7)
 とおけば,許容支持力は式(7)で表されることになります。
       Qa=1/F・B`e{α・C2・Nc・Sc+q`・Nq・Sq+1/2・γ2・β・Be`Nr・Sr −F・γ1h}  (7)

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Q1077 中詰め式U型擁壁の側壁に地震時に作用する水平力

 中詰め式U型擁壁の側壁の地震時における断面力の算定法について教えて下さい。
「側壁に作用する水平力=地震時土圧+側壁自重の慣性力+中詰め土の慣性力」と考えられます。中詰め土の慣性力は,側壁と同様に「土重量×水平震度」として求めれば良いでしょうか。側壁に対しては,中詰め土全部の重量による慣性力を内壁の高さで割って等分布荷重で考えるのでしょうか。擁壁設計Q&Aにも土木技術5月号にも載ってませんでしたので質問させていただきました。

回答

 「側壁に作用する水平力=側壁自重の慣性力+中詰め土による地震時土圧」です。中詰め土の慣性力によって側壁に作用する力が地震時土圧です。地震時主働土圧を求める物部・岡部式がどのようにして導かれたのかを考えてみれば解りますよ。


Q1078 埋戻し土の許容支持力と沈下量の推定法

 擁壁の縦断方向に下図のような段差がある場合、擁壁Aと擁壁Bの基礎地盤は埋戻し土となります。地盤が埋戻し土で許容支持力度の照査を行う場合に、その許容値として擁壁工指針のP.21 表1-6を利用しようと思うのですが埋戻し土には対応していません。
 支持力については,埋戻し土をφ=30度の砂質土と見なしてφ=√15N+15の式で逆算によって求めたN値15より,許容支持力度をqa=150KN/uと推定している例を見たことがあります。このような方法で支持力を求めても良いでしょうか。
 沈下量に対して照査している例を見たことがありません。照査する方法がないのか照査の必要がないのかどちらでしょうか。

回答
 φ=√(15N)+15の式は土木研究所によってつくられた経験式で,N値からφを推定する式です。この式を用いてφからN値を推定することはできません。横軸にN値,縦軸にφをとった座標値に試験データをプロットすると,データは相当広い範囲にばらつきます。前述の土研式は,φの下限値を与えます。このため,逆にφからN値を求めると,N値を過大に推定することになります。
 経験的に埋戻し土のN値は10程度です。許容支持力度は100kN/m2程度です。
 沈下量を推定する方法には,地盤係数法があります。地盤係数はN値から推定できます。沈下量やバネ定数の計算法は,道路橋示方書下部構造編に載っています。
 しかし,最大地盤反力度が100kN/m2以下であれば,沈下も問題にならないと思われます。
 埋戻し土の土質や現場条件で締固めが十分出来ないような場合には,埋戻し土にセメントを混入して,土質改良を行うことも考えられます。
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Q1079 ボックスカルバートの上にL型擁壁を土留め用として設置するときの問題点

 プレキャストRCボックスカルバートの上部の土留め用としてプレキャストL型擁壁を下図のように設置する計画です。ところが,コンクリート同士の摩擦係数が参考書に記載されていないため、検討ができません。もし、参考となる書籍があればお教え願います。また、この方法自体に問題点があるようであれば、御指摘願います。

回答

(1)摩擦係数iについて

 道路土工−擁壁工指針ではpp20-21において下記のように説明されています。
『基礎底面の摩擦角φBは,プレキャストコンクリート擁壁ではφB=2φ/3とする。ただし,基礎コンクリートおよび敷きモルタルが良質な材料で適切に施工されている場合には,φB=φとしてよい。なお,基礎地盤が土の場合およびプレキャストコンクリートでは,摩擦係数μの値は0.6を超えないものとする』
 さらに,表1−7 基礎底面と地盤の間の摩擦係数と付着力の枠下には,『注)プレキャストコンクリートでは,基礎底面が岩盤であっても,摩擦係数は0.6を超えないものとする。』と注記されています。
 擁壁工指針の説明は,『プレキャストコンクリート擁壁の滑動面は,地盤か弱いと,@敷モルタルと地盤との境界面がすべり面になるが,地盤が強いとプレキャスト擁壁と敷きモルタルとの境界面がすべり面になるので,摩擦係数は0.6以下にする』ということだと解釈されます。
 つまり,コンクリートとモルタルの摩擦係数は0.6とする,ということだと思われます。
 なお,プレキャスト擁壁と敷きモルタルの摩擦係数については,藤林コンクリート工業株式会社のホームページにプレキャストコンクリートL型擁壁を用いた摩擦係数の実験結果が公開されています。http://www.fujibayashi-c.co.jp/technology/report.pdf

(2)この方法の問題点その1
 ボックスカルバートの頂版には,擁壁底面の鉛直地盤反力が鉛直荷重として作用します。地盤反力は土被り圧の2倍程度になると考えられます。したがって,地盤反力に対してボックスカルバートが安全であることを証明する必要があります。
 車道部で設計したカルバートを歩道部に適用していれば,地盤反力よりも活荷重の影響が大きいので問題ないと思いますが,一応安全であることを確認しておくのがよいでしょう。

(3)この方法の問題点その2
 端部のボックスカルバートには,下図に示すように擁壁を介して土圧が伝達されます。このため,ボックスカルバートがお互いに縦締めされていなければ,端部のカルバートの転倒,滑動,支持力に対する検討が必要です。たて締めされている場合には,土圧の影響に対してたて締めの強度の照査が必要です。

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Q1080 裏込め土の液性限界

 擁壁工指針では、裏込め土のせん断定数の表で粘性土(ただしWL<50%)とありますがWL(液性限界)を、どう解釈したらいいのですか。WL>50%の粘性土の取り扱い方を教えてください。

回答
 液性限界wLが,圧縮指数Ccと相関関係にあることが経験的に分かっています。例えば,スケンプトンはCc=0.009(wL-10)という式を提案しています。wLが大きいほど,圧縮性が大きい土ということになります。一般にwL>50%の土は「高液性限界」と呼ばれ,裏込め土として用いるのは問題があるので,セメント系固化材を混ぜて土質改良してから使用するのがよいと思われます。



Q1081 斜めボックスカルバートの滑動と回転に対する照査法

 橋梁をボックスカルバート(直接基礎)によって上流側へ拡幅する計画です。ボックスカルバートの平面的形状を上流側が60゜,下流側が36゜の斜カルバートとしているため下図のように左右岸の側壁の長さが異なっています。このため,左右岸で側壁に作用する土圧の大きさが異なります。
 また,土圧の平面的な作用位置も異なり,カルバートを回転させると考えられます。カルバートが回転するかどうかを確認するにはどのような検討を行えばよいでしょうか。ボックスカルバートの下流端は橋梁に接しているため,実際には回転しないと考えられますが,この影響は考慮せず,ボックスカルバート単体で安定できるようにしたいと思っています。
 いろいろと知人に相談したのですが,よい答えが見つかりません。右城様の著書に直接関連する内容ではなくて恐縮ですが,ご教示いただければ幸いです。

回答

(1) 滑動に対する検討
 滑動に対する安全率は,次式で計算できます。ただし,底面の摩擦も抵抗力として関与しますが,安全側を考えて無視しています。
   滑動の安全率=(左岸の側壁の長さ×受働土圧係数)/(右岸の側壁の長さ×主働土圧係数)    (1)

(2)回転に対する検討
 左右岸の側壁に作用する土圧合力は,力のつり合い条件より
       PaLa=PbLb    (2)
となります。Paは右岸の側壁に作用する単位長さ当りの主働土圧,Laは右岸の側壁の長さ,Pbは左岸の側壁に作用する単位長さ当りの土圧,Lbは左岸の側壁の長さです。
 土圧は下図に示すように側壁に等分布して作用するものとすると,次式で表される偶力Mを生じます。
      M=PaLae=PbLbe     (3)
eは右岸の土圧合力と左岸の土圧合力の間の距離です。
 偶力にはボックスカルバート底面の摩擦で抵抗すると考えます。
 ボックスカルバートの底面の鉛直応力をσ,摩擦係数をμとすると,回転に対する安全率は式(4)で求めることができます。
            (4)

    
 

                      図−1

 実際には,図−2のように分割し,式(5)で計算すれば良いでしょう。
             (5)

                    図−2

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Q1082 主働土圧の計算に用いる粘着力

 擁壁設計Q&A-105問答-「質問3.4 主働土圧の計算に粘着力を見込めないのか」の回答の中で,『独立行政法人土木研究所では,万一粘着力が完全に消失したとしても安全率1.0以上が確保されるように設計することを推奨しています」と書かれていますが,この出典を教えて下さい。

回答

 旧・建設省土木研究所施工研究室の青山氏が,土木技術資料(Vol.42,No.8,2000)Q&Aのコーナーに「擁壁工背面土の土質定数の取り方」と題して記述されています。 Q9の質問の回答で紹介していますのでご覧になって下さい。

Q1083  支持力計算に用いる基礎幅の考え方 

基礎地盤の支持力計算に関する質問です。
 地盤反力度q1(qmax)を基礎底面にかかる荷重として,地盤支持力との対比を検討するとき、支持力の計算には換算基礎幅Beではなく基礎幅Bを用いています。これは「オーム社 絵解き土質力学」内に「Bを用いなさい」と記載されているためです。概要は添付ファイルにまとめています。
 しかし、先生の書籍またはウェブサイトには一切そのようなことが書かれていません。「土質のトラブル回避術」p.128の「荷重の偏心載荷に対する評価」を読むとますます分からなくなりました。
 私の解釈違いなのか、「絵解き土質力学」が間違っているのか、是非お教えください。

回答

 テルツァギー系の支持力は,クーロン土圧と同じように極限平衡法で解を求めています。両者の違いは,土圧では主応力の方向が一定になり,すべり面が直線になるのに対して,支持力では応力場が主働状態から受働状態に変化することで主応力が90度回転し,その結果すべり面が直線にはならないということです。
 クーロンの受働土圧の算定式と極限支持力の算定式を比較すると,下図のようになります。受働土圧も極限支持力も同じ形の式で表すことができます。クーロン土圧では,土圧分布については一切考慮されていません。ですから,土圧合力の作用点がどこであってもPPには影響しません。極限支持力についても同じです。実際にはQuの作用位置によって極限支持力の大きさは変わるはずですが,テルツァギーの支持力では,Quがどこに作用するかは全く関知せず,基礎の直下にくさび状の主働場が形成されると仮定しています。
 つまり,ご質問の@に対してもAに対しても厳密に言えばテルツァギーの支持力式を適用することはできません。敢えてテルツァギー式を適用して支持力の照査を使用とすれば,@については地盤反力度がq1で一定と見なす必要があります。 Aについては基礎幅をB'=B-2eと見なし,地盤反力度はP/(B'×L)と考えて計算する必要があります。

 質問者は,基礎の中央に荷重Pが作用すれば,地盤反力度はq0=P/(B×L)になるとお考えのようですが,拙著「土質のトラブル回避術」p.141〜p.143で説明しているようになります。等分布になるのは,粘着力cが非常に大きくて,土の内部摩擦角φと単位体積重量γが無視でき,かつ地盤が完全に塑性化した場合です。一般に等分布としているのは,あまり根拠のない便宜的な仮定に過ぎません。
 また,B'=B-2eは実験解ではありません。「地盤反力を等分布と仮定するのであれば,基礎幅をB-2eにしないと力のつり合い条件を満足できない」というだけのことです。拙著「土質のトラブル回避術」p.128には,「マイヤーホフ法がB'=B-2eを用いて支持力を算定すれば安全側になることを実験で確認した」と書いています。
 

Q.1084 擁壁延長方向の杭の間隔と躯体の応力照査

 対象構造物は,H=4.7m〜2mの重力式擁壁です。伸縮目地間隔は10m未満です。直径0.5mの鋼管杭を1列打つ計画です。
 1)延長方向の杭間隔については,擁壁工指針に規定がないため2.5D以上かつ8D程度以内の範囲で,鉛直支持力により決めました。杭間間隔の目安を教えて下さい。
 2)この場合,擁壁の延長方向の照査は必要でしょうか。伸縮目地間隔が10m未満であるため,カルバート指針に準拠して省略しました

回答
 道路橋示方書で,杭の最小間隔を2.5Dとしているのは,杭の間隔が狭くなれば杭の水平抵抗に隣接の杭の影響(群杭効果)が現れるのでそれを避けるためだと思います。最大間隔8Dというのはよく分かりません。杭間隔が広くなると,たて方向の曲げモーメントが大きくなります。この曲げモーメントによって擁壁のコンクリートに引張応力が発生しますので,それが許容曲げ引張応力度以下であることを照査する必要があります。
 カルバートの場合は,鉄筋構造であるため10m程度までであれば,照査が不要ということでしょうが,荷重条件や地盤条件などによっては10m未満でも応力照査が必要になります。
 マニュアルは先人の知恵袋であるのですが,それを丸飲みするのではなく,なぜそのような規定が示されているのか,規定を外すとどのような問題が発生するのかを常に考えるように心掛けるのが良いと思います。

Q1085 粘着力による自立高さ

「新・擁壁の設計法と計算例」p.251の設計計算例中、粘着力による自立高さhcを求める計算式の後半に三角関数部があります。
通常hcは、α=0,β=0,δ=0の条件で、hc=(2c/γ)tan(45+φ/2)-q/γとありますが、このp.251計算式はどこからきているのかお教えください。

回答

下記の式(1)]のことだと思いますが,正しくは式(2)となります。訂正をお願いします。
hcは,擁壁上部の粘着力によって自立する範囲の高さのことで,図−2のabの鉛直高さを意味します。
三角形abcに着目し,粘着力による自立高さcbの長さをzcとすれば,正弦定理より式(3)となります。
式(3)を変形してhcを求めると式(4)が得られます。
zcは式(5)で表されるので,これを式(4)に代入すると式(2)となります。


Q1086 大型ブロックの定義について

 「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」には,ブロックの控え長さ50cm以上がマニュアルで対象とする大型ブロックであると書かれています。50cm以上のブロックを使用すれば,マニュアル95ページのQ&Aの写真にあるようにブロックと背面型枠材を鉄筋にて連結する場合も大型ブロックと考えられるのでしょうか。そうだとすると,現場打ちコンクリート部とブロックが剥離しない証明ができれば,控え厚さはいくら厚くても良いということでしょうか。大型ブロックとして控え長さの定義をご教示下さい。

回答

 ブロックのサイズが普通か大型かを区別する判断基準には,1個のブロックの表面積の大きさで区別する方法,ブロック1個の質量の大きさで区別する方法,ブロックの控え長さで区別する方法があります。擁壁工指針では,ブロックの控え長さが50cm以上のものを大型ブロックと定義していますので,「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」においてもそれに準拠しています。
 ブロックの背後に現場打ちのコンクリート(裏込めコンクリート)を施工し,何らかの方法でブロックと一体化を図った場合は,擁壁を1個の剛体と見なすことができます。このため,ブロックが大型かどうかの区別とは関係なく「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」に示した方法で安定検討を行うことはできます。
 問題は,ブロック積み擁壁が地震動を受けた場合,あるいは経年的にコンクリートが劣化した場合にブロックと背後の裏込めコンクリートが一体的に挙動するかということです。これを証明するには,載荷試験,応力解析が考えられますが,マニュアルに示してあるのは,「耐震性大型コンクリートブロック積み擁壁に関する研究委員会」において,一体化と見なせると判断されたものです。載荷試験や応力解析で安全性を検証したわけではなく,各委員の経験に基づいて合意が得られたものです。
 マニュアル95ページの写真のブロック積みは,ブロックの底版部および控え壁部に大きな孔があけられており,ブロックと胴込めコンクリートが付着により一体する構造になっていると判断しました。この判断も委員会の合意によっています。
 「現場打ちコンクリート部とブロックが剥離しない証明ができれば,控え厚さはいくら厚くても良いということなのでしょうか」という質問に対する回答ですが,経済性を無視すれば控えが厚いほど安全性は向上すると思われます。ただし,現場打ちコンクリート部とブロックが剥離しないというだけではなく,所要の強度も確保されていることが前提になります。擁壁各部の応力度が許容応力度以内に収まっていて(擁壁を剛体と見なせることが明らかになっていて),擁壁の剛体的安定性(滑動,転倒,支持)が確保されている必要があります。

Q1087 坂路擁壁の土圧計算式

 「基本からわかる土質のトラブル回避術」のQ25坂路擁壁に作用する土圧の算定法は(P.198)と、ホームページQ&AコーナーのQ134坂路擁壁土圧計算法について質問があります。

(1)どちらの式が正しいのか
 両者で主働土圧を算定する式が一致しておりません。どちらが正解でしょうか?力の釣り合いから導いてみたところ、ホームページの式が合っていると思うのですが。

(2)すべり面の角度ωはφに等しくなるか
 ホームページの式の場合、すべり面が壁にぶつかる位置より上部に考慮している土圧(高さhoの主働土圧Ro)が大きくなるケース、つまりω=φの時にPAがいつも極大値になると思います。このような解釈で宜しいのでしょうか。

回答
(1)について
 「基本からわかる土質のトラブル回避術」では,すべり面が当たる壁面の角度εを水平面を基準にして測定しています。一方,ホームページQ&AコーナーのQ134ではεを鉛直面を基準にして測定しています。このため,両者で式の形は違っていますが,同じ結果を与えます。したがって,両方の式とも正解です。→誘導式

(2)について
  Q&AコーナーのQ134に示している式を用いて,
   H=5m,L=2m,α=10゜,ε=10゜,γ=20kN/m3,φ=30゜,δ=20゜
の条件で計算すると, 
  ω=57゜,ho=4.5m,Ro=76.309kN/m,W=110.652kN/m,PA=91.922kN/m
となります。
 なお,「基本からわかる土質のトラブル回避術」の式では
  H=5m,b=2m,α=10゜,ε=80゜,γ=20kN/m3,φ=30゜,δ=20゜
として計算します。
 ω=φのときにPAが極大値を示すというのは間違いです。

 

Q1088 仮設工指針と擁壁工指針の許容支持力度の違いについて

 防雪柵(道路防雪林帯育成のための吹止柵)の設計で、H鋼杭(打撃工法)の計算をしております。「仮設工指針P69」に準拠して極限支持力度をqd=200αNとして算出する(北海道開発局道路吹雪対策マニュアルによるものです)と、N=3とした場合、qd=200*1.0*3=600kN/m2となります。許容支持力度はqa=600/3=200kN/m2になります。
 これに対して,「擁壁工指針P21 表1-6」を見ますと、砂質地盤(中位なもの)200kN/m2ではN=20〜30が導かれるかと思います。N=3とN=20〜30の相違があることになりますが、式(qd=200αN)と表1-6との関連についてはどう考えるのが妥当でしょうか?

回答

 仮設工指針の支持力式も擁壁工指針の支持力も経験に基づいたものですが,杭基礎と直接基礎では基礎先端の地盤の破壊形態が下図のようにことなります。両者では基礎先端地盤の拘束圧が異なるため,それが支持力の差になって現れます。

 

 


Q1089 φ=0のときの支持力係数Ncの求め方

道路橋示方書のNcを求めるグラフの読み方について質問があります。
 現在間知ブロックの支持力検討を行っているのですが、φ=0,V=64.6kN,H=48.5kN,tanθ=0.751の条件の場合のNcの値はどうなるのでしょうか。先生の著書「土質のトラブル回避術」を実務の際に参考にさせてもらっていますがこの中にもNqのグラフの読み方は書かれていますがNcについては書かれてなくP124.「駒田らの支持力式」を用いても答えが求められません。

回答
 φ=0の場合,Ncはtanθによって変わります。tanθ=0のときNc=5.14,tanθが0.4以上になるとNc=0です。