Q1029 地震時における構造物の安定性を震度法で評価できるか
| 擁壁などの構造物の地震時における安定性の照査では,一般にkh=0.15程度の設計水平震度を用いた震度法が用いられています。このような方法が適用できるのはどの程度の震度の地震でしょうか。今年の10月23日に発生した新潟県中越地震では震度7の大きな揺れがありました。このように地震に対しても震度法は適用できるのでしょうか。 |
回答
水平震度khとは,地震による地動最大加速度amaxと重力加速度(g=980ガル)のことですが,擁壁なと゜の設計で用いられている設計水平震度は過去の地震事例から逆算で求められています。
道路土工指針では,円弧すべりを生じた斜面で観測された地動最大加速度amaxと,円弧すべりの安全率が1となる逆算震度khとの関係を図−1のように求め,逆算震度を設計水平震度としています。
道路土工指針では大規模地震でも設計水平震度の最大を0.24と決めています。地動水平加速度が大きくなっても設計計算上の加速度は240ガルを考えておけば十分という経験的判断に基づいたものです。

図−1地動最大加速度と設計水平震度の関係
ところが,新潟県中越地震では安全と考えられていた多くの擁壁が被災しました。関越道や宅地に使われていた高さ1.5mのL型擁壁はたて壁のつけ根で破断しました。地動水平加速度(NS成分とEW成分の合成)は図-2に示すように非常に大きいものでした。
図−3は1質点系の構造物が弾性応答をした場合の応答加速度を示しています。中越地震は0.2〜0.7秒付近に卓越周期があります。擁壁の固有周期は0.1秒程度と考えられますので,大きな力が擁壁に作用した可能性があります。
地動加速度が350ガル程度の地震に対しては,道路土工指針に示されているような震度法で設計しておけば安全性が確保できるのかもしれませんが,加速度の大きい地震に対しては適用できないことが中越地震でハッキリしました。

図−2 新潟県中越地震の地動水平加速度波形

図−3 加速度応答スペクトル
気象庁の震度階は,従来は体感と被害の規模から決められていました。しかし,1996年以降は地動加速度を修正して求められる加速度aから計測震度Iを
I = 2 log a + 0.94
として求め,計測震度 I から下表で震度階が決められています。
地震の卓越周期にもよりますが,震度6強を超えるような地震に対しては道路土工指針に示されているような震度法は適用できないと思われます。
加速度の大きい地震に対しては実際の地震波形を用いた応答解析が必要です。しかし,土の強度には歪み依存性やせん断速度依存性がありますので,実際の応答を再現することは非常に難しいといえます。

| もたれ式擁壁の設計ほうについて「道路土工 擁璧工指針」には下記のような記述があります。 「もたれ式擁璧が岩盤などの良好な支持地盤上に設置されており、かつ擁壁の背後に近接して安定した地山がある等、作用土圧が小さいような場合には、一部の断面において擁壁の合力作用点が所定の範囲を後方へ外れていても底版内に収まっていれば擁壁が後方へ倒れるような事はないと判断してもよい。」 もたれ式擁璧の安定計算をしているとしばしばこのような状態におちいり、市販の計算ソフトでは計算不能になる場合が多くあります。そこで、右城さんの著書にある「地盤係数法」で計算を行い、安全率で照査する方法をとらせていただいている事が多いのですが、その場合、発注者よりいつも次のような質問があがります。 「会計検査等では擁璧工指針等の公的な文献に記載されていない照査方法では説明がし難いので、合力の作用点が底版内に収まっている確認の計算書を用意してほしい。」 これに対して別途計算書を添付するようにしています。 ここで質問に移らせていただきます。 (1)「地盤係数法」を記載した公的な文献は、どのようなものがあるのでしょうか? (2)将来、「地盤係数法」の計算手法が「擁璧工指針」に記載されてくる様な目処はあるのでしょうか? |
回答
(1)について
公的かどうかは分かりませんが,社団法人土木学会四国支部で「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」を発行しています。発売は愛媛大学の矢田部研究室が担当しています。→詳細はこちら
(2)について
現在道路土工指針の改定作業が行われています。日本道路協会に,地盤係数法を採用するように意見を出してありますが,採用されるかどうかは分かりません。
設計計算を経験された方であれば,擁壁工指針に示されているもたれ式設計法が不合理であることをほとんどの方が感じておられると思われます。
このことは会計検査の調査官も分かっておられます。長野県では,会計検査員の方から「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」を採用すればよいというようなコメントがあり,以後,このマニュアルを採用していると聞いています。その他のでも県の技術基準に四国支部のマニュアルを採用しているところが増えていると聞いています。
Q&Aコーナーへ戻る
| 続・擁壁の設計法と計算例のP.325に示されている数式を用いて,底版のせん断力Sと鉛直地盤反力qvxを算出したのですが、 326表7.12.5および図7.12.4に示されている値と一致しません。例えば,x=2.070の位置で計算すると, qvx=4.788+(0.158−4.788)/2.30×2.070=0.621 S=2.5×(3.15×0.30+0.30×2.070)−1/2×(0.158+qvx)×2.070=3.109tf/m となりますが,著書ではS=-0.724tf/mとなっています。 なぜ同じ値にならないのでしょうか。 |
回答
原因は拙著p325の数式が間違っているためです。正しくは下記のようになります。
お詫び申し上げます。なお,SI単位で書いてある第2版では修正されています。

|
Q&Aコ−ナ−のQ238(平面的に折れ曲がったプレキャストL形擁壁の安定計算方)の回答で、 |
回答
ご指摘ありがとうございます。回答が間違っていました。ご指摘の通りです。
| 「斜面上基礎の支持力計算プログラム」を平成13年10月26日に大阪産業会館で実施された
「Excelによる道路構造物の設計」講習会でCD−Rにて配布して いただきました。
なかなか、使用する機会がななかったのですが、このたび適当な案件 あり利用させていただくことになりました。 ところが、図−1の条件を入力後に「ソルバー」を実行しますと、パソコンがフリーズ します。 何度かトライしましたが、いずれもフリーズしてしまいます。 他のパソコンで実行した場合では計算がきませんでした。 条件を入力したファイルを添付致しますので、ご回答いただけるようでしたらお願い致します。 ![]() 図−1 ソルバーを実行する前 |
回答
図−1のデータ入力されたファイルを私のパソコン上で開いて,そのままソルバーを実行させますと図−2の結果が得られます。
パソコンがフリーズしたり,計算ができないということはありませんので,その原因についてはわかりません。
図−1のような条件を入力したのでは正しい解は得られません。斜面の傾斜角βが34゜であるにも関わらずφ=32゜,c=0という理論的にあり得ない数値を入力しているからです。c=0であれば,φ>βでなければなりません。
土質定数をφ=40゜,c=30kN/m2と入力すれば,図−3のような解が得られます。

図−2 φ=32゜,c=0でソルバーを実行

図−3 φ=40゜,c=30kN/m2でソルバーを実行
| 弊社は、ブロックメーカーであり、この度宅地造成等規制法の15条認定の申請を予定しております。そのため、擁壁の設計仕様を先生の本等を参考に勉強させていただきながら、作成中です。 その中で疑問に思った点をいくつか質問させていただきたく思いメールさせていただきました。 逆T型擁壁の仮想背面をかかと版の端部から垂直に伸ばしたラインとして計算していましたが、筑波建築試験センターよりそれでは土圧を過大に評価することになるのでかかと版の端部から縦壁の天端を結ぶ斜め方向に取るよう指導を受けました。斜めに仮想背面をとる場合、仮想背面と擁壁の間部分の土塊も自重に見込むこととなっていますが、その際、積載荷重は自重のうちに含まれるのでしょうか? クーロン、ランキン式では地震時の検討はできないとされていますが、過大になってしまうからということなのでしょうか? |
回答
(1)仮想背面の取り方
仮想背面を鉛直にとるのが良いのか,斜めの面にするのが良いのかは,Q174で回答しているのでそちらをご覧になってください。
(2)地表面の積載荷重
仮想背面を斜めにとった場合,仮想背面から下の部分の土砂は,擁壁の自重W0の一部と見なしますが,地表面の積載荷重は自重には入れません。
積載荷重qの影響は,土圧PAを計算する際に,式(1)のように楔の重量Wの中に取り込むか,式(2)のように主働土圧係数KAを割りますような形で評価します。


(3)地震時土圧
クーロンやランキン式では地震時の検討はできないという意味がよく理解できません。
震度法に基づいてクーロン式を地震時に拡張したものが物部・岡部式であり,地震時の検討には物部・岡部式が一般的に用いられています。ただし,橋梁の設計では,修正物部・岡部式が用いられています。
物部・岡部式では,地震時の慣性力が静的に作用すると見なしているため,実際の地震時土圧とは相当異なるのはやむを得ないことだと思います。
Q&Aコーナーへ戻る
| 砂質地盤の強度定数と地盤変形係数の求め方についてどうか教えて下さい。 道路土工「仮設構造物工指針H11年.3月」(Page30,31)での砂質土のφとN値の換算式は、 φ=√(15N)+15≦45°で、変形係数はE=2800Nの関係が示されております。 砂礫地盤でN値が50以上で連続している層(換算N値100)とした場合に、φとEの算出でのN値は50で計算するのですか。それとも換算N値の100で計算するのですか。 N値 50の場合=>φ=42°E=140,000kN/m2 N値100の場合=>φ=45°E=280,000kN/m2 |
回答
N値が100であれば,φ,E0ともN=100として計算すべきです。ただし,φの上限は45゜とします。
なお,φは拘束圧の影響を受けることから,最近では土被り圧に応じて修正したNからφを推定する式が用いられるようになっています。拘束圧を考慮した推定式は道路橋W下部構造編に紹介されています。
Q&Aコーナーへ戻る
Q1036 二段擁壁の土圧計算
|
下図に示す二段擁壁を設計しています。下段擁壁に作用する主働土圧PAは,式(1)で計算してます。上段擁壁からの鉛直力は全て下の地盤に伝達され,水平力は全て下段擁壁に直接伝達されるものとしています。また,土塊の重量としては,上段擁壁のすべり面と下段擁壁のすべり面に挟まれた着色部分を考えています。 |
回答
上段擁壁背後のすべり面の反力R1も土塊に作用します。このため,下段擁壁に作用する主働土圧PA2は式(2)で計算する必要があります。

Q 1037 土中用ガードレールは擁壁からどの程度離すべきか
| プレガード設計編においては,L型擁壁の背後に土中埋め込み型ガードレールを設置する場合は1.5m程度離すことと記載されていますが,国土交通省四国地方整備局「プレキャストL型擁壁設計施工マニュアル(平成13年2月)」P23においては75cm以上確保するとあります。どちらが正しいのか教えてください。 |
回答
土木研究センター発行の補強土(テールアルメ)壁工法設計・施工マニュアル第2回改訂版(平成11年)のpp73-74には,土中用防護柵を設置する際には,補強土壁の壁面より1.5m以上離すのが望ましいと書かれています。この根拠として,建設省土木研究所の実大実験結果,フランスの実大実験結果および重錘衝突実験の結果があげられています。このことをプレガート設計編では紹介しています。
自動車がガードレールに衝突した際には,ガードレール支柱の背面の土が抵抗して支持力を発揮します。B種ガードレールの場合,車両用防護柵標準仕様では,「支持力を十分発揮させるには,支柱が関与する背面土の質量は1.01t以上必要」としています。プレキャストL型擁壁設計施工マニュアルでは,ガードレール支柱を擁壁のたて壁から75cm以上離しておけば,「支柱1本が関与する背面土質量」が確保されるので,たて壁に影響しないと説明されていますが,実験による確認はされていません。自動車の衝突による衝撃力が擁壁に伝達されないと判断するのは無理があるように思われます。
擁壁の背後に土中用ガードレールを設置するのであれば,実験で確認されているように1.5m以上離すべきでしょう。
Q&Aコーナーへ戻る
|
道路土工「擁壁工」(平成11年3月)において、擁壁に衝突荷重を考慮するものとなりました。農道においてプレキャスト擁壁あるいは現場打ち擁壁を施工する際に、衝突荷重を考慮しているケースと考慮していないケースがあります。基準を管理する部署としては、衝突荷重を考慮するように各出先機関に周知しなければならないと考えております。 |
回答
擁壁に自動車衝突荷重を作用させて計算すると,「転倒の安全率が不足する」という問題以外に,「応力度が許容応力度を超過する」という問題が発生することがあるので注意が必要です。以下に,その例を紹介します。
表−1は高さ1.5mのプレキャストL型擁壁の設計計算結果です。擁壁の奥行き長は2.0mです。常時の荷重に対しては安定計算,応力計算の結果共に十分安全になっています。ところが,自動車衝突時には,安定計算,応力計算全てでNGとなっています。なお,ガードレールにはB種またはC種を使用するとして,30kNの衝突荷重を作用させています。
プレキャストL型擁壁は延長が2mと短いため,衝突荷重P=30kNによるダメージが大きいく現れます。
表−1L型擁壁の設計計算例
| 常 時 | 自動車衝突時 | ||
| 擁壁形状 | ![]() |
![]() |
|
| 安定 検討 |
転倒 | 合力偏心量e=0.18m<B/6=0.2m OK | 合力偏心量e=0.99m>B/3=0.24m NG |
| 滑動 | 滑動安全率Fs=1.77>1.5 OK | 滑動安全率Fs=0.97<1.2 NG | |
| 支持 | 地盤反力度 q1=57kN/m2<100kN/m2 OK | 地盤反力度 q1=計算不能 NG | |
| 応力 度 |
コンクリート | σc=3N/mm2<σca=8N/mm2 OK | σc=27N/mm2>σca=8N/mm2 NG |
| 鉄筋 | σs=104N/mm2<σsa=160N/mm2 OK | σs=791N/mm2>σsa=270N/mm2 NG | |
Q.1039 自動車衝突荷重によるL型擁壁の転倒モーメントの計算
|
L型擁壁の背後にガードレールを図−1のように設置する場合,衝突荷重による転倒モーメントを下記のように算定しても良いでしょうか。 図−1 L型擁壁の断面
|
回答
衝突荷重による転倒モーメントMpは,Mp=P(H+hx)=3.99×(2.50+0.60)=12.37(kN・m)とすべきです。
ガードレール基礎がL型擁壁と一体化していても分離していても同じ結果になることは,下図および次式より明らかです。

| 「道路土工 擁壁工指針」P109に「片持ばり式擁壁のように底版を有する形式の擁壁においては底版厚さに50cm以上を加えた根入れ深さを確保する」とあります。 L型擁壁はつま先がないため、重力式擁壁と同様に底版下面から50cmで良いと思いますがいかがでしょうか? |
回答
L型擁壁の場合は,ご指摘のように底版下面から50cm程度で良いと思います。なお,根入れ深さに関してはQ204でも回答しています。
[追記]
上記の回答をした後に,質問者より下記のレスをいただきました。
四国地方整備局では,プレキャストL型擁壁の壁高が3m以下の場合には底版下面から50cm程度、3m以上の場合には底版下面から50cm以上としています。一方,九州地方整備局では、L型擁壁や逆T型擁壁の場合には底版上面から50cm以上と図入りで解説されてます。国土交通省でも整備局によって擁壁工指針の文面通り運用しているところと,そうでないところがあるみたいです。
個人的には先生の意見と同様ですが、擁壁比較設計における発注者との協議で、擁壁工指針に準拠している九州整備局の根入れ(底版上面から50cm以上)で比較し、実施設計をしました。早くどちらかに、統一して頂きたいものです。
Q&Aコーナーへ戻る
| 貴著「Excelによる擁壁設計」(理工図書)に付いている「重力式擁壁2」のソフトを用いて設計計算をおこなっています。道路土工−擁壁工指針等には,根入れ深さが50p以上とありますが洗掘などの問題が起こらないと想定できる箇所でもその根入れ深さを確保すべきでしょうか。なお,支持地盤は中位な砂質土です。 |
回答
擁壁の供用期間中(50年程度),設計で想定している地盤条件を確保できる根入れ深さが,一般の土砂地盤であれば50cm程度ということです。洗掘等の恐れがあれば,洗掘深さを見込んだ根入れが必要になります。もしも支持地盤が風化の恐れが全くない堅い岩盤であれば根入れは必要ないでしょう。砂質土であれば,長い年月のうちには降雨等で地盤が削られることや,表面化が凍結等で緩むことも予想されます。このため,洗掘の恐れがなくても50cm程度の根入れは必要と思われます。
|
災害手帳(平成17年版)のp389に掲載されている表−4の中で,ブロック積擁壁の一般的な適用高さとして,「5〜7mは応力計算に基づき使用可」と書かれています。ブロック積擁壁の応力計算としてはどのような方法があるのでしょうか。 |
回答
災害手帳の文書中の「応力計算」は,「安定計算」の意味と解釈して説明させて頂きます。建築では,土木で言う剛体的安定計算のことを応力計算と呼ぶようです。
国土交通省では,「ブロック積み擁壁の設計法は確立されていない」という立場をとっています。
宅地造成等規制法の解説には,「間知石その他の練積み造擁壁は,構造形式から一種の重力式擁壁とみなすことができ,ある範囲内においては構造的耐力上の信頼性は鉄筋コンクリート造等の擁壁と同程度と考えられるが,この構造そのものは自立性に欠けるため,理論上の安全性を最終的に確かめることが困難であること,及びその安全性が,それを施行する現場の作業員の技術に左右されることが多いなど点を考慮して,令第八条においては主に経験的な観点から基準を設け,高さ五メートル以下に限って義務設置擁壁として認めたものである」と説明されています。
また, 当時,建設省土木研究所システム課技術基準係長であった工藤真之助氏は,土木技術35巻6号(1980年6月)に掲載されている「土木構造物標準設計(擁壁類)の内容と考え方」と題する論文の中で,標準設計のブロック積み擁壁の適用条件について,下記のように解説しています。
@ 土の崩壊を防ぐための主としてのり面の保護。
A 背面の地山が安定しているか,また盛土にあってはよく締固められており,土圧が小さいと判断される場合。
B もしも倒壊しても重大事故につながらない場合を原則とする。
C 擁壁の高さは5m以下とする。
また,このように決めた理由を下記のように述べられています。
@ 設計方式に公知公認のみのがなく,従来の経験によるしか方策がなく,安全に対する確認ができないこと。
A この種の擁壁の倒壊や損傷が散見され,過去において標準設計利用施設の倒壊も生じていること。
B 不特定な施工場所を対象としなければならない標準設計では,なんらかの歯止めをしておく必要があることなどを考慮したためである。
設計法が確立されていないにも関わらず,応力計算に基づいて設計するなら7mまで認める,という説明は私には理解できません。
国土交通省が認知していない設計法なら種々あります。土木学会四国支部の「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアル」もその一つです。
| 落石対策便覧の落石防護擁壁の計算において,衝突後の速度を算出する際,α'を分母の擁壁の質量にかけておりますが,このα'は何を意味するのでしょうか? |
回答
落石対策便覧の168頁の式(5-40)に関する質問と思われますので,この式がどのように誘導されているのかを説明します。
質量mの落石が速度v1で擁壁に衝突したところ,擁壁はつま先0点を中心にωの角速度でロッキング振動を始めたとし,衝突直後の落石の速度をv2,落石衝突点Aから擁壁の回転中心Oまでの距離をl,回転中心に関する擁壁の慣性モーメントをIoとすれば,衝突前と衝突後の角運動量保存則は式(.1)のようにたてられます。
mv1l+0=mv2l+Ioω (.1)
さらに衝突点Aでの擁壁の並進速度をV,落石と擁壁の反発係数をeとすると,式(11)は次のように表すことができます。
mv1l+0=m(V-ev1)l+IoV/l (2)
ここで,
α'=Io/(Ml^2) ( 3)
とおけば,衝突直後のA点での擁壁の並進速度は式(.4)で表されます。なお,落石対策便覧にはe=1とおいた式が紹介されています。
V=mv1(1+e)/(m+α'M) ( 12.4)
なお,詳細な式の誘導等については,月刊誌「土木技術」の2005年8月号に掲載していますのでご覧になってください。
Q 1044 地盤反力係数を算定する際の直積基礎の換算載荷幅
| 貴著「続・擁壁の設計法と計算例」のP311では,地盤反力の算定に用いる換算幅を √(幅×奥行き)と設定されています。ご存じかと思いますが、鉄道総研の鉄道構造物等設計標準・同解説 基礎構造物・抗土圧構造物 設計の手引き(ボックスカルバート)では,バネ値の算出に当たり,換算幅を √(幅×奥行き)ただし幅以下と規定されています。 道示下部工編の鉛直バネの換算幅にはこのような規定はありませんが、極端に長細い基礎がないためと思われます。ただし、道示下部工編のP309のケーソンの換算載荷幅については同様な記述があります。 以上のことを総合して,貴書の設計例で奥行きを1スパン10mで設定されている根拠をご教示願えないでしょうか。横幅に対してかなり大きいような気がします。擁壁としては鉛直方向には剛であるとの理由でしょうか。また、1スパン5mであれば小さくすべきでしょうか。 この地盤バネの寸法効果に関する文献をご存じでしたら、ご教示ください。 |
回答
貴重なご指摘ありがとうございます。
地盤係数法は,地盤を離散型のバネにモデル化して変位を求める極めて便宜的な方法です。このような単純な方法で,変位を精度良く求められるとは考えていません。変位を精度良く求めるには,他の問題が色々あるとしてもFEMによる以外は考えられません。
換算幅の取り方は,ご指摘の通りと思います。しかし,道路橋に示されている換算幅の算定法を変えたとしても,変位の精度を向上させることができるかどうか分かりません。
このような理由から,拙著の計算例は,道路橋示方書W下部構造編の中の直接基礎に関する解説に単純に準拠しています。
地盤バネの寸法効果に関する研究は,時代遅れのように感じます。最近は,FEMによる数値解析が主流になっていますのでね,それを前提とした研究が積極的にされているように思われます。
質問その1
| 大型ブロック積擁壁設計・施工マニュアルによれば、転倒の検討において、「合力作用位置が底版外であっても安全率を満足すればOK」と捉えられると思いますがどうでしょうか。 |
回答
大型ブロック積擁壁設計・施工マニュアルのp20には,「大型ブロック積み擁壁は自重の重心が一般に擁壁底面より後方に位置するため荷重の合力が底面のミドルサード内に入っていたとしても,転倒に対する安全率が1.5以上あることは保証されない。このため,転倒に対しては安全率で照査するものとした。」と解説しています。けれども,「合力作用位置が底版外であっても安全率を満足すればOK」といった意味のことは書いていません。合力が擁壁の底面から後方へ外れるということは考えられないためです。
ブロック積擁壁に作用する壁面土圧は,主働土圧と受働土圧の間に存在することは確かですが,実際に作用する土圧を算定する方法は確立されていません。このため,マニュアルでは便宜的に,地盤係数法で算定することを提案しています。壁面土圧を主働土圧と見なして計算すると,土圧を過小に評価し,土圧によるモーメントよりも自重によるモーメントが卓越するため,合力の作用点が底面から後方へ外れるという不合理な結果になります。
「擁壁の自重と主働土圧の合力作用位置が底版から後方へ外れても転倒の安全率を満足すればOK」と言っても間違いではないのですが,「合力作用位置が底版から後方へ外れる」ということに違和感を感じます。
質問その2
| 大型ブロック積擁壁の転倒に対する検討の考え方は,下記のようで間違いないでしょうか。 大型ブロック積擁壁設計・施工マニュアルでは,転倒に対して安全率で示すものとしており合力作用位置を問うてはいない。合力作用位置を算定するのは、地盤反力算定式の適用を判定するためである。合力作用位置が底版外になるのは、土質が良好であるため、計算上、あまり主動土圧が働かない状態になっているためである。逆にいえば、合力作用位置が後方になろうとする事に対し、壁面地盤反力として、そうならないように作用している状態である。故に、土質状況が悪い場合は、主動土圧としての働きが大きくなり、壁面地盤反力は減少するか、皆無となる。 |
回答
ご指摘の通り,大型ブロック積擁壁設計・施工マニュアルでは,転倒の安定性は安全率で判定するものとしています。
大型ブロック積擁壁設計・施工マニュアルでは,便宜的に「壁面土圧=主働土圧+壁面地盤反力」として算定しています。このため,ご質問にあるように裏込め土のφが小さくて主働土圧が大きいと壁面地盤反力は小さく計算されます。さらに主働土圧が大きくて,擁壁が前方へ回転するような変位を生じれば,壁面地盤反力は0として計算されます。逆にφが大きくて主働土圧が小さいと壁面地盤反力が大きくなります。壁が背後に大きく傾斜しておれば主働土圧は0になり,壁面土圧は壁面地盤反力に等しくなります。
擁壁底面の地盤反力は,壁面土圧が主働土圧になる場合には,つま先の方が大きい台形分布か三角形分布になります。しかし,壁面に地盤反力が発生する際の底面の地盤反力は,かかとの方が大きい台形分布になります。底面の合力位置とは,底面の地盤反力の重心と一致します。
| Q&Aの Q237に対するAで「極限状態における荷重分布はBの一次関数となるので台形分布となる」とありますが、良くわかりません。「続擁壁の設計法と計算例」P150では「等分布にあて近ずく」となっていますがどうなのでしょうか。 |
回答
極限支持力度qdは,図1に示すようなBの一次式になります。もう少し,詳しく言いますと,極限状態での地盤反力は図2のようになります。続擁壁の設計法と計算例」P150に示しているのは図3ですが,この図は偏心荷重を受ける場合のマイヤー・ホフの有効載荷幅の説明の図です。粘性土に対する説明と思って下さい。

図1

図2

図3
Q1047 ボックスカルバートの支持力
| ボックスカルバートの支持力の照査法をお教え下さい。 |
回答
地盤の支持力問題には,せん断破壊問題の変形問題があります。支持力公式を使って検討しているのはせん断破壊に対する検討です。 変形問題には,弾性変形(即時沈下)と圧密沈下があります。ボックスカルバートで,せん断破壊が問題になるのは,周囲に盛土する前の段階であると考えられます。左右に盛土をすれば,左右への移動が拘束されますのでせん断破壊に対してはより安全になります。
したがって,一般の支持力に対する検討は,盛土施工前の段階で検討し,盛土後は沈下に対する照査をすべきでしょう。

| 擁壁を設計する際,等分布荷重ではなく集中荷重(アウトリガー反力)がかかった場合の土圧計算はどのようにしたら良いか教えてください。 |
回答
地表面に局部荷重が作用する場合の土圧の計算法には,Gustay Jenneの考え方を基本にした鉄道総合技術研究所の方法があります。
局部分布荷重q0が,l1×bの範囲に作用する場合には,q=q0×l1/l2の帯状分布荷重がbの幅で作用するものと見なして作用すると考えます。
詳細については,鉄道総合技術研究所編の鉄道構造物等設計標準・同解説 基礎構造物・抗土圧構造物(H12,丸善)をご覧になって下さい。

Q1049 ボックスカルバートの支持力はケーソン基礎として検討すべきか
| カルバート工指針(日本道路協会)P12では、”地盤の許容支持力は、・・・・・・・道路橋示方書により求め・・・・・・・。”とあり基準的には支持力照査を行うことになっておりますので、会計検査等を考えますと、支持力計算書を添付しているケースが多いと思われます。よって、支持力計算を行う場合と仮定しての質問です。 ボックスカルバートの寸法,根入深さの条件により道示、直接基礎の式(道示WP269)とケーソンの式(道示WP302)の2つを使い分けてよいのでしょうか?(使い分ける必要があるか) 例)ボックス外寸法B3.0m×H2.0mを計画地盤面からの根入深さ(計画地盤面〜ボックス底面)4.0mに設置した場合(ケーソン的な根入とした場合)ケーソン式を使用するのでしょうか? 2式両方にて計算すると寸法効果の影響を反映した直接基礎の式が小さい許容支持力(極限支持力)となります。以上、できましたらご教示ください。 |
回答
道路橋示方書の直接基礎とケーソン基礎の支持力公式は,いずれも根入れが浅い基礎を対象としたテルツァギーの支持力公式がベースになっています。直接基礎の支持力公式は,@荷重の傾斜を考慮した支持力係数,A支持層への根入れ効果に対する補正,B寸法効果による支持力係数の補正が考慮されています。荷重の偏心傾斜がなく,支持層への根入れがなく,支持力係数の補正係数を1とすれば,ケーソン基礎の支持力公式と同じになります。したがって,根入れ深さの大小で直接基礎とケーソン基礎を使い分けるという考えは間違っています。
ケーソン基礎の場合,支持力係数の寸法効果が考慮されていないのは,その影響を現段階では定量的に評価できないためのようです。
このQ&AコーナーのQ72,Q1047で回答しているように,ボックスカルバートの支持力が問題になるのは施工段階だと思われます。軟弱地盤の場合には重機のトラフィカビリティーも含めて検討する必要があります。

Q1050 二種類の盛土の土圧計算用土質定数の決め方
| 下図のような大型ブロック積み擁壁の施工において,盛土材として現地付近で発生する2種類の残土を使用することが決まっています。 事前の土質試験によると,一つは 土砂混じり岩魂(φ=37.8゜、C=0、γ=20KN/m3)(A材)で、二つめは 崩積土(φ=32゜、C=0、γ=17KN/m3)(B材)です。それぞれ発生量と施工時期の違いから下図のように、良質と思われるA材を擁壁裏込めから天端までとし、残りはB材を使用して盛土しようと思います。擁壁の土圧計算に用いる土質定数として,下記のどの方法で決めるのが良いでしょうか。 @. 2つを平均する。(φ=37.8+32=35゜、C=0、γ=20+17=19KN/m3) A 施工時における土の乱れや施工状況、含水比の変化による強度低下を考慮して、安全側である低い方の値(B)を代表値として計算する。 B 異なる定数をそれぞれ考慮して土圧計算を行う。(すべり角を各層ごと変化させる?) ![]() |
回答
主働すべり面が通る箇所の土質定数が問題になります。このケースでは地山,盛土A材,盛土B材の3種類の土のせん断強度定数が土圧に影響を及ぼします。しかし,設計で用いられている土圧理論は,いくつかの大胆な仮定の下になりたっています。このため,あまり厳密に考えても意味がないと思われます。このケースですと,安全側にB材のみで土圧を計算すればよいと思います。
なお,施工時における土の乱れや含水比の変化が影響を及ぼすのは,粘着力です。内部摩擦角は締固めの程度による相対密度に影響されます。施工時に最適含水比でしっかり締固めすることと,排水処理が大切です。
Q1051 ボックスカルバートの設計で考慮する浮力
| 2.8m×2.8mボックスカルバートの雨水排水施設の布設を計画しています。道路土工指針(ボックスカルバート編)では、浮力の検討について「ボックス内を道路として利用する場合は、浮力を検討する」と書かれています。これは、内空断面を道路として利用しない場合は、浮力の検討が必要ないということでしょうか? |
回答
ボックス内をどのように利用するかという視点で考えるよりも,どの程度の浮力が作用することが予想されるのか,その結果浮き上がる恐れがあるのか,という観点から判断するのがよいと思います。
例えば,下図のtypeAの場合にはカルバート内にも水が入るため,浮力はあまり作用しません。しかし,typeBのようにカルバート内に水が入らないと大きな浮力が作用し,浮き上がりの恐れが出てきます。なお,浮力は斜線を施した部分の水の重量となります。

| 道路土工カルバート工指針では、「浮力に対する安全率は共同溝設計指針に準拠する」と明記されています。 共同溝設計指針によると、浮力の安全率Fsは1.2以上とし、ボックス側壁の摩擦抵抗及び土のせん断抵抗は考慮しないと明記しています。 今回は、雨水排水施設としてボックスカルバートを布設しますが、安全率Fs1.2以上という数値だけでなく、やはり摩擦抵抗及びせん断抵抗は考慮してはいけないのでしょうか? |
回答
浮き上がりに対する安全率は,躯体の重量,土の湿潤重量,地下水位の深さを設計段階でどの程度的確に予測できるかによって決めるべきと思います。一般的には表−1の値が用いられています。
浮き上がりに対する検討では,抵抗力としてボックスカルバートと本体と土砂の重量のみとし,側壁の摩擦抵抗や土のせん断抵抗力は無視するのが一般的です。表−1の常時の安全率は,摩擦抵抗や土のせん断抵抗力を無視した場合のものです。もしも,,摩擦抵抗や土のせん断抵抗力を考慮するので有れば,それらのばらつきを考慮してもう少し大きめの安全率が必要になると思われます。
表−1浮き上がりに対する安全率
| 技術基準 | 構造物 | 安全率 | 発行所 | 発行年 | |
| 常時 | 地震時 | ||||
| 共同溝設計指針 | ボックスカルバート | 1.2 | 1.1 | 日本道路協会 | S61 |
| 道路土工−擁壁工指針 | U型擁壁 | 1.1 | 1.0 | 日本道路協会 | H11 |
| 鉄道構造物等設計標準・同解説 | ボックスカルバート | 1.0 | 1.0 | 鉄道総合技術研究所 | H12 |
| 土地改良事業計画設計基準 | ボックスカルバート | 1.2 | − | 農林水産省農村振興局 | H13 |
| 土地改良事業計画設計基準 | 水路 | 1.1〜1.2 | − | 農林水産省農村振興局 | H13 |
| 先日、ある設計事務所さんの擁壁の計算書の中に、支柱式防護柵B種衝突荷重p=16kN/mが採用されていました。現行の擁壁工指針との整合性が分からず悩んでおります。 「防護柵の設置基準・同解説」でしょうか? |
回答
「道路土工−擁壁工指針」が発刊されたのは平成11年3月ですが,平成8年1月に「道路土工擁壁工指針改定原案」に出され,それが出回っていました。その42ページに下記の表が掲載されていました。多分,この表を見られたのだと思われます。
表1-12支柱式防護柵の衝突荷重(tf){kN}
| 種別 | A | B | C | S |
| 衝突荷重 | 2.5 | 1.6 | 1.4 | 2.5 |
| {24.5} | {15.7} | {13.7} | {24.5} |
Q1054 砕石基礎の内部にコンクリートブロックを包み込んだときの検討
| 斜め底版を有する擁壁の基礎として,下の左の図のようなに砕石を転圧して斜めの床盤を計画しました。すると施工業者が,右図のように台形の頭基礎ブロックを最初に作ってから、その周囲を砕石で埋めるようにすると施工がしやすくなると提案してきました。、斜めに床盤を転圧しました。その場合,砕石内の構造物の安定計算は必要でしょうか? コンサルタントの意見は、砕石と一体化していると見なせるので計算の必要はない、土圧がかかると頭基礎が前に飛び出すので安定計算が必要である、とまちまちです。もし計算が必要なら,擁壁設計Q&A105問答P248の「質問6.22 人工岩基礎の安定検討」の回答に書かれている方法と同様でよろしいでしょうか。 ![]() |
回答
砕石基礎で床盤を造られるのは,所定の地盤支持力を確保することが目的と考えられます。砕石の内部に内部にコンクリートブロックを包み込んだとしても,それによって支持力が小さくなるとは思われません。このため,埋め込んだコンクリートの計算は必要ないと思われます。
| 橋台の基礎杭を施工したところ,杭芯にズレが発生しました。いずれの杭も,ズレは管理基準値(D/4かつ10cm以下)以下に納まっています。この場合,杭芯のズレを考慮して杭の安全性を照査する必要はあるでしょうか。 |
回答
施工誤差が管理基準値以内なら安全性の照査は不要と思われます。安全性を照査しようとしても,施工後の安全性を判断する基準がないので照査のしようがないと思います。
設計段階で,杭の応力度が許容応力度一杯に設計されていれば,施工誤差が管理基準値以下であっても,極論すると1mmであったとしても応力度は許容応力度を超えてしまいます。設計で決められている許容応力度には,施工誤差による影響も加味されているはずですので,施工が終わった時点での許容応力度は設計時点の許容応力度よりも大きいはずですが,施工後の許容応力度については規定されていません。つまり,施工誤差を考慮して再計算しても安全性を判断できないと言えます。
| 直接基礎の支持地盤が一軸圧縮強度qu=1650kgf/cm2の花崗岩である場合,支持力はどのように計算すればよいのでしょうか。また,粘着力と内部摩擦角はどのような値になるのでしょうか。 |
回答
(1)道路土工−擁壁指針による経験値
最も簡単には,下記の表−1で推定することができます。この表は,道路土工−擁壁工指針(p21,表1-6)の岩盤の許容支持力のみを抜粋したものです。
ご質問の花崗岩の一軸圧縮強度はqu=165,000kN/m2ですので,亀裂の少ない均一な硬岩と考えられます。したがって,常時の許容支持力度として,qa=1,000kN/m2が期待できます。
表−1 許容支持力度(道路土工−擁壁工指針による)
| 岩盤の種類 | 許容支持力度 | 一軸圧縮強度 |
| qa(kN/m2) | qu(kN/m2) | |
| 亀裂の少ない均一な硬岩 | 1,000 | 10,000以上 |
| 亀裂の多い硬岩 | 600 | 10,000以上 |
| 軟岩・土丹 | 300 | 1,000以上 |
(2)支持力公式を用いて推定する方法
cとφが分かれば道路橋示方書式等で荷重の偏心傾斜や基礎の寸法効果も考慮した支持力を計算で求めることができます。
ご質問の花崗岩は,一軸圧縮強度の大きさからB級の硬岩と判断されます。表−2に示す本州四国連絡橋基礎の測定例より,ご質問の花崗岩の内部摩擦角はφ=45度,粘着力はc=1,500kN/m2と推定されます。
一軸圧縮強度quとc,φの関係は,モール・クーロン破壊基準より
c=qu(1-sinφ)/(2cosφ)
として表せます。
qu=165,000kN/m2として,cとφの関係をグラフに描くと下図のようになります。φ=45度とすると粘着力はc=35,000kN/m2となります。
一軸圧縮試験は,亀裂の少ない箇所から抜き取ったコアーで試験をしていると考えられます。このため,c=35,000kN/m2を設計計算に用いるのは危険です。支持力を計算する際には,安全側を考えて,表−2のB級花崗岩のφ=45度,c=1,500kN/m2を採用されるのが良いと思われます。
表−2岩盤のせん断強度定数の測定例(日本道路公団の設計要領第二集による)
| 岩級 | 粘板岩(ダムサイトの例) | 花崗岩(本州四国連絡橋基礎の例) | ||||||
| c(kN/m2) | φ(゜) | c(kN/m2) | φ(゜) | |||||
| 範囲 | 平均 | 範囲 | 平均 | 範囲 | 平均 | 平均 | ||
| 硬岩 | B | 2250〜2750 | 2500 | 40〜50 | 45 | 1500〜2500 | 1500 | 45 |
| CH | 1750〜2250 | 2000 | 35〜45 | 40 | 1000〜2000 | 1000 | 40 | |
| CM | 750〜1750 | 1250 | 35〜45 | 40 | 500〜1000 | 500 | 40 | |
| 軟岩 | CL | 250〜750 | 500 | 30〜40 | 35 | 100〜1000 | 100 | 37 |
| D | 100以下 | 0 | 20〜30 | 25 | 500以下 | 0 | 30〜35 | |

| 当社は宅地造成に関する申請業務等を請け負っているのですが、今まで擁壁の設計時の載荷重をq=10kN/m2として計算して参りました。 実際、道路土工−擁壁工指針(H11年)にも、『設計に用いる載荷重として活荷重などを考慮するものとし、その値は、一般にq=10kN/m2とする』」と記されていましたので、それでいいのだと思っておりました。 しかし、その数値の根拠となるモノがどの本にも載っておらず、こちらのQ&Aを見せて頂きました。Q1011の回答では、車両の重量に関しての数値が上がっておりましたが、例えば住宅等が建設されることを考慮した場合の載荷重はどうなのでしょうか?建物自体の重さは、木造2階建てで1.5tf/m2・木造3階建てで1.8〜1.9tf/m2ぐらいが目安だと聞いたのですが、その数値を載荷重として計算に使用するべきなのでしょうか?ちなみに、建物は擁壁の天端から30〜50cmの時もあるのですが、どのような検討が必要となりますか? |
回答
宅地擁壁に関しては,「改訂版 宅地防災マニュアルの解説[1]平成10年」のp298に下記のように書かれています。下記を参考にして下さい。
「擁壁に作用する積載荷重は,住宅地においては一般的な戸建て住宅が建てられることを想定して,0.5〜1.0tf/m2程度の均等荷重をかけることを標準とする。また,住宅地以外の土地利用が想定される場合は,実状に応じて適切な積載荷重を設定する。なお,宅地造成等規制法施行令の別表第二を用いる場合は,土圧係数に0.5tf/m2程度の積載荷重が含まれていることに留意する。
また,積雪荷重は擁壁の設置場所の実状に応じて適切に設定する。建築物及び工作物による積載荷重は,固定荷重として常時及び地震時とも同じ値を用いる。」
| 一般に引張側の主鉄筋は応力計算で決定できますが,圧縮側の主鉄筋や配力鉄筋はどのように決めたらよいのでしょうか。 |
回答
擁壁の応力計算では,一般に引張側の主鉄筋のみ考慮し,単鉄筋として計算します。これは圧縮側の鉄筋を考慮して複鉄筋として計算しても,計算が複雑な割には単鉄筋で計算した場合と応力度の大きさが殆ど変わらないためです。したがって,引張側の主鉄筋については応力計算で決定できますが,圧縮側の主鉄筋や配力筋は別途決定する必要があります。
旧建設省の土木構造物設計マニュアル(案)では,圧縮側主鉄筋は引張側主鉄筋の1/6以上,配力筋は主鉄筋の1/6以上と決めています。具体的には,表−1のようになります。引張側の主鉄筋を応力計算で決めれば,表−1より引張側配力筋,圧縮側主鉄筋,圧縮側配力筋を求めることができます。
なお,土木構造物設計マニュアル(案)では,使用する鉄筋径はD13〜D32,鉄筋間隔は125mmまたは250mm,鉄筋材質はSD345,コンクリート表面から主鉄筋中心までのかぶりは,たて壁が100mm,底版が110mmと決めています。
逆T型擁壁の配筋例を図−1に示します。
表−1主鉄筋と配力筋の組み合わせ
| 引張側 | 圧縮側 | ||
| 主鉄筋 | 配力筋 | 主鉄筋 | 配力筋 |
| D13@250 | D13@250 | D13@250 | D13@250 |
| D16@250 | |||
| D19@250 | |||
| D22@250 | |||
| D25@250 | |||
| D29@250 | |||
| D32@250 | D16@250 | D16@250 | |
| D22@125 | |||
| D25@125 | |||
| D29@125 | D19@250 | D19@250 | |
| D32@125 | |||

図−1配筋例
| 15年前に農道として施工していた複合擁壁が昨年の豪雨で被災しました。ある公的機関が作成した複合擁壁の計算ソフトを用いて被災した複合擁壁の安定計算を行うと表−1の結果になっていました。擁壁底面での荷重の合力の偏心量eは,下記のように計算されていました。なお,裏込め土の内部摩擦角は30度,粘着力は0,土の単位体積重量は19kN/m3としています。 表−1では,モーメントM=Mx-Myの値が負であるにもかかわらず,Mの絶対値を用いて偏心量eを算定していますが問題ないのでしょうか。 なお,ブロック積み擁壁は示力線法で計算しており,限界高さは3.55mとなっていました。 表−1 複合擁壁の下部の重力式擁壁に作用する力
![]() 被災した複合擁壁の断面図 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
回答
偏心量eの計算で,モーメントMを絶対値として計算するのは間違いです。Mが負になるということは,抵抗モーメントMxよりも転倒モーメントMyが大きいということですので,複合擁壁は安定していないことになります。ブロック積み擁壁についても,高さが5mであるにも関わらず限界高さが3.55mということは,転倒に対して安定していないことになります。
しかし,実際には,この複合擁壁は15年間安定していたわけですので,計算がおかしいのは明らかです。原因は,裏込め土の土質定数にあります。粘着力をc=0と見なすのであれば,φ=30度は小さすぎます。φを30〜45度に変化させて計算した結果を下図に示します。15年間安定していたことを考えると,φ=40度と見なすのが妥当と思われます。
| 昨年(平成17年)の災害査定から大型ブロック積み擁壁の取扱が変わりました。高さ5m〜7mまでについては間知ブロック積み擁壁も適用可能であるので,無条件に大型ブロックとするのではなく,裏込コンクリートを厚くしたブロック積み,大型ブロック積み,もたれ式擁壁,補強土擁壁について安定計算,経済性等の検討を行った上で擁壁形式を決定することになりました。 ブロック積み擁壁の直高と勾配、控えは、現在は経験から導いた擁壁工指針に準拠して設計していますが,そのように設計したものが現場条件に合致しているのか不安です。 災害復旧におけるブロック積み擁壁はどのように考えればよいでしょうか。 |
回答
(1)ブロック積み擁壁の安定性
国土交通省は「ブロック積み擁壁の設計法は確立されていない」という立場をとっています。このためブロック積み擁壁の安定計算法や安全性の評価法については何も明示していません。経験に基づいて設計することになっています。
道路土工−擁壁工指針には,直高に応じて経験的に定められた法勾配,裏込めコンクリートの厚さが表−1のように示されています。しかし裏込め土の種類,地表面の載荷重の大きさ,支持地盤の種類,擁壁の根入れ深さなどの仕様は明記されていません。これではどのような条件で施工した場合に安全性が保証されるのか判断することができません。ブロック積み擁壁の採用に対して不安を感じるのは当然と思います。
表−1に示している法勾配,裏込めコンクリート厚さは経験的に決められたということになっていますが,その元になる数値は表−2です。昭和40年に発行された建設省制定標準設計図集に掲載されているものです。当時の標準設計図集には計算式も明記されていますので,表−1の数値は安定計算によって求められたものだと思われます。詳細は,拙著「擁壁設計Q&A105問答,pp.225-228,理工図書」に紹介していますのでご覧になって下さい。
表−1 土工路土工指針(昭和52年版,昭和62年版,平成11年度版)
| 直高(m) | 0〜1.5 | 1.5〜3.0 | 3.0〜5.0 | 5.0〜7.0 | |
| のり勾配 | 盛土 | 1:0.3 | 1:0.4 | 1:0.5 | 1:0.6 |
| 切土 | 1:0.3 | 1:0.3 | 1:0.4 | 1:0.5 | |
| 控長(cm) | 空積 | 35 | 35 | − | − |
| 練積(胴込のみ) | 35 | 35 | 35 | − | |
| 練積(胴込+裏込) | 35+5*=40 | 35+10*=45 | 35+15*=50 | 35+20*=55 | |
表−2 建設省標準設計(昭和40年版)
| 直高(m) | 0〜1.5 | 1.5〜3.0 | 3.0〜5.0 | 5.0〜7.0 | |
| のり勾配 | 盛土 | 1:0.3 | 1:0.4 | 1:0.5 | 1:0.6 |
| 切土 | 1:0.3 | 1:0.3 | 1:0.4 | 1:0.5 | |
| 控長(cm) | 空積 | 35 | 35〜45 | − | − |
| 練積(胴込のみ) | 25 | 35〜45 | 45 | − | |
| 練積(胴込+裏込) | 25+5* | (25〜30)+9* | (35〜45)+14* | (35〜45)+20* | |
表−3 載荷重なし(q=0)のとき
| 直 高 | 1.5m | 3.0m | 5.0m | 7.0m |
| のり勾配 | 1:0.3 | 1:0.4 | 1:0.5 | 1:0.6 |
| 控 長 | 40cm | 45cm | 50cm | 55cm |
| 転倒安全率 | 3.11 | 1.98 | 1.7 | 1.84 |
| 滑動安全率 | 2.14 | 1.41 | 1.11 | 1.05 |
| 地盤反力度 | 36kN/m2 | 68kN/m2 | 108kN/m2 | 145kN/m2 |
表−4 載荷重あり(q=10kN/m2)のとき
| 直 高 | 1.5m | 3.0m | 5.0m | 7.0m |
| のり勾配 | 1:0.3 | 1:0.4 | 1:0.5 | 1:0.6 |
| 控 長 | 40cm | 45cm | 50cm | 55cm |
| 転倒安全率 | 1.85 | 1.46 | 1.39 | 1.58 |
| 滑動安全率 | 1.27 | 1.04 | 0.9 | 0.9 |
| 地盤反力度 | 39kN/m2 | 50kN/m2 | 107kN/m2 | 143kN/m2 |
表−1に示されている数値を用いて,一般の擁壁と同じ方法でブロック積み擁壁の安定性を検討してみました。その結果を表−3,表−4に示しています。ただし計算条件として,裏込め土は砂質土(γ=19kN/m3,φ=30゜),コンクリートの単位体積重量はγc=23kN/m3,壁面摩擦角はδ=2φ/3,底面の摩擦係数はμ=0.6,地表面の盛土は水平(β=0)とし,主働土圧はクーロン式で求めています。
転倒の安全率は,地表面に載荷重がなければ1.5以上が確保されていますが,q=10kN/m2の載荷重があると直高3mと5mのときに安全率は1.5を下回ります。
滑動の安全率は,地表面に載荷重がなくて直高が1.5mの場合以外は1.5を下回ります。q=10kN/m2の載荷重があると直高5mと7mにおいては安全率が1.0さえ下回ります。
昭和40年の建設省制定標準設計図集では,根入れ部の受働土圧を低減することなくそのまま滑動抵抗力として見込んで滑動の安全率を計算していますが,表−3,表−4は一般的な擁壁と同様に根入れ部の受働土圧を無視して計算しています。滑動の安全率が極端に小さくなったのは,このことが影響しています。
転倒の安全率が小さくなった原因ははっきりとはわかりませんが,昭和40年の標準設計図集では地表面載荷重を考慮する場合の安全率を1.5以上でなく,1.2以上としているのではないかと思われます。
いずれにしましても,ブロック積み擁壁は,重力式擁壁や逆T型擁壁など安定計算をキチッとして断面が決められている擁壁と比べて転倒,滑動に対する安全余裕が小さいのは明らかです。
(2)擁壁形式の比較選定
災害査定では,高さが7mまでであれば大型ブロック積み擁壁よりも間知ブロック積み擁壁の方が経済的と指摘されているようですが,重力式擁壁などと同等の安全余裕が確保されている大型ブロック積み擁壁が間知ブロック積み擁壁より建設費が高いのは当たり前のことです。擁壁形式を比較検討するのであれば,転倒や滑動の安全率を同じにして求められた擁壁断面で経済性を比較すべきです。
| 「土質のトラブル 回避術」のp96に,地震時土圧を有効重量法で計算する場合,水平震度を割り増した見掛けの水平震度を使用して計算を行うという記述があります。もしも背面土が完全に飽和していて,壁面摩擦を無視できる場合であれば,飽和重量に水平震度を乗じて土圧を計算することと同一の考え方ということでよろしいのでしょうか。 |
回答
その通りです。
地震時に背面土に作用する水平方向の慣性力Fは次式で表されます。
F=M・a (1)
Mは背面土の質量,aは地震による水平加速度です。背面土の重量をWとすると,
W=M・g (2)
のように表せます。gは重力加速度です。式(1)と式(2)より
F=W(a/g) (3)
ここで
kh=a/g (4)
とおくと,
F=W・kh (5)
となります。つまり,地震時の慣性力は背面土の重量Wに水平震度khを乗じて求めることができるといえます。
もしも,土塊が完全に水中に没していて浮力Uが作用しているたとすると,水中重量W'は次のようになります。
W'=W-U (6)
つまり,
W=W'+U (7)
したがって,慣性力は
F=(W'+U)・kh (8)
となります。見掛けの水平震度kh'を用いれば
F=W'・kh' (9)
です。見掛けの水平震度kh'と水平震度khの関係は,
kh'=(W/W')kh
となります。
| 擁壁の高さが2〜3m程度の場合,背面土が粘性土で,粘着力による自立高さが擁壁高さより大きいと,擁壁には主働土圧が作用しないことになりますが,このような場合最低土圧のような考え方はあるのでしょうか。 |
回答
不飽和の粘性土であれば自立すると考えられますが,飽和した粘性土においては間隙水圧が作用します。しかし,間隙水圧を適切に評価することが難しいため,下記の方法によって土圧を評価しているのが現状と思われます。
■港湾の施設の技術上の基準・同解説
港湾の施設の技術上の基準・同解説の昭和54年度版では,「粘性土の主働土圧強度paは式(1)または式(2)によって算定し,構造物に危険となる土圧分布をとるものとする」となっています。ただし,理由は解りませんが,平成11年版では,式(2)が削除されています。
pa=Σγz+q-2c (1)
pa=0.5(Σγz+q) (2)
ここに,γは土の単位体積重量,zは地表面からの深さ,qは地表載荷重,cは粘着力
■道路土工−仮設構造物工指針
道路土工−仮設構造物工指針では,土留めに作用する主働土圧を慣用法で求める場合,粘性土地盤においては最小土圧強度paを式(3)で求めることにしています。
pa=0.3γz
ここに,γは土の単位体積重量で,地下水位以下では土の水中単位体積重量を用いるものとしてます。
Q&Aコーナーへ戻る
Q1063 原地盤とケーソンの間に砂を挟んでいるときの地盤反力係数
| 基礎の施工を行う場合、基礎周辺の地盤は必ず乱れると思います。しかし、地盤の乱れを考慮して地盤反力係数を低減しないのは、求められる地盤反力係数が地盤の乱れの影響も考慮されていると解釈して良いのでしょうか。 例えば、オープンケーソンの施工で、地盤が堅くて沈下が困難な場合、先行掘削して砂置換等を行ってから施工することがあります。この場合,構造物と地盤の間に砂が存在しますが,地盤反力係数はどのように考えたらよいのでしょうか。 |
回答
地盤を乱す場合には,地盤の乱れの影響を考慮して地盤反力係数を低減する必要があります。しかし,現実的には,地盤の乱れの程度を求めることは難しいと思います。
ケーソンと地盤の間に砂を挟んでいる場合には,砂と原地盤の二層系地盤として地盤反力係数を求めることが考えられます。道路橋示方書下部構造編の「10.4地盤反力係数」で解説されているように,地盤の変化を考慮に入れた換算変形係数を用いれば,地盤反力係数を求めることができます。
Q1064 大型ブロック積み擁壁の安定計算における基礎コンクリートの考え方
| 私はコンクリート2次製品の製造・販売会社に勤務しています。あるコンサルタント会社の方より、「大型ブロック積み擁壁設計・施工マニュアルP.59の図5.1.1では,基礎コンクリートを擁壁の壁高に含めて安定計算をしているが,基礎コンクリートは壁高に入れなくてよいのではないか?」という質問を受けました。明確な返答ができませんでしたので、御教授下さい。 |
回答
大型ブロック積み擁壁に限定する必要はありませんが,安定計算における基礎コンクリートの考え方としては,下図に示すように3通りがあります。
@方法A:ブロック積み擁壁と基礎コンクリートのそれぞれについて安定性を検討する。
A方法B:基礎コンクリートをブロック積みの一部と見なして計算する方法です。
B方法C:ブロック積み擁壁のみの安定性を検討する。
最も精緻なのは,方法Aです。方法Bは安全側に簡便化した方法で,大型ブロック積み設計・施工マニュアルで採用しています。方法Cは基礎コンクリートの安定性を照査していません。基礎コンクリートの高さが高いと設計上危険になる場合が考えられます。一般にはどの方法を採用したとしても大した違いはないと思います。

図−1基礎コンクリートの考え方
|
切土部擁壁として計算した土圧と、盛土擁壁として試行クサビ法で計算した土圧の違いについてお教え下さい。計算ソフトは、「Excelによる擁壁設計」付属の「切土部擁壁」、盛土擁壁については「重力式擁壁2」を使用しました。
|
回答
切土部擁壁の場合には,入力シートに表記されているように,擁壁から地山までの距離dが小さいので主働土圧の正しい解が求められていません。したがって,盛土部擁壁の土圧と比較することは全く無意味です。切土面の仕上げを粗または段切りとして計算すれば,地山と盛土の摩擦角がφB=φとして計算しますので,切土部擁壁として正しい土圧が求まっていればその値は盛土部擁壁の土圧よりも必ず小さくなります。
「Excelによる擁壁設計」付属の切土部擁壁のソフトは,擁壁かかとから地山での距離dが,下図に示す大または中の場合に対応しています。小の場合には,「dが小さすぎて計算不能」という表示が出るようにしてあります。
[d:大] すべり面acが地山に当たらない場合です。
[d:中] dが小さいと,すべり面がc点で地山に当たり折れ曲がります。そうすると,c点から盛土内部にもすべり面ceが発生します。このすべり面ceが盛土表面に出る場合がdが中です。
[d:小]dがさらに小さいと,盛土内部のすべり面ceが壁面に当たります。その場合をdが小です。
切土部擁壁の土圧の計算法を以下に示します。この計算法は私が考案したものです。すべり線法の近似解の一種と思っています。
最初に土塊のすべり角ω,ω1,ω2,ω3を仮定します。そうすると,土塊の重量W,W1,W2,W3はいずれも計算できます。
[d:大]の場合だと未知量はPAとRの2つだけなので,水平方向と鉛直方向の力のつり合い条件式を立てれば未知量を求めることができます。ωを変化させ,PAの最大値を求めれば正解の主働土圧が求められます。
[d:中]の場合の未知量はPA,R1,R2,R3です。未知量は4個ありますが,2つのブロックについて力のつり合い式が2個ずつ立てられますので,すべての未知量を求められます。まず@のブロックに注目すれば,未知量はR1とR2ですので力のつり合い条件式を立てれば求められます。Aのブロックに作用するR2は既知量になったので,未知量はPAとR3の2個です。したがって,力のつり合い条件から求められます。PAを最大化するように,ω1とω2を変化させて計算すれば正解を得ることが出来ます。
[d:小]の場合の未知量はPA1,PA2,R1,R2,R3,R4です。未知量は6個ありますが,3つのブロックについて力のつり合い式が2個ずつ立てられますので,すべての未知量を求められます。要領は[d:中]の場合と同じです。
dが小さくなれば,未知量とブロック数が増えるので解析が複雑になります。
私は計算を表計算ソフトExcelで行っていますが,Excelにはソルバー機能がありますので,それを利用すればPAを最大化するωを探索することができます。探索するすべり角がω1,ω2,ω3のように複数あっても良いですが,探索する初期値を正しく設定していないと解が求まらないと言う問題があります。探索する未知量が増えると正解を得るのが難しくなります。
dが小さい場合の土圧計算法として下記の3つの方法が考えられます。AとBが実用的です。
@前述の説明のように土塊を分割して理論的に解く。
A大型ブロック積み設計・施工マニュアルの方法(d=0のときの切土部擁壁の土圧と盛土部擁壁の土圧から,近似的にdが小さいときの土圧を求める)を適用する。
B安全側を考えて,盛土部擁壁として計算した土圧を用いる。
